五限 〜 エスケーピズム
朝。
「先輩おはよー」
「1年の花田日さんじゃない。授業始まるよ、自分の教室に戻って」
「えぇー……」
「先生助かったー」
「放課後、頼みがあるからね」
「え」
昼。
「先輩ー。たまたまお弁当拾いましたけど」
「悪ぃ。要平と学食に行く事になったんだ」
「え、そうかい?」
「さっき言ってたじゃねぇか」
「まぁ、多分?」
「んで、悪ぃな」
「べ、別にいい、ですよ?」
何だか花田日を帰らせた、要平を騙して。
「で、説明&奢り〜」
……そうでもなかった。
学食。割と満員。
花田日みたいな奴が行きたくない場所だろう。
「んで、話せ」
自分の前は塩うどん。
「何これ」
向こう側にはチャーシューラーメン。
要平もう啜ってる。
「何故俺はうどんなんだ?」
「いや自分で注文しただろ」
「ボタン間違えただけだ。ラーメンくれ」
「嫌だ」
「チャーシュー譲る訳には行かないんだ!」
「俺もう食ってるけどな!」
「ほら、塩うどんあげる!」
「要らねえ!」
「奢る奴にそんな態度か!? あん!?」
「助けたのはどっちだ!?」
「事情説明するって言っただろ! いいじゃねぇか!」
「ぐぬぬっ。半分こ!」
何言ってんだ、こいつ。ラーメンだぞ?
「上等だ!」
……。
結局、それぞれの料理の4分食って、交換して、繰り返した。
周りの視線、特にアレ系の女子からのを無視して。
「んで、あの1年、花田日だっけ、つまりヤバいやつ?」
「まぁ、昨日昼間から気絶したのはあいつのせいだしな、一応」
「てか明坂とまだ仲直りしてないのか?」
「そう簡単言うなよ、避けられてるし」
「ま、あいつ、負けた男子に飽きるタイプらしいからな」
「そうか?」
「噂だよ、噂。誰も明坂を誰かと付き合ってるの見た事ないから。まっ、花田日って子と頑張れ、かな? それとも明坂倒す?」
放課後。
「あ、先輩。放課後ですよ」
「大城先生に頼まれた事ある」
「なら、手伝わせてくださいっ」
……。
「物運びよ」
「うぇぇー……」
「花田日さん、一人で十分よ」
邪魔するな、って意味で。
「て、手伝いますっ!」
「試験管、何本壊したかしら?」
「……2本?」
「5本。授業での」
うわっ、いくらだって多すぎじゃね? あいつの入学ってたった一ヶ月半経ってるじゃん。
「ごめんなさいです……」
「ほらっ、ショボってる間に行こ」
「あ、はい……」
先生も気楽だな。
その後。
「せ・ん・ぱ・い。お疲れ様です!」
どうやら復活した。逃げる。