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第5話 ほぉら、前を見てご覧、これがお前の歩む道

「着いた……!」


なんとか、他の転生者が来る前に、あのダンジョンに着くことができた。


「さてと、準備を始めるか!」


他の奴らが来るのに、おそらく長くても2時間、短くて40分ほどだろう。


『どーせ倒せるし』とか言って、のんきに準備してるだろうからな。


それまでに、カイナ(あいつ)を倒す!




「まずは……『魔法設置』!」


これは、女神さんに貰った能力のひとつで、地面や壁などの平たいものに魔法陣を描くことのできるスキルだ。


この魔方陣に、自分以外の誰かが触れると魔法が発動する。


これで、『ファイア』の魔法陣を設置する。


「次に、『コピー』!そして『ペースト』!」


これも、俺が新しく貰った能力の1つ『コピー&ペースト』、略して『コピペ』だ。


選択したものをコピーし、それを実際に増やすスキルだ。


ただし、存在を保つのに時間制限があり、魔力を込めなければ、増やしてもすぐに消えてしまう。


例えば、インクが入ったビンを増やしたとしよう。


増やしたものとはいえ、本物のインクなので紙に書くことができる。


しかし、時間が経てば、ビンも、インクも、紙に書くために使ったインクもすべて消える。


魔力を限界まで溜めて『ペースト』したものであれば、1時間ほどで消える。


もちろん、魔力を全く溜めずに『ペースト』することもできる。


その場合だと大きさにもよるが、直径が30cmの球と同じくらいの体積のものであれば、およそ50秒ほどで消えてしまう。



『コピー』できるものは、生命でないもので、目に見えるもの。つまり、魔法も増やせる。


しかし、この場合は普通の物体とは違い、魔力を消費して唱える魔法を増やしているわけだから、より早く魔力を消費してしまい、魔力を込めなければ10秒も経たずに消えてしまうだろう。


しかし、今回『コピー』したものは『魔法設置』によって造られた『ファイア』の魔法陣だ。


この場合、『ペースト』して増やしたものは魔法という扱いにはなるが、実際には魔法はまだ発動していないので、魔法陣は残り続ける。


つまり、触れたら魔法が飛び出す即席の『罠』の完成だ。


あとは、カイナ(ボス)の部屋の前まで、『熱源感知』で敵を避けながら壁や地面に魔法陣を『ペースト』し続けていく。





「『ペースト』、『ペースト』、『ペースト』、『ペースト』、『ペースト』」


あれから、何分経っただろう。


俺は、かなりの数の魔法陣を造っていた。


「ホイッ」


そして、ある程度『ペースト』したら魔法陣の中に『結界石』を投げ込む。


この『結界石』という石は、強い衝撃を与えると石の周りに結界を張るという不思議な石だ。


これで、変なモンスターが魔法陣に触れるのを防ぐ。


この魔方陣たちは、あくまでカイナにダメージを与えるために作ったものだからな。


他のモンスターに当てるためじゃない。


とても高いものだから、細かく砕いて使っている。




「『ペースト』、『ペースト』、『ペースト』、『ペースト』、『ペースト』、『ペースト』、『ペースト』、『ペースト』」


俺がダンジョンに入ってから、20分が経過しようとしていた。


「さて、こんなもんでいいか」


俺はバッグから、『魔術石』を取り出す。


この石は、中に魔法を溜め込んで保存することができるもので、壊すと封じ込められた魔法を使うことができる。


おひとつ3万ゴールド。


今回用意した魔術石は、『テレポート』を封じ込めたものだ。


本当なら、さっきの結界石も同じく、とても高いものだったから『コピペ』して増やしたものを使いたいのだけど、この『コピペ』という能力のデメリットの1つとして、『使ったら時間切れよりも早く消えてしまうような、使い捨てのものを増やすことができない』という点がある。


