優しいのかな?
お気に入りのバレッタも見つかって、いよいよ帰ろうと……。
それから駅までなんとなく言葉少なに歩いている2人。
なんとなく、ただなんとなく途切れる会話。でも気まずいわけじゃない。
これはひょっとして……。
15分なんてあっという間にすぎてしまう。駅に着いて切符を買いホームに向かった。
ここから私の家まで優に2時間はかかる。結構遠いな。
「それじゃあ、私はこっちなので。今日はありがとうございました」
川崎さんとは違うホームに向かおうとすると、
「送って行くよ」
「え、いえ」
いくら今日1日で少しは仲良くなったとはいえ、まだあまり知らない”友達の友達の友達”には変わりない。そんな人に送ってもらうなんて、今の私には考えられないことだ。
「遠いからいいです」
「気を使わなくていいよ」
「大丈夫です」
「送っていくよ」
「本当に平気ですから」
ここはきっぱりと断らないと。
「……送らせて」
「え?」
「送らせてもらえませんか?」
彼のきっぱりとした言葉に思わず言ってしまった。
「は、はい」
ホッとした様子で微笑みながら
「ああ良かった。断られたらどうしようかと思ってたんだ」
「でも、ここから1時間、あのターミナルまでにして下さい。家まではちょっと」
「それで充分です。もう少し話したかったので。それにいきなり家までなんて、そんなに厚かましいこと言いませんよ(笑)」
「そうですよね(笑)」
「でも、いずれは家まで送らせてほしいな」
ボソッと呟いた川崎さんの言葉に、
ドキン
「そんな時が来るんでしょうかね(笑)」
そう言ってホームの方に歩き出した私。そんなことサラッと言われても、返事に困ってしまう。
慌てて川崎さんが追いかけてきた。
「すみません。気を悪くしないで下さい」
「いえ、気を悪くなんてしていませんよ」
また沈黙が続く。ああ、手持ち無沙汰、こんなことなら1人で帰った方がよかったのかな……。
電車が到着するとのアナウンスが流れ、速度を落とした快速電車がゆっくりとホームに入ってきた。
川崎さんに促されるまま乗車し、座席に座る。
それからは普通にたわいない話を続け、1時間が経った。電車を降りて改札に向かう。私が次に乗る電車はここから歩いて5分少々のところにある大きなターミナルのとある線。そこから一度乗り換えてその後徒歩でやっと家に着く。
ターミナルの改札の前で立ち止まった2人。
「今日は本当にありがとうございました。お気に入りも見つけて下さったし、こんな所まで送っていただいて」
「いえいえ、こちらこそお話できて楽しかったです。ありがとうございました」
「じゃ、失礼します」
そう言って、会釈をし改札に向かう。
「電話」
「え?」
振り返ると真剣な顔つきの川崎さんが言葉を続けた。
「また電話してもいいですか?」
「あ、はい」
小さくうなずいた。いちいち聞いてくれるなんて、優しいのかな?
「僕は誰にでもこんなことはいいませんから」
「私も誰にでも言う訳じゃないですよ」
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