一限 〜 混乱という
「べ、別に……好きとか、ないんだから……」
「はぁ……」
「たまたま、お弁当作り過ぎちゃっただけ。たまたま。ありがたく食べなさいよ?じゃないと返して」
学校の屋上。どうやってこうなったんだよ……。
「どうした、神羅ぁ?疲れた顔して」
「あー、なんだ。要平か」
教室に帰ったら話し掛けてくる隣の席の山田要平。まぁ一応友達とでも呼べるやつな。
「別に何でもねぇよ」
「そう言うなよ、ただなんとなく一緒の昼飯を断ったのかい」
「そう断ったらどうする?」
「意地はらないで言っていいじゃん。で、誰だった?」
「あー」
何故分かったんだ。いや、そうじゃなかったとしても、そんな事言うだろうけど。
なんだか言う気はないな、あいつに限っては。めんどそうだし。
でも要平なんかなら止めそうにない。
しゃーない。ここは折っとこう。
「明坂だよ」
「えっ、うちのクラスの明坂めぐみ!? いいな、お前〜」
「はぁ……」
どこが? って答えたかったけど、流石に同じ教室にいるし、それ無理。
「分かんねぇのかよ、明坂めぐみのすごさは!クラスの中でトップ5人だぞ?」
何の話?
「あ、可愛さだよ可愛さ」
「思考読むな」
まぁ、相当可愛いとは思うけど。でも何だったんだろうな、さっきは。
放課後。もうクラスの皆は大体部活に行った。
だるかったから、授業が終わってからも随分席に残った。
それで今教室から出た所。
「あ、神崎君。別に待ってた訳じゃないんだけど、ちょっといい?」
いや、意味わからん。てかまた出た。
「待ってたにしか見えないけど?」
いたのは、昼休みにお弁当をくれたセミロングの赤髪の女子、明坂めぐみ。
「……とにかく、今暇でしょ?まだ部活に入ってないよね?」
「入ってないけど……」
「なら連れて来なさい」
一応、連れて行く事にした。
「特に心配はしてないけど、少しはこの学校に慣れた?」
「まぁ、一応」
「そう……よ、良かったわね」
「……」
「……」
「明坂さん?」
気まずい沈黙を解こうと思って呼んだけど、一体どこへ連れるのか気になる。
「着いたわよ」
「何故ここへ?」
「コートでやるの一つしかないでしょ?」
「まぁ、確かにそうだけど……」
着いたのはテニスコート。練習中の生徒もいるし、休憩中(?)のはこっち見てる。
「なぁ、あかさ――」
隣にいたはずの明坂はいない。
どこに行ったんだよ、ここまで連れてって。
あ、そこにいた。部長っぽい雰囲気の女子生徒と話してる。
「すみません、遅れちゃって。でも」
「ああ、例の?」
「はい、お願いします」
何について話したのかは分からんが、こっちに向いてる。
嫌な予感がする……