つまり、時間切れになるまで存在し続けるものじゃないといけない。


この石は、使うと中の魔法が消えてしまうから増やせないらしい。



「『テレポート』!」


俺は、魔術石を地面に叩きつけた。


「おお、すげぇ!本当に瞬間移動できるんだな!」


次の瞬間、俺はダンジョンの入口に立っていた。


「さてと、次の作業だ」


俺はバッグから、『聖水』が入ったビンを取り出す。

この『聖水』とは、人体から出てくるレモンティーのことではなく、神聖な力によって清められた水のことを指す。


ちなみに、10リットルのものを購入した。


ビンのフタを開け、ダンジョンの入口にある下へ向かう階段にビンを置く。


「『コピー』」


ビンの中の聖水のみをコピーする。


「『ペースト』『ペースト』『ペースト』『ペースト』『ペースト』『ペースト』『ペースト』『ペースト』」


それを、ひたすら『ペースト』していく。


『ペースト』された聖水はビンに入り切らず、どんどん溢れていき、階段の下へ流れていく。


「『ペースト』『ペースト』『ペースト』『ペースト』『ペースト』『ペースト』『ペースト』『ペースト』『ペースト』『ペースト』『ペースト』」



いま俺が何をしているのか、分からない人のために説明しよう。


この聖水は、誰もがよく知っているように『アンデッド』系統のモンスターにそれはよく効く。


下級アンデッドならこれで一撃で倒せて、上級アンデッドでも大きなダメージを与えられる。


『コピペ』によって、溢れた聖水は、重力にしたがってダンジョンのより下へと流れていく。


結界石によって張られた結界も、そろそろ解ける頃だろうし、流れていく聖水をせき止めるものは何もない。


つまり…………。




「人間どもはいつ来るのだろうか」


「まだまだ先の話ではないでしょうか」


「そうかも知れぬな……」


「か、カイナ様ッ!!」


「どうした、そんなに慌てて」


「お逃げください!」


『ドドドドドドドドドドドドッ!!』


「何だとッ!?」



そう、あの部屋は奴らにとって猛毒の海になる。



「グアアアアアッ!!な、何だと……!体が……再生しない!?まさか、この大量の液体全てが『聖水』だというのか!?」


「か、カイナ様ッ!!うわあああああああああああああッ!!」


「痛っでええええええええッ!!なんスカ、これ!?」


「体がッ!体がああああああああッ!!」


「クッ、なんて量だ……!グオオオオオオオオオオッッ!!」



そして、これらの聖水は、時間が経てばすべて消える。



「ああああああああああぁぁぁ………あれ?」


「消え……た?」


「一体何だったんだ……?」


「ハアッ……ハアッ……フ……フハハハハハッ!」


「大丈夫ですか、カイナ様!?」


「ああ問題ない!まだ傷が残っているが数分もしないうちにすべて消える!そうか……そうきたか!」


「な、何がでしょう?」


「これは人間どもの宣戦布告だ!しかも愚かなことにこの部屋に大量の聖水を流してきおった!つまり、奴らがこの部屋に来ることはない!吾輩自ら外に出てきて戦えと言っているのだ!」


「マジッスか!?」


「そうだ!お望み通り血祭りにあげてやろうではないか!」


「かっけぇっス!さすがカイナ様っス!」


「お待ち下さい、カイナ様!わざわざカイナ様が行くべきではありません!下等な人間どもがカイナ様のもとへ来るべきです!」


「黙れ!せっかく吾輩が作り上げたダンジョンを全て無視して、吾輩に自ら外に出てこいと言っているのだぞ!?こんな無礼、許してたまるか!ちゃんとダンジョンをクリアして、ボスの我輩のところまで来るのが当たり前だろうが!」


「し、しかし……」


「お前が何を言おうと、吾輩は行く!ついてきたいならついてくるが良い!」


「お、俺は行きます!」


「俺も行くっス!」


「……わ、私も行かせていただきます!」



「さあ、はやく人間どものところへ行ってやろうではないか!」


「人間どもの怯える顔が楽しみですね!」


「ああ!」


しかし、彼らは気がついていなかった。周りにある大量の魔法陣に。


「そういえば、お前たち今日の調子はどうだあああああああああッ!?」


「「「か、カイナ様あああああああッ!?」」」


カイナが触れた魔法陣から、炎の柱が現れた。


「あああああああああああぁぁぁ……ハアッ……ハアッ……」


「だ、大丈夫ですか?」


「少し驚いたが大丈夫だ。まさか、魔法が出るトラップなんてものを用意しているとは……。しかし、吾輩は自動回復(オートヒール)の能力を持っているからな。こんな魔法たあいもない」


