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第1話 ナイフで刺されるのって思ったより痛いんですね

俺の名前は『葉山はやま りょう』、現在高校1年生の16歳で、毎日勉強三昧の日々を送っている。趣味はアニメ鑑賞、アニメは特に異世界ものが好きだ。


今俺は、人生で何度目か分からない窮地に陥っている。


今年の3月、俺は憧れの高校に無事入学することができた。そこそこの偏差値をもつ進学校だ。最初、俺はその喜びに浸っていた。


しかし、すぐに俺は絶望を味わうことになった。


勉強に全くと言っていいほどついていけなくなってしまったんだ。テストの点も全科目で平均以下を取り続け、塾の先生や両親からかなり厳しく言われている。おかげで小遣いもかなり減額されてしまった。


このままでは駄目なことは俺にも分かる。だが、頑張っても一向に結果として現れない。日々溜まっていくストレスに俺は自分の限界を感じていた。


しかし、ストレスが溜まればそれを発散するのが当たり前。そんなわけで、日々の発散に使っているものが……。

                    


                 

「さあ、昨日録画しておいたあれを見るか」


そう、アニメ鑑賞だ。

                                     

                                     

『おのれ、魔王軍幹部ダナトスめ!神器を返せ!』


『ふん、貴様があの天才冒険者とやらか。貴様がこれを持っていると我々にとって非常に迷惑なんでなぁ。悪いがこれは没収させて頂く』


『ふざけるなッ!その神器は俺が神に頂いた大切なものだ!何が何でも取り返す!』


「お、遂にバトルシーンか」


主人公が幹部のダナトスへと向かっていく。


『喰らえッ!』


主人公は全力で剣を振り下ろす。しかし、難なく止められてしまう。


『こんなものなのか?貴様の力は』


『くッ、そんなわけが……ッ!』


『ならば、これも耐えられるな。【ヘル・ダークネス】!』


『な、何ッ!?グアアアアアアアアアッッ!』


「うわ、いきなり上級魔法だよ。こいつ容赦ねえなぁ、さすが幹部なだけあるな」


ふっとばされて、地に伏す主人公。


『こっちだって……!【アイシクル・レイン】!』


主人公がそう言うとダナトスの上空に魔法陣が現れ、大量の氷の槍がダナトスへと降り注ぐ。


『ウグオオオオオオオッッ!!』


ダナトスの体から大量の血が流れ出る。


『くッ、さすがは天才、魔法もお手の物か』


『いくぞッ、ダナトス!』  

             

戦いは更にヒートアップしていき……。

                                     

〜5分後〜

                                     

『くッ、まさかこの私が敗れるなんて……』


「お、ついに来るぞ、締めのシーン」


『勝負あったな、ダナトス』


『……最後に、貴様の名を教えろ。私は貴様の存在は知っていても、貴様の名は知らん。貴様の名を知りたい』


『いいぜ、教えてやるよ。耳かっぽじってよく聞けよ。俺の名前は……』


そう言って、彼は自分の名前を告げた。


『勇者【淫乱パンツマン】だ!』


『……ハハ、そうか、噂は本当だったんだな。馬鹿げた名前の勇者がいるというのは』


『魔王軍幹部ダナトス、お前との戦い、とても楽しかったよ』


『ああ、そうだな……。だが、次は負けんぞ……ッ!』


『ああ、また戦おうじゃないか!』


…………。

                                     

                                 

    

「あー面白かった、【淫乱パンツ無双】。今年の夏アニの覇権はこいつで決定だな」


こんな感じでほぼ毎日、撮りだめしたアニメを見ている。


「いやー、やっぱ異世界系のアニメは面白いよなあ」


異世界系のアニメは大きく分けて2種類ある。


主人公が何らかの原因で元いた世界から、全く知らない別の世界へと転移、転生してしまう【異世界転生もの】、ローファンタジーとも言うものと、主人公がもともと異世界で生まれている【ハイファンタジー】の2種類だ。


俺は、どちらも好きだが、どちらかと言えば【異世界転生もの】のほうが好みだ。主人公がたいてい日本人であることが多いので、俺的にはわかりやすい。



なぜ、俺は【異世界転生もの】にハマったのか。それは、俺がこの世界に絶望していたからだ。

                                     

この世界は、生まれたときから人生が決まっているようなものだ。


生まれてきた環境によって、人の人生は大きく変わる。


例えば、年収が少ない家庭と多い家庭で生まれた時の場合を考えると、年収の多い家庭は子供に小さい頃から様々な習い事をさせたり、塾に行かせることができる。しかし、年収が少ない家庭ではそういったものに子供を行かせる回数が少なかったりそもそも行かせない場合もある。


その結果、なんと小学生の時点で学習度合いに差が生じてしまう。生まれた環境によって同じ国でもだいぶ変わってくる。


金持ちの家に生まれてニート三昧のやつもいれば、親が貧乏で中卒で働いているやつだっている。

                                     

