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第4話 ちょっとのお金と、明日のブリーフさえあれば

前回までのあらすじ。


日本に生まれた平凡な高校生であるこの俺、葉山涼は、襲われそうになっていた女子高生を庇って死亡。


しかし、女神の導きによって異世界に転生することになった。


転生先の世界は、剣や魔法でモンスターと戦う、ゲームのような世界だった。


これでテンプレ通りなら、何か特典を貰えることが多いんだが、もちろん俺も貰っていた。


しかし、俺が貰った能力は異世界系やなろう系の作品の主人公達が貰うような『チート能力』ではなく、魔法での攻撃が自分に当たるという、魔法が使える世界なら絶対にあってはならないデメリットを持った能力だった。


他に特に大きなメリットがあるわけでもない、そう、俺の能力はまさに『ハズレ』の能力だったんだ。


そんな能力なのにもかかわらず、女神は『魔王を倒して』と言ってきた。


無理だと言ったら、代わりに何でもすると言ってきたから、新しく能力を3個ほど貰うことができた。


新しい能力によって、普通の冒険者くらいには戦えるようになった俺は、新ダンジョンの探索という少し難易度が高いクエストを受けることにしたわけだ。



そんな俺は今、そのダンジョンの中を全力で疾走している。


どうしてこうなったのか、とりあえず、事の顛末てんまつを聞いてほしい……。



〜30分ほど前〜



「ここが例のダンジョンか」


俺は、クエストの紙に書かれていたダンジョンの前に来た。


ダンジョンの探索ということだから、どんなモンスターが生息しているのか、危険なモンスターはいないかなどを確認するだけでいいらしい。


さあ、早速入るとしよう。ダンジョンの中は暗いからな、ランプの火をつけてから行くとしよう。



「お、早速反応が」


俺の頭のなかに、地図のようなものが表示される。


これは、俺が新しく貰った能力の1つの【熱源感知】だ。


文字通り、自分の周りの温度の違いが分かる能力だ。


この能力を使って、生き物や動いているものがどこにいるのかが分かるようになる。


どんなものでも、動けば熱が起こるからな。


「この地図が確かなら、この壁の向こう側に……」


壁から少し頭を出して、壁の向こう側をのぞく。


そこには、数体の人型の何かが動いていた。


ランプで少し照らしてみる。



『あアアアァァ……ぐ……ウアだアァあ……』


そこには、数体のゾンビがズルズルと歩いていた。


「うわ……やべえ、流石に生で見ると……」


ゾンビたちはところどころ、腹から内蔵が飛び出していたり、関節がありえない方向に曲がっていたりなど、見るからに無惨な姿をしていた。


流石にあれと戦うのは気が引けるな……。



「ステータス……」


=====================================


名前【ハヤマ リョウ】

職業【魔法剣士】:クソ雑魚乙ww

レベル【11】:たしか日本では11/11をパッキーの日って言うんだっけ?

物理攻撃力【C】:54

防御力【D】:39

魔法攻撃力【C】:51

魔法抵抗力【D】:35

知力【A】:67

素早さ【C】:48

魔力【C】:52


=====================================


このステータスで勝てるかなぁ……?


……ん?なんか、俺のステータスの後ろに変なものがあるな?


表示されている俺のステータスに触れると、その後ろにあるものと俺のステータスが入れ替わった。


=====================================


名前【ゾンビ】

レベル【20】

物理攻撃力:70

防御力:40

魔法攻撃力:34

魔法抵抗力:63

知力:13

素早さ:50

魔力:10


=====================================


……ウソだろ?ただのゾンビのほうが異世界転生者より強いってどゆこと?


レベルも高いし、物理攻撃力なんて俺よりも16も高いじゃねえか。


ていうかなんでゾンビのステータスが見れるんだ?


ステータス見たら余計に戦いたくなくなってきたな……。



「まあでも、戦う必要はないって言ってたしな。ここは無難に見つからないように逃げて……」


俺は、忍び足でゆっくりと音を立てないように歩いていく。


『カランカラン……』


しかし、うっかり腰から下げていた剣を落としてしまう。


「………………」


脂汗が顔中から溢れ出してくる。


【熱源感知】によって、大量の熱源が俺に向かって近づいてくるのが分かる。


「マズイマズイマズイマズイマズイ!」


急いで走り出そうとするが、すでに後ろからは沢山の不死者アンデッド達が追いかけてきているのが見える。


『オgゴァァアアアアア!』


『ゴギュルdファアアエェアアア!』


そんな意味不明な奇声をあげながらおいかけてくる。


さながらゾンビ映画やバ○オハザードのように。



「うあああああああああああああああああ!!」


俺は必死で逃げる。


いや、この状況、普通のゲームで考えたらキャラクターを操作してただ逃げるだけだけどさ、まさか俺自身で現実リアルで逃げるハメになるとは思わなかったわ!!