「か、カイナ様……」


「ん?どうした」


「ま、前を……見てください」


カイナがアンデッドナイトの指差す方を見ると、そこには大量の魔法陣が存在していた。


「……これ全て、吾輩がかかった(トラップ)と同じものか?」


「そのように見えます……」


「カイナ様、ここは俺があの(トラップ)にかかって道を開けましょう!」


「……いや、よい。その役、吾輩が引き受ける」


「し、しかし……」


「吾輩には自動回復(オートヒール)があると言ったであろう。だから、どんな魔法が来ようと、吾輩は大丈夫だ。吾輩が、お前たちを守ろう」


「……ッ!ありがとうございますッ!」


「さすがカイナ様ッス!一生ついていくッス!」


カイナは、スタスタと魔法陣の方に向かい……。


「見るがいい!こんなに巨大な炎の柱の中にいても、吾輩は平気だ!」


自ら、炎の魔法を浴びた。


「さすがは(キング)!素晴らしいです!」


「ハハハハハッ!!そうであろうそうであろうッ!!」


カイナは、また少し歩くと、魔法陣に触れた。


「…………何も出てこないが」


しかし、何も魔法は出てこなかった。


『あらぁ、鎧を着た人たちが沢山♡』


『鎧の下には一体どんな体が入ってるのかしらぁ♡楽しみねぇ♡』


その代わりに、大量の男たちが現れた。



「な、何者だ!?」


『あらぁ、恥ずかしがらなくてもいいのよぉ♡』


「カイナ様、そこをどいてください!『炎獄スラッシュ』!」


男の一人に向かって、炎の刃が飛んでいく。


『はあああああああああんッ♡すごく熱いわ♡でも、私の愛はもっとアツいわよ♡』


「なッ!?何故効いていない!?」


『お兄さんたち、私たちとイイコトしましょう♡』


「ヒッ!?ち、近よるな!」


『大丈夫よ♡最初は怖いかもしれないけど、だんだん気持ちよくなるから♡』


「ま、待て!我輩たちはアンデッドだぞ!だから、あのー……そういったコトはできない!」


『え……アンデッド?』


『アンデッドって……ゾンビとか、そういう感じの?』


途端に静かになる男たち。


「今だ、食らえ!『星屑の槍(アストラル・ランサー)』!」


カイナは男たちに向けて、金色に輝くヤリを放った。



『そんなの関係ない♡!』


しかし、男たちはそれを簡単に受け流した。


「な、何だと!?」


『アンデッドでも、アナはあるでしょう♡?なら何も問題はないわ♡」


「ヒッ、やめろ!我輩に近づくな!」


『一緒に、天国に行きましょう♡』


「うわああああああ嫌だああああああッ!!」


「カイナ様あああああああああ助けてくださいいいいいいいいッ!!」


「無理だ!吾輩の攻撃をあんな簡単にいなすやつらなんて……!」


「そんなああああああああッ!!」


「うわあああああああああああああああああッ!!」





「さあて、幹部は今頃どうなってるかな?」


俺は今、ダンジョンの前でビーチパラソルを開き、ビーチチェアに寝転んで、ワインを片手に、『巨乳お姉ちゃんとの甘々バブバブPlay:お姉ちゃんの癒やし編』というタイトルの官能小説を読んでいる。


「んー、このワインはいいね。ベラウ地方産だっけ?とても芳醇な香りだ」


グラスを揺らしながら、香りを楽しみ、そして、味わう。


「ゴハッ、ガハッ!」


何だこれ!?不味い、不味すぎる!大人はこんなものが美味いと感じるのか!?


