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第3話 銀のアルケミスト

俺の能力が『常識的にありえないことを起こす』能力疑惑が浮上したので、あのあと、この能力で色々試すことにした。


そして、分かったことが……。



・攻撃をするときに、その攻撃が普通の攻撃か、クリティカルになる。


・魔法を使うと、その魔法の属性や効果が変わる。自分への攻撃になることがある。



この2つがわかった。


クリティカルになるのはいいけど、魔法を使うと自分自身への攻撃になることがあるのは最悪だ。


試しに【ファイア】を岩に向けて使ってみたときがあったけど、そのときは【ファイア】が出ないどころか、俺の体が【アイス】によって凍ってしまった。


チートを使って無双して俺TUEEE!するつもりだったのに……。


そんな俺は今、この能力を活かした実験をしている。


「そろそろいいかな……」


俺の目の前には、3つの瓶がある。それぞれ、中に液体と金属の棒が入っている。


俺はそれらのフタをすべて開け、中から金属の棒を取り出した。


「……はは、まさか本当に成功するなんてな……」


その棒は1本だけキラキラと全く違った輝きを発していた。


俺が今やっているのは、いわゆる『錬金術』と言われるものだ。


有名な『錬金術』は、安価な金属から様々な化学変化を利用し、金や銀などの貴金属を生み出すものがある。


俺の世界でも、紀元前から行われてきたとされているが、この錬金術は絶対に成功しないものだった。


物体には、それぞれ決まった原子があり、鉄なら鉄、銅なら銅、金なら金の原子でできている。


それらの原子の組み合わせを加熱などの化学変化でいくら変えたところで、全く別の原子を作ることはできない。


だから、錬金術はただの夢物語。それが、常識だ。


俺なら、その常識を破壊できると思って、実際にやってみることにした。


というわけで、錬金術に使われたという話を聞いたことがある液体を作ることにした。


魔道具店で『なんでも溶かすポーション』というのが売っていた。俺は、このポーションが『硫酸』なのではと思ってそのポーションを購入した。


そして、そのポーションと塩を混ぜ、加熱した。


硫酸に塩、つまり塩化ナトリウムを入れて加熱をすると……。


NaCl(塩化ナトリウム)+H2SO4(硫酸) → NaHSO4+HCl


このような化学反応式になる。ここからHCl、つまり塩化水素を取り出し、水と混ぜると、『塩酸』が作れる。


そう、塩酸を作ったのだ。


そして、ガラスの瓶の中に塩酸を入れ、中に鉄の棒を入れたものを3つ作った。


普通なら、塩酸と鉄が反応し、鉄が溶けて水素が発生するはずだが……。


「一本だけ溶けずに、別の金属に変わったってわけだ」


普通はこんなことありえない。


でも、そんな不可能を可能にするのが、俺の能力【常識破壊】だ。


「では早速、【武器鑑定】」


これはついこの前手に入れたスキルだ。


武器として使えるもののレア度や武器としてのランクを見れる。



================


名前:純銀の棒

ランク【C】

レア度【B】


================


実験は成功だ。


鉄の棒は純銀の棒にレベルアップした。


「よし、じゃあ仕上げに……」


俺は鉄の剣を取り出し……。


「お前が銀になるんだよッ!」


大量の塩酸が入った容器に剣を突っ込んだ。



数分後、俺は銀色に輝く剣を容器から取り出した。


「おっと、このままじゃダメだった。【硬化スティール】」


これは、一時的に自分の防御力を上げるスキルだけど、俺の【常識破壊】の効果で自分以外にも使えるようになる。


純銀はとても柔らかく、酸化しやすいため普通は他の金属と混ぜて使うんだけど、そんな手間をかけるのは面倒だから、こうして耐久度を上げる。


ちなみに酸化防止の方はノープランだ。


「【武器鑑定】」


早速スキルを使う。



================


名前:純銀の剣

ランク【A】

レア度【A】


================



「おお、すげぇ。ただの棒と剣でこんなに差があるのか」


1つ不思議に思うんだが、なんで材料の金属が変わるだけで武器のランクが上がるんだ?