「グアッ!!」


と、走っていたら何かにぶつかった。


思いっきり走っていたせいでその分かなり強くぶつかってしまった。


「イテテ……」


顔を上げて、何にぶつかったのか確認してみると……。


「……………………」


そこには、顔がえぐれて、脳みその断面図がむき出しになり、目玉が垂れ下がった状態のゾンビがいた。


「イヤアアアアアアアッ!!」


思わず女みたいに叫んでしまう。


「うおあああああああああああああ!」


すぐにダッシュで逃げ出す。


しかし、不死者アンデッド達はまだ追いかけてくる。


「うわあああああああああああああああああ!」


………………………。




「そんで今に至るってわけよ!」


なお、先程も言ったように、俺はまだモノホン(リアル)鬼ごっこ中である。


「うおおおおおおおおおお!!」


ひたすら逃げ続ける。


それでもまだ追いかけてくる。


「ああ、もうッ!しつこすぎだろ!これでも、小1のときは学年で一番速かったんだぞ!?」


さらに力を出し、全力で走る。


「うおりゃあああああああああ!」





「ハア……ッ!ハア……ッ!」


な、なんとか逃げ切れた……!息が辛い……!


「ヒッヒッフー!ヒッヒッフー……」


……少し落ち着いてきた。


「ハァ……それにしても……ここは一体どこなんだ?」


あの後、俺は方向を完全に間違えてしまって、出口の方ではなく、ダンジョンのより奥の方へ向かってしまった。


そのせいで、現在俺は高校生なのに迷子になっている。


「……ん?何だあれ?扉?」


俺の視線の先には、一枚の扉があった。


……これアレだろ?どうせダンジョンのボスの部屋の扉とかなんだろ?


『ギイイィィ……』


扉を開ける。



「お邪魔しま……」


「おお、よく来たな冒険」


『バタン』


俺はそこにいた『何か』を見る前に扉を閉めた。


……あれだよな?この部屋は多分、『迷子センター』だよな?


迷子の俺を出口まで送り届けてくれるんだよな?


ていうか、今まで奇声しか上げないモンスターばっかだったのに、そんなモンスターばっかのダンジョンの奥の奥にいて、しかも流暢にしゃべるモンスターって流石にやばい匂いしかしないんだが……。


え?これってフラグ?俺が死ぬフラグですか?


……まあ、行くしか無いか。


「お、お邪魔します……」


「おい貴様、先程はなぜ扉を閉めたのだ?吾輩がせっかく挨拶をしたというのに、無礼とは思わぬのか」


俺の目の前には、真っ黒な鎧をつけた、いかにもって奴がいた。


「あ、それは……」


「フン、まあよい。こんなダンジョンの奥に来るということは、貴様は冒険者なのだろう?なら、やることは1つだ。分かるな?」


戦うこと。


「……ステータス」


相手に聞こえないようにつぶやく。もしもこれで、さっきと同じように相手のステータスが見れるのなら、戦う前に確認しておいたほうがいいからな。


=====================================


名前【カイナ・ヴィルドラド】

種族【不死の王(アンデッド・キング)

職業【魔王軍幹部】

レベル【257】

物理攻撃力:1708

防御力:1252

魔法攻撃力:2176

魔法抵抗力:1085

知力:2594

素早さ:1376

魔力:2748


能力 【自動回復(オートヒール)】効果発動:永続 ランク【S】 

    魔力を消費することで、体の傷や状態異常が自動で治る。


=====================================


思った以上の化け物モンスターだった。いや、『化け物』と『モンスター』って同じ意味か。


マジかよ!?魔王軍幹部!?いきなりボス戦ですか!?


いや、全ステータスが4ケタって、頭おかしいだろ。


どうやったらそんな化け物に勝てるんだよ!


しかも、攻撃しても【自動回復(オートヒール)】で全部回復するんだろ?



「こんなの……無理ゲーじゃねえか……」


考えろ、考えろ俺。どうやったらこの窮地を抜けられる?


考えろ、俺は知力が【A】なんだろ?考えろ!