くそッ、せっかく『この店で一番高いワインをください!』って言ったのに……。


「ステータス!」


=====================================


名前【ハヤマ リョウ】

職業【魔法剣士】:クソ雑魚乙ww

レベル【34】

物理攻撃力【C】:156

防御力【D】:120

魔法攻撃力【C】:163

魔法抵抗力【D】:108

知力【A】:235

素早さ【C】:149

魔力【C】:157


能力 【常識破壊】効果発動:永続 ランク【SS】:不遇で残念だったねwww

   【地図】効果発動:任意 ランク【C】

   【武器鑑定Lv1】効果発動:任意 ランク【C】

   【硬化Lv1】硬化発動:任意 ランク【D】

   【熱源感知】効果発動:任意 ランク【B】

   【魔法設置】効果発動:任意 ランク【B】

   【コピー&ペースト】効果発動:任意 ランク【A】


=====================================


聖水で多くのアンデッドモンスターを倒したのか、俺はかなりレベルアップしていた。


「さあて、そろそろ来る頃かな?」


俺は、起き上がると、ダンジョンの入り口の前に立った。


「幹部様のお出ましだな」


そこには、魔王軍幹部のカイナが立っていた。



「ハアッ……ハアッ……」


「よお、魔王軍幹部のカイナ・ヴィルドラドさん」


「き、貴様か……あのトラップを設置したのは!」


「ああ、そうだけど?」


「……よくも、よくも部下たちをッ!!」


その姿はとてもひどいものだった。


頭からは魚の干物が垂れ下がり、右手に大根、左手にでんでん太鼓を持っていて、股のあたりには白鳥の頭がついている。


腰につけているふんどしには『吾輩は童貞でござる』と書いてある。


「まさか、ここまでひどくなるなんて……」


そう、俺が設置した魔法陣は全て『ファイア』の魔法陣。


だが、俺の魔法は『常識破壊』の効果で全く別の魔法になることがある。


つまり、俺にもなんの魔法が出るのかは魔法を使ってみないと分からない。


だけど、どんな魔法が発動したらあんな姿になるんだ!?


「アンタの部下がどうかしたのか?」


「貴様の魔法のせいで……!」


一体何があったのだろうか。このカイナと同じような姿になって、精神的苦痛でまいってしまったのか?


それとも、聖魔法みたいに大ダメージを与えるような魔法を食らったとか?


