第9話 誰か俺を助けてくれ!
「力が欲しくないか?」
謎の男は、俺にそんなことを言ってきた。
「は?何言ってんだ?」
「君には才能がある。あのカイナをあそこまで追い込んだ人間は、今までにあまりいなかったからな」
「何だって……?まさか、お前……見てたのか!」
「見てたさ、一部始終。君が持っていた剣で、カイナが倒されたことも知ってるし、君が他の転生者に裏切られたことも知ってる」
「じ、じゃあ……!」
「『ギルドに証言してくれ』とでも言うつもりか?残念だが、そのつもりはない」
「なんでだ!?見てたんだろ、何もかも!」
「いや、私が証言すると、色々と面倒なことになるんでね」
「本当なら、俺は報奨金の5分の1、1億ゴールドを貰ってるはずなんだ!」
そうだ。クドウ、タカセ、タツヤ。
あの3人のせいで、俺は……!
「君が欲しいのは、本当にその報奨金なのか?」
「え?」
何を言っているんだ?
「君が本当に欲しいものは何だ」
俺が……本当に欲しいものだと?
「君は、どうやら自分や他の人の能力を見れるみたいだが……」
「なッ!?」
そんなことまで知ってんのか!?
「君の能力は、あまり良いものじゃなかったんだろう?」
くそ、こいつ、俺の心でも読んでやがんのか?
「ステータス」
こいつのステータスを見て、確かめるしかねえ。
だが、ステータスは表示されなかった。
「な、なんで……!?」
「私の能力を見ようとしても無駄だ。私の能力の1つ『ファイアウォール』の効果で、君は私に特殊的な攻撃をすることができないからな」
何だと……!
「さっき私の居場所がわかったのも、君の能力かな?」
「なんでそんなに色々知ってるんだよ」
「分かるさ、だって……」
そう言うと、そいつは俺を指差してこう言った。
「君からにじみ出てる、怒りのエネルギーの量が異常だからな」
「は?」
「君は、自分の能力が弱く、周りの奴らの能力が強かったことに怒りを覚えたみたいだが、心の奥深くでは、その怒りが高まってマグマのようになってるぞ。噴火しないのが不思議なくらいだ」
俺の心の奥深く……。
怒りの感情が……マグマみたいに?
「だから私は、君のことを調べた。そして分かった、君のことと、君の本当の思いに。君の心が叫んでるぞ、『もっと力が欲しい』と」
俺は……。
「もう一度問おう。君が欲しいものは、本当に金なのか?」
俺が欲しいものは……。
「力……力が欲しい!アイツを……クドウを倒せるほどの力が!」
「やっと目覚めたね、君の本当の思いに。そして、その希望に答えよう!」
「あ、リョウさん」
「よッ!どうだ?服は決まったか?」
「はい、アンナさんに選んでもらいました!」
セレンは、純白のかわいらしいワンピースを着ていた。
「おお、似合ってるじゃないか」
「そ、そうですか?えへへ……」
セレンが嬉しそうに笑う。
「とびきりいいの選んでおいたわよ」
「ありがとうございます、アンナさん」
「あ、これ、お会計ね」
アンナさんが俺に1枚の紙を渡してくる。
「ゲッ!?こ、こんなに……?」
「あら、これでもあなたのためを思って、2割引きにしてるのよ?」
そこには、ありえないほど高い金額が書かれていた。
「わ、分かりました……」
サイフを取り出し、お金を払う。
「はい、ちょうどね。いつもありがとうね」
店を出る。
「すまない、セレン。先に家に帰っていてもらえないか」
「え?リョウさん、どこかに行くんですか?」
「ちょっと用ができてな」
「分かりました。先に戻っておきますね」
セレンが、買った服を持って家がある方へ走っていく。
「さあ、行くか」
「おお、来てくれたか」
「そりゃ来るに決まってるだろ」
今俺は、ある森の奥にある小屋に来ている。
この小屋の存在は秘密にしてあるようで、誰にも見つからないようにするためか、とても入り組んだ道の先にあった。
この人に行き方を聞かなかったら、確実に迷っていただろう。
「改めて、私の名前は『カルセフ・ランタノイド・オーモス』だ」
「俺は『ハヤマリョウ』だ。で?俺は何をすれば強くなれるんだ?」
「まずは、筋トレをしてもらおうと思う」
「……は?」
「早速だが、腕立てと腹筋、そしてスクワット、背筋をそれぞれ200回ずつやってくれ」
「……あのな、俺は強くなりたいんだよ。いまさら筋トレなんかやったって、クドウには勝てないんだよ!」
筋トレなんかしてる暇はねぇ!
「強くなりたいのなら、筋トレはしなくてはいけない」
「なんでだよ!」
「これから、君には様々な技術を獲得してもらう。そのためには、体づくりは不可欠だ」
え?
「君は、あのクドウという男よりは能力が劣っているのだろう?相手の1手が強いのならば、こちらは手数で攻めればいい」
なるほど、そういうことか。
ようは、クドウの『脳筋』に立ち向かうには、クドウに勝利することにつながるものを少しでも多く得ることが必要ってことか。
「そして、体が痛くなったら、これを飲んでもらう」
そう言うと、俺の目の前に赤い液体の入ったビンが置かれた。
「これは?」
「最高級回復薬『神の血』だ」
「神の血?」
「これを一口飲むだけで、体の傷はたちまち癒えてしまうとても強力な回復薬だ」
「ちょっと待て、これ、1本いくらすんだ?」
一口でそんな絶大な回復力を持ってる薬なんて、普通は高いと思うんだけど……。
「まあ、1000万ゴールドはくだらないだろうな」
「1000万!?」
「まあ、俺はこの『神の血』の製造ができる能力を持ってるからな。在庫が腐るほどある」
「ちょっと待て、1000万するものを腐るほど持ってるって……」
「その話はもういいだろう。ということで、体が疲れて動かなくなったらこれを飲んでもらう」
「おい待て、それってまさか……!」
「そう。精神的な疲れでぶっ倒れるまで、ずーーーーっと筋トレをしてもらう」
体中から冷や汗が出てくる。
「急がなくてはいけないからな、6ヶ月後に、この街にまた魔王軍幹部がやってくる」
「またかよ!」
「そう、そして、普通にトレーニングしただけでは、絶対に勝てない。しかし、筋トレ、回復、筋トレ、回復を繰り返せば、通常の何倍ものスピードで筋肉がつく」
「お、おい待て……!」
「これから6ヶ月、途中で死なないといいな」
そう言うと、カルセフは満面の笑みでこっちを見てきた。
やべえよ!怖えよ!
ま、待て待て、落ち着け。
何か他に、強くなるためのいい方法があるはずだ!
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脳内ヤッホーイ検索
ハヤマリョウさん
ワイのししょーが死んでまうようなトレーニング内容だしてきた
誰かワイのトレーニングの代案考えてほしい
ベストアンサー
変態と言う名の紳士さん
I have no idea.(知るかボケ。さっさと死ね」
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「そんな!あんまりだあああああああ!」
日本にいる母さんへ
母さん元気ですか
息子は今も元気に異世界で頑張っています
どんな困難も、きっと乗り越えられると
思っていました……
すみません
多分俺、死にますわ
「それでは、腕立て腹筋背筋スクワット無限トレーニング始め!」
誰でもいい!
「嫌だあああああ!助けてくれええええええ!」
これから忙しくなるので、投稿がかなり遅れると思いますが、なるべく早く投稿できるようにしますので、よろしくお願いします。