「吾輩は魔王軍幹部が一人、カイナ・ヴィルドラドである!さあ、戦う覚悟はできたか?」


考えろ!考えろ!考えろ!


「では、こちらから行かせてもらおう!」


そう言って、魔王軍幹部さんは、こっちに向かって走ってきた。


俺は考えに考え、知恵を振り絞った。





その結果、俺は『逃げるが勝ち』ということわざに従うことにした。





「おりゃッ!!」


「なッ!?」


俺はカイナに向けて、前もって買っていたことを忘れていた目眩まし用のケムリ玉を投げつけた。


「よし、今だ!」


俺は扉に向かって全力で走り始めた。


「うおおおおおおおおおお!!」



〜15分後〜


「ハア……ッ!ハア……ッ!」


な、なんとか逃げ切れた……(本日2回目)。


それにしても、妙だな。


あのステータスなら本気で追いかければ簡単に俺に追いついてこれただろうに。


なんか、()()()()()()()()()()……。


考えすぎか。


とりあえずは、生きて帰ってこれたことを喜ぶとしようじゃないか。





一方その頃、魔王軍幹部カイナは…………。



「……フッ、逃げたか」


「しかしカイナ様、本当に逃しても良かったのですか?」


「ああ、逃がさなければ意味が無いからな」


魔王軍幹部の彼には、頼れる部下がいる。


上級アンデッドモンスターのアンデッド騎士ナイトたちである。


上級にもなると、知能があるため、普通のアンデッドモンスターとは違って会話ができる。



「と、言いますと?」


「普通に倒すだけでは意味が無いということだ」


「何か、倒さないことにメリットがあるんスか?」


「そうだ、良いか。もしあのとき、普通に倒しただけなら人間どもはどうなると思う?」


「えーと、このダンジョンが危険だと認知しますね」


「そうだ、その結果、このダンジョンにはより強い冒険者が訪れるようになる。また、その冒険者を倒す。それを繰り返していくと……」


「魔王様のじゃまになるかもしれない輩に出会えて、潰せるってコトっスね!」


「そうだ、そのとおりなんだが……その方法では、本当に倒したい相手に出会うために時間がかかる。だが、吾輩の正体を明かした上で、吾輩が誰なのか知っているものがギルドに報告に行けば……?」


「カイナ様を倒すために、めちゃんこ強い奴らが呼び出されるッス!」


「私の狙いはそこだ。その方がより早く、脅威となるであろう者たちに会えるというわけだ」


「流石ッス、カイナ様!かっけぇッス!」


「ハッハッハ、そうであろうそうであろう。というわけだ。これから、とてつもなく強い輩がやってくることになるだろう。皆の助けが必要だ」


「かしこまりました。私たちは、カイナ様に復活させてもらった身。カイナ様のご意思に従います」


「オレもッス!なんでも言ってくださいッス!」


「ありがとう、お前たち」


………………………………。






俺は、今ようやくギルドに着いた。


「すみません!」


「あら?リョウさん?どうしたんですか、そんなに焦ったような表情をなさって」


「クエストの……!」


「ああ、クエストの報酬の受取ですね」


「そうじゃないんです!いや、それも大事なんですけど!」


俺は、息を大きく吸い込んで……。



「『魔王軍幹部』が現れたんです!」


大きな声で、言い放った。



「え、それは本当なんですか!?」


「はい、マジです!俺が調査に行った新ダンジョンの奥にいました!」


「あの、その幹部の名前とかって分かりますか!?」


「『カイナ・ヴィルドラド』です!」


「カイナ……あの、アンデッドキングの!?」


「はい!」


「マズイですよ!今すぐ、人を要請しなくちゃ!」


お姉さんは、マイクを手に取ると……。



『緊急クエスト!緊急クエスト!近くのダンジョンに、魔王軍幹部『不死の王(アンデッド・キング)』のカイナが現れました!ゴールド以上のランクの冒険者の皆さんは至急、ギルドに来てください!』


街全体に、お姉さんの声が響き渡る。


『え!?おい、マジかよ!?』


『魔王軍幹部!?』


ギルド全体が、ざわつき始める。


冒険者には、それぞれランクがあり、低い方から、白、カッパー、シルバー、ゴールド、プラチナ、黒というふうに振り分けられる。


まあ、魔王軍幹部を倒せるやつは、ほとんどがゴールド以上だろうからな。


白の俺が特にできることはないだろう。



「あのー、ちょっといいかな?」


「え?」


急に後ろから、声をかけられた。


「君が、魔王軍幹部に会ったっていう人かい?」


後ろを振り返ると、そこには一人の男がいた。


「ああ、そうだけど。アンタ誰だ?」


「自己紹介がまだだったね、ごめん。ボクは、『スドウ マコト』。プラチナランクの冒険者だよ」


スドウ……マコト!?