「いつもダンジョン内の見張りをしてくれていたラインは……壁に頭を打ちつけてなぜか感謝をして……」




『ガンッ!ガンッ!ガンッ!ガンッ!』


『ああああああああありがとうございますありがとうございますありがとうございますうううううううううッ!!』




「吾輩のことを素晴らしいご主人様と言ってくれたルーベルトは……なぜかキノコの名前を言い始め……」




『ポイズンドロールタケ……コビトホウシタケ……ウスイホンタケ……タケリタケ……ジュクジョ……美味しそうっス……』


『しっかりしろ!そんなキノコたちはここにないし、そもそも全て食べられないものだぞ!目を覚ませ!』




「そして、吾輩に一番良く尽くしてくれたソルバは……吾輩たちの身代わりに……!」





『カイナ様!ここは私が引き止めます!ラインとルーベルトと一緒にお逃げください!』


『し、しかしお前を一人で置いていくなど……!』


『大丈夫です!かならず戻ってきますから!』


『……すまない』


『あーらまぁ♡他の3人を庇って逃してあげるなんて♡』


『なぁんて格好いいのかしら♡』


『さあ、くるなら早くこい!』


『もう、欲しがりさんなんだから♡強欲な子には、ちょっとお仕置きが必要ね……♡』


『え?』




『もっと、もっとお願いします!!』


『ダメでしょ♡ちゃぁんと心を込めて、お願いしないとねぇ♡』


『お願いします♡!完全敗北した豚の私に、もっと快楽を与えてくださいッ♡!』


『うふふ♡いい子ねぇ♡』


『スパァンッ!スパァンッ!』


『アッーーーーー!』




ダメだ、ここまでひどいとは、想定外すぎる。


「全て……貴様のせいだあああああああああッ!!」


そう言うと、カイナは右手に持っていた剣……じゃなかった、大根を構えながら、こっちに向かって走ってきた。


「ああああああああああああああああッ!?」


しかし次の瞬間、カイナの姿は消えてしまった。


いや、正確に言うと、()()()っていうのが正しいかな。


「どうですか、俺のお手製落とし穴は」


「な、何故だ!?どう見てもただの地面しかなかったぞ!?」


彼がそう思ったのも無理はない。


確かに、見た目では誰も落とし穴があるなんて思わないだろう。バレないような落とし穴を作ったからな。


仕組みはこうだ。


まず、穴を掘り、その上に真っ白の布をかぶせる。


そして、()()を『コピー』し、布に『ペースト』した。


すると、あら不思議。地面と全く同じ色の布が完成する。


穴にかぶせてみても、地面と完全に同化している。


まったく、どうかしているぜ。



「だが、こんな穴、すぐに這い上がって……!」


「ほい」


「へ?」


俺はカイナの上に『純銀の剣』を落とした。


もちろん、剣は重力に従って落ちていき……。


「ガアアアアアアアアアアッ!!」


カイナの体に突き刺さった。


「な、なんだ、この剣は!?ち、力が、吸い取られていく……!」


「やっぱりそうか。いや、なんかあると思ってたけど予想的中だな」


「何の話だ……!」



前に、より強度が高いはずの『鉄の剣』より『純銀の剣』のほうが武器としてのランクが高かったことがある。


最初は、なぜ『純銀の剣』の方がより良い武器なのか、さっぱり分からなかった。


だけど、この世界をファンタジーの世界と考え直してみたときに、『銀は聖なる力を持つ鉱物だから、ヴァンパイアに効く』という話を思い出した。


『ヴァンパイア』はアンデッド系モンスターの中でも最上位の種族の1つだ。


『……アンデッドのヴァンパイアに効くんなら、ほかのアンデッド系モンスターにも効くんじゃね?』



「というわけで、大量の鉄の剣を買って、全部純銀の剣にしてきた」


『コピペ』で増やせばいいのかもしれないが、それだと消えてしまうので、消えたところから回復されてしまう。


だから、本物(オリジナル)を大量に用意した。


「グオオオオオオオッ!!体が……再生できない……ッ!」


「ほーれ、2ほーん。3ぼーん。4ほーん」


「ぐああああああああッやめろおおおおおおおおおおッ!!」


「7ほーん。8ぽーん。9ほーん。10ぽーん」


「ぐあああああああああああああああッ!!」



「14ほーん。15ほーん、あら、もう剣が1本しか無い」


「グアッ……体がッ……焼ける……ッ!」


そういえば、アンデッドには()()が効くんだったよな?


『ジィーーーーーーーッ』


「ま、待て!き……貴様、一体何をするつもりだ!」


「いや、()()をかけようと思ってさ」


「や、やめろ……それだけはやめてくれ!」


「ほら、かーぜに揺られてぶーらぶらっと」


『ジョボボボボボボボボ』


「ぐあッ、やめ……ッ!」


「ほーら、最後の一本だよっと!」


『ザシュッ!』


「ガッ!あっ…………」


カイナが静かになる。


「やった……のか?」


……ついに、ついに倒した!


「ここがそのダンジョンか……てあれ?どうしてリョウがここに?」


「ああ、マコトか。ちょうど」


カイナを倒したところだよと言おうとしたとき。


「……ふ、フフ、フハハハハハッ!!」


「な、なにッ!」


穴の中からカイナの笑い声が聞こえてきた。


「この声ってまさか……!」


「そう、魔王軍幹部、カイナ・ヴィルドラド。だけど、今俺が倒したはずなんだ……」


「倒しただと?この我輩を?驕るな、人間!」


そういうと、カイナの体が浮き、穴の外に出てきた。


「な、なんでだ……。もう体力は残ってないはず!」


「貴様ごときにこの私が倒せると思ったのか!」


「なんだ……何をする気だ!」


「まあ、吾輩も侮っておったわ……ここまで我輩を追い詰めた人間は何十年ぶりだろうか……吾輩の部下たちも、せっかく作ったアンデッドたちも軒並み倒しおって……」


「何言ってるんだよ」


「お前も今からボクたちに倒されるんだよ」


武器を構える他の日本人たち。



「どうやら、()()()戦ったほうがいいらしいな!」


そう言うと、カイナの体がブクブクと膨れ始めた。


「グオオオオオオオオオオオオオッ!!」


「おい、なんだよこれ!?」


焦る俺。


「おお、変身すんのか」


「まあ、ボスモンスターのテンプレ行事だからね」


「サクッと終わらせるか!」


そんな俺に反して、他の日本人たちはとても落ち着いている。


そして、カイナの体は、とても巨大でいびつな姿になった。


『貴サマらを……ぶチのめシテ……部カのかたキを……!』


そんな言葉を叫ぶと、こっちに向かって襲い掛かってきた。





『死いィネええエエえええええエエッッ!!』

次回は、また数日後に出すつもりです。

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