確か『鉄の剣』のときはランクは【B】だったよな。


普通に考えれば頑丈なのは鉄の方だ。


なんで『純銀の剣』の方がランクが高いんだ?


「まあそんなことどうでもいいか」


とりあえず、いろいろな金属を創れるのは助かる。


日本での知識を活かしたものが色々作れるからな。




「よし、3匹目」


異世界に来て7日目。


今日もモンスターの討伐だ。


レベルが上がったから、今は『ダッシュダック』と呼ばれる鳥のモンスターの討伐を主にしている。


一体につき1000G、さらに肉を売れば100gにつき700Gも貰える、かなりおいしいモンスターだ。


その稼ぎのおかげでなんとか、小さい家を一軒借りることができている。


「ステータスッ!」


ステータスを開く。


=====================================


名前【ハヤマ リョウ】

職業【魔法剣士】:クソ雑魚乙ww

レベル【7】:おめでとう、ラッキー7だ

物理攻撃力【C】:46

防御力【D】:35

魔法攻撃力【C】:43

魔法抵抗力【D】:28

知力【A】:57

素早さ【C】:40

魔力【C】:45


能力 【常識破壊】効果発動:永続 ランク【SS】:不遇で残念だったねwww

   【地図】効果発動:任意 ランク【C】

   【武器鑑定Lv1】効果発動:任意 ランク【C】

   【硬化Lv1】硬化発動:任意 ランク【D】


評価:魔法剣士とかクソ雑魚かよwwマジウケルwせめてレベルが3ケタだったら

   良かったのにせっかくの特典も全然使えない能力だしマジ雑魚乙wwww


=====================================


お分かりいただけただろうか……。


そう、なぜか俺のステータスだけ『評価』されているんだ。


しかもなんかウザいんだが……。草生やしすぎだろ……。


こんな風に、少し前からステータスの表示が色々おかしくなった。


そうそう、俺の職業『魔法剣士』だが、こいつの言うとおり『クソ雑魚ワロスww』な職業らしい。


魔法と剣の両方が使える代わりに、レベルアップのときに貰えるステータスが普通の職業より少なめになるそうな。


まあ、2つの攻撃手段が使えるのに、なんのデメリットも無いわけがないか。


他にも色々おかしかったりして……。あ、『効果』が『硬化』になってるし……間違い探しみたいだな。


「てか、この評価してるやつの言うとおり俺の能力って使えないよなぁ……」


そりゃあ、錬金術みたいな不可能なことを可能にできるのはすげえよ。


でも、自分の攻撃が自分自身へのダメージになるかもしれない能力なんて、はっきり言って全く使えない。


例えば、状態異常系の攻撃をしてもし自分に当たったら、その後はモンスターたちによるリンチが待っている……。



ああ、俺の理想が……。


チートで無双してラスボス倒してハーレム作って『あ、お殿様、そこはだめですぅ♡』『へっへっへ、よいではないかよいではないか』的なこともいっっっっぱいするつもりだったのに!


「……ていうか、なんで俺なんかが異世界に転生されることになるんだ?」


普通こういうのって、もっと、人生に疲れているダメな会社員とか?


自宅警備員とか?


俺みたいな普通の高校生なんかよりそういう人たちが選ばれるもんなんじゃ……。



『それは、あなたに可能性を感じたからですよ』


「うおッ!?なんだッ!?」


どこからか、急に声が聞こえてきた。


……この声、どっかで聞いたことがあるような?


『そう、前にもお話をしましたね。私は、あなたをこの世界に送り出した女神です』


「女神様……」


『はい、女神テルといいます』


まさか、本当に神様がいるとは思わなかった。


「あの、俺に可能性を感じたって……?」


『ええ、私はあなたを天界からずっと見ていました。一見、あなたはごく普通の少年かもしれませんが、私にはピーンと来たんです!あなたには何かあると!』


「ほお」


嫌な予感がするぞ。


俺のフラグ感知センサー(勘)がビンビンに反応している。


『だからこそ私は、あなたを選んだのです!この世界のラスボス、【魔王】を倒す勇者の一人として!』


「ほおほお」


やっぱりだった。


俺が、勇者?ふざけてんのか?