「もしかして、アンタ日本人か!?俺は『ハヤマ リョウ』っていうんだけど!」


「え、まさか君も日本人なのかい?奇遇だね」


「ああ、ちなみに、俺が『魔王軍の幹部に会ったヤツ』で間違いないぞ」


「良かった、幹部について話が聞きたいと思っていたからね」






「なるほど、多くのアンデッドモンスターを従えて、ダンジョンの奥に住み着いていると……」


「ああ、マジでヤバイやつだぜ」


なんせ、全ステータス4ケタで自動回復持ちときたもんだ。


ただでさえ回復力が高いアンデッド系統のモンスターなのに、回復能力マシマシという、さすが幹部といったステータスだった。


…………ちなみに、このマコトってヤツは一体どんなステータスなんだ?



「ステータス」


そう、ボソッと呟いた。


目の前に、マコトのステータスが現れた。


=====================================


名前【スドウ マコト】

職業【ソードマスター】

レベル【154】

物理攻撃力【SS】:7638

防御力【SS】:6380

魔法攻撃力【SS】:2547

魔法抵抗力【SS】:6199

知力【SS】:5760

素早さ【SS】:4513

魔力【SS】:6078


能力 【天災的な才能ディザスター・ジーニアス】効果発動:永続 ランク【SS】

    全ステータスの基礎値が【SS】になる。得られる経験値が7倍になる。

    レベルアップのときに得られるステータスが3倍になる。


=====================================


あまりの強さに、俺は絶句してしまった。


まさか、あの幹部より強いなんて……。


ていうかあの幹部確かレベル200代だったよな?


それよりレベルが低いのに、このステータス……!


そして、この能力、俺と同じSSランクの能力だとは思えねぇ……強すぎる!


「……なあ、マコト。お前ってこの世界に来てから何年だ?」


「え?まだ1ヶ月も経ってないけど……」


…………は?


た、たったの1ヶ月も立たない間にここまで強く……?


「あ、他のみんなも来たみたいだね」


その言葉を聞いて、ギルドの入り口に目を向ける。



「たく……、魔王軍幹部だってよ」


「ほんと、めんどくせーよな」


「まあ、ボクたちにかかれば簡単に終わる話だろ?」


そこには、黒髪黒目の男が3人いた。



「……ステータス」


まさか、こいつらも……!


=====================================


名前【タカセ ヤスキ】

職業【回復術士(ヒーラー)

レベル【114】

物理攻撃力【A】:2078

防御力【B】:1430

魔法攻撃力【S】:2247

魔法抵抗力【SS】:4309

知力【A】:2090

素早さ【B】:1113

魔力【S】:3851


能力 【神の慈悲マスター・オブ・ヒーラー】効果発動:永続 ランク【SS】

    全ての回復魔法が全回復魔法と同じ威力になる。死んでから1時間以内の

    者に回復魔法を行うとその者を1度だけ蘇らせることができる。


=====================================



=====================================


名前【スズキ タツヤ】

職業【騎士(ナイト)