よく、大人が子どもたちに『あなたたちには無限の可能性があります』、『努力は必ず報われます』とか言っているが、あれはウソだ。


無限の可能性があるなら子どもの『宇宙飛行士になりたい』、『ゲーム実況者になりたい』などの夢は全部叶うだろうし、努力が報われるのなら今頃陸上100mの世界記録は1秒を切っているはずだ。


でも、実際はそうならない。ゲーム実況で成功してるのなんてほんの一握りだし、宇宙飛行士になるのなんて更に難しい。


頑張ったって報われないことなんて山ほどあるんだ。たとえ、頑張って成功してもたった一つの失敗で社会のどん底に落ちることだってある。


世界中で毎日犯罪が起こるし、戦争だって消えない。いつどこでテロが起きるか分からない。人を平気で殺すようなクズが世界中にいる。


イジメも消えないし、格差も消えない。ニュースでも有名人の不倫とか政治家の悪事とかそういったくだらない内容ばかり。


こんな世界に俺は生まれた。戦争の時代や大恐慌の時代に生まれてこなくて良かったとは思いたいが。

このまま行けば、俺は普通の大学に行って、普通のサラリーマンになって、なんの華もなく死んでいってしまう。


そして、ただの普通の人間として忘れられていく。


「いやだ、そんなの」


だからといって、成功して金持ちになりたいとかそういうわけじゃない。金があるのは悪いことじゃないが、たくさんあることが本当の幸せじゃないと思っているからだ。


つまり、俺は本当の幸せを知りたいんだ。

                                     

                                     

                                     

「ああ、今日も学校かよ。ダリィなあ」


毎日朝早くに起床し夜10時に家に帰ってきて寝る生活を続ける毎日。でも、一向に成績が伸びない。


このまま、勉強することに果たして意味があるのだろうか。


「恋愛でもすれば少しはやる気がでてくんのかなぁ」


まあ、無理だろう。こんな俺みたいなアニメしか趣味のないアニオタに寄ってくる女子はいない。


ああ、どうして俺はこんなつまらない世界に生まれてきたんだろう。


「俺も異世界転生とかしたいなーなんて」


ああ、異世界の主人公たちが羨ましい。かわいいヒロインたちに囲まれてイチャイチャして、魔法とか使って敵を倒すなんて。

           


                          

そうやって色々考えていたときだった。


「……あれ?あの人……」


そこには、フードを深くかぶりこんだ男がいた。

男の前には登校中であろう中学生の女の子が歩いている。


男はポケットから小型のナイフを取り出し……。


「おい待て待て待て!」


これはやばいんじゃないか!?あのフードの男、あの女の子を襲うつもりかよ!?


そして、その男が走り出した。


「やべえよやべえよ!」


女の子までの距離は50mほどある。走ればまだ間に合う!


「間に合えッ!」


女の子に向かって走り始める。


そして……。


「危ないッ!」


「キャッ!」


どうにか間に合い、彼女を突き飛ばす。


「うぐッ」


そして、彼女の代わりに俺がナイフに刺される。


「キャアアアアアアアアアアッッ!!」


それを見た彼女が発狂気味に叫ぶ。


「き、みは……はやく……逃げて……ッ!」


「クソがッ!」


男が逃げようとする。俺はその男の腕を掴みそれを阻止する。


「逃げ、んじゃ……ねえよ……ッ!クソ野郎……ッ!」


『おい、あれ!』


『キャアアアッッ!あの人血が出てるじゃない!』


『警察だ!警察を呼べ!』


そして……。


『逃げんな!こいつ!』


「クソッ、離せッ!」


男は近くにいた人に取り押さえられた。


「君、大丈夫!?」


「ああ……、大丈夫……です」


ぜんぜん大丈夫じゃない。痛すぎる。体が熱い、いや、寒いのか?痺れるような感覚もする。


「待っててね、今救急車を呼んでるから!」


「あ、りが……ご、ざい……ます」


……ダメだ。


意識が……遠のいて……。


                                     


                                     

『……葉山涼さん』


……なんだ?


どこからか声が……。


『この世界でのおつとめ、ご苦労様でした。見知らぬ少女をかばって死亡、なんて勇敢な最後なのでしょう』


……ああ、そうか。


俺……死んだんだ。


『そんなあなたを讃えて、あなたの夢を叶えて差し上げましょう』


俺の……夢?


『異世界転生ですよ!あなたを異世界に転生させてあげます!』


なんなんだ、これ。そんなことできるわけがないだろう。


あ、分かった。これは夢だな?死ぬ前の走馬灯ってやつだな?


幻なら何言ってもいいか。


「やれるもんなら、やってみろよ……」                   


『分かりました。了承したということですね』                


すると、突然目の前が真っ白になり……。                  

                                     



                                     

『それでは、いってらっしゃい!』                     


俺の意識は完全に途切れた。                        

こんにちは、水谷輝人みずたにあきとです。この作品を読んでいただき、ありがとうございます。よろしければ、評価やコメントをしていただけると、ありがたいです。作品を創るための活力になります。次回は明後日までには出すつもりです。この作品以外にも、【僕は『レベル1』の勇者で賢者です。】という作品を書いておりますので、よければそちらも読んでいただけると嬉しいです。

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