『これで、あなたがこの世界に来た意味が分かりましたか?』


「まあ、大体は……」


『それでですね、あなたにお話して置かなければならないことがありまして』


そう言うと、女神様は大きく息を吸い込んで……。




『葉山涼さん、世界のために【魔王】を倒してください!』


「断る」



異世界ものの定番なセリフを言った。


しかし、俺は断った。


『……え、いや、あの』


「断るって言っているんですよ!こんな能力でどうやって魔王に勝てって言ってるんですか!クーリングオフって知ってます?物をもらってから8日以内なら返せるんですよ。俺まだこっちに来てから7日目なんで!倒してほしいならせめて能力を別のにしてください、チェンジで!」


『あの……能力の交換は流石にできないんですけど……』


「じゃあ他の人に任せてください。俺が勇者の一人なら他にもチート持ちがいるんでしょ?」


『いや、あの、送り込んだ勇者には魔王を倒すために頑張ってもらわないと行けなくて……』


「あーもうッ!聞きたくない聞きたくないッ!」


俺は耳を塞ぐ。


『お願いします!あなたが頑張ってくれないと私の立場が……!』


クッ、こいつ……直接脳内に……!


「知りませんよあなたの立場なんて!いきなり異世界に転生させられて勇者だから魔王倒してきてねだけならまだわかりますよ?」


『分かるんだ……』


「というわけなんで俺こんなゴミ溜めみたいな能力なんで無理でーす。他の人に任せて下さーい」


『お、お願いします、なんでもしますから!』



…………ん?


「今なんでもするって言ったよね?」


『え……?はい……』


「じゃあ、そうですねぇ……」


俺は大きく息を吸い込んで……。



「俺と、付き合ってください!」


『お断りします』



俺の初めての告白は、わずか0.1秒で断られた。


「えー、女神様が俺と付き合ってくれるなら考えたのになー、魔王討伐」


『だめに決まってるでしょう、そんなこと!』


「えー、じゃあどんなやつならいいんですか」


『そうですね、能力に不満があるなら、交換はできませんが新しい能力をあげることならできますよ』


「え、マジすか!」


『は、はい……』


「えっとそれじゃあ……」






「……じゃあ、こんな感じでいいですかね」


『せっかく能力をあげたんですから、魔王を倒してくれるんですよね!?』


「あー、はいはい、まあ考えておきますよ」


倒すとは言っていない。


『それじゃあ、頑張ってくださいね!』




〜数日後〜


俺は今、ギルドのクエストの看板の前にいる。


つい先日、女神様に能力をもらって強くなった俺は、能力を試すために羽振りのいいクエストを受けようとしていた。


「お、この『新ダンジョンの探索』ってやついいんじゃねえか?」



====================================


新ダンジョンの探索


この街の近くに突如現れたダンジョンの探索をしてくれる人を募集しています。

報酬は15000Gです。


====================================



「15000G!?」


今の俺が丸一日フルで働いても手に入らない金額だ。


これはいいクエストだ……!


どうせダンジョンの探索なんて準備さえすれば楽なもんだろ。



「すみません、このクエストを受けたいんですけど」


受付のお姉さんのところに行く。


「ダンジョンの探索ですね。分かりました」


よし、これでクエストを受けれる。



このとき、彼はまだ知らなかった。


このクエストが、惨劇の引き金となることを……。


密かに狙っていたこの巨乳のお姉さんが、実は既婚者だったということを……。


近所で借りたエロ本のレンタルの期限が過ぎていることを……。


そして……。


「あ、あの……」


「ん?なんですか?」


「ち、チャックが……」


「ん?」



彼の社会の窓が一日中空いていたことを……。

投稿が大幅の遅れてしまい、大変申し訳ありませんでした。皆さん、おわかりのようにこの物語はシリアスではなくギャグよりな感じなんで、惨劇が起こると言っても街が破壊されたり大量虐殺みたいなことは起きないので、ご安心ください。今月と来月はかなり忙しくなるので、次話からはしばらく投稿が未定になります。ご理解いただけると幸いです。

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