レベル【108】

物理攻撃力【S】:2638

防御力【S】:2440

魔法攻撃力【B】:1732

魔法抵抗力【A】:1869

知力【B】:1377

素早さ【S】:2713

魔力【B】:1160


能力 【約束された勝利(ウィナー)】効果発動:永続 ランク【SS】

    どんな勝負にも、必ず勝つ。


=====================================



=====================================


名前【クドウ タイセイ】

職業【格闘家】

レベル【48】

物理攻撃力【B】:99999

防御力【A】:99999

魔法攻撃力【S】:0

魔法抵抗力【A】:99999

知力【A】:276

素早さ【B】:99999

魔力【SS】:0


能力 【脳筋】効果発動:永続 ランク【SS】

    魔法攻撃力と魔力が0になる代わりに、物理攻撃力、防御力、魔法抵抗力

    素早さが全てカンストする。


=====================================


全員化け物だった。


もう強すぎて、何も言えない。


全ての回復魔法が全回復魔法と蘇生魔法になる能力、どんな不利な相手でもかならず勝つ能力、どんな相手も一撃で粉砕できるようになる能力。


うん、全部チートだ。


特に、最後の2つが頭がおかしい。


どんな勝負にも勝つって、相手が魔王でもだよな?いや、強すぎだろ。


あと、ステータスが99999って、ゲームのバグみたいだ……。


「どうしたんだい?ボーっとして」


「……え?あ、いや、なんでもないさ……」


マコト(こいつ)も、あいつらも……俺と同じ転生者で、俺と同じ、ランクSSの能力を持っている。


でも、こいつらの能力は、まるでラノベの主人公みたいな能力を持っていて、俺は同じランクのはずなのに、全く使えない能力を貰った。



…………なんだこれ。


ふざけんな。


なんで、俺だけ、こんな弱い能力貰ってるんだよ。


ステータス基礎値だって、こいつらSやらAばっかじゃねえか。俺なんか、CとDばっかだぜ……?


なんで、俺だけ……。



「皆さん!頑張って魔王軍幹部、カイナを倒してきてください!」


「分かってるよ。オレ達に任せとけ!」


「なに、()()()()()()()すぐに片付けてきますよ」


……いつも。


なるほど、こいつらは、ここ数日の俺と違って、最初からチートを使ってなんの苦労もせずにモンスターを倒し続け、何不自由無い生活をしてきたわけだ。


……ふざけんな。


俺だけはあいつらと違って、茨の道を歩けってか!


……ああ、そうか。



()()()()()()、力をもつ人間が全てなんだ。




「ねえ、マコト、大丈夫なの?魔王軍幹部なんて、私怖いよ」


「大丈夫だよ、メアリー。ボクが負けたことなんて一度もないだろう?」


「う、うん」


「大丈夫だよ、必ず戻ってくるよ」


マコトが、メアリーという名の女の頭を撫でると、女は安心したようで、ニッコリと笑った。


……ああ、ムカつく。目の前でイチャイチャすんじゃねえ。


クソッ、爆発すればいいのに。



「カイナ・ヴィルドラドの賞金は5億ゴールドです!」


お姉さんが、そう言った。


ああ、あいつらは、あの幹部を秒で倒して、賞金貰って、そんでその金で美少女たちとイチャイチャするんだろなぁ。


俺は雑魚モンスター狩って、一人寂しく、ほそぼそと暮らしていくだけ。


……それでいいのか?


なんであいつらが、全く努力も積まずに、いい能力貰えて、何不自由ない生活を送れて、俺は一人で地道にレベルアップしていかなきゃいけないんだよ。


………………。



「ああ、そうだ、リョウ。君のことをもっと教えて欲しいなってあれ?リョウ?」





「クソックソックソッ!!」


気がつけば、俺はギルドを飛び出していた。



〜服屋にて〜


「アンナさん!」


「あら、坊や。どうしたの、そんなに急いで」


「動きやすくて、耐久性に優れた服を、上下一式!あと、デッカい正方形の白い布を一枚、両方とも大至急で用意して!」


「え?ああ、分かったわ。すぐ、用意するわね」



〜武器屋にて〜


「店長!」


「おお、今日はどうしたんだ?」


「一番安い鉄の剣、20本用意してくれ!」


「20!?そんなに買って、なんに使うつもりだよ?」


「いいから、大至急で!」


「いや、一番安い鉄の剣ってショートソードのことだろ?あれ、買う人が少ないから、あんまり在庫おかないようにしてて……」


「20本未満でもいいから!」


「わ、分かったよ……ちょっと落ち着けって」



〜魔道具店にて〜


「ブリーフ!」


「あのー、ごめん。買い物に来てくれたのはいいんだけどさ、その呼び方やめてくんない?街中で人に合うたびにその呼び方で呼ばれるんだよ!おかげで店は大赤字なんだよ!」


「知らんよ。街中でもいつもブリーフしか着てないアンタが悪いんだろうが。赤字なのも、誰もアンタのセクシーショットなんて見たくないから、店に客が来ないんだろ。そんなことより……」



力がなけりゃ、魔王軍の幹部なんて倒せないって?


そんな『常識』、俺が『破壊』してやる。


見てろ、レベル、ステータス、共に2ケタ。能力も不遇な俺が、魔王軍幹部を倒してやる。




5億は俺のもんだ……!


あんな、リア充どもに渡してたまるか!

投稿が遅れてしまい、申し訳ありません。次話からはもっと早いペースで投稿できると思いますので、読んでいただけると嬉しいです。


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