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優しさのゆくえ  作者: 藤乃 澄乃
優しさの鼓動
7/36

優しいのかな?

お気に入りのバレッタも見つかって、いよいよ帰ろうと……。

 それから駅までなんとなく言葉少なに歩いている2人。

 なんとなく、ただなんとなく途切れる会話。でも気まずいわけじゃない。

 これはひょっとして……。




 15分なんてあっという間にすぎてしまう。駅に着いて切符を買いホームに向かった。

 ここから私の家まで優に2時間はかかる。結構遠いな。

「それじゃあ、私はこっちなので。今日はありがとうございました」

 

 川崎さんとは違うホームに向かおうとすると、

「送って行くよ」

「え、いえ」

 いくら今日1日で少しは仲良くなったとはいえ、まだあまり知らない”友達の友達の友達”には変わりない。そんな人に送ってもらうなんて、今の私には考えられないことだ。


「遠いからいいです」

「気を使わなくていいよ」

「大丈夫です」

「送っていくよ」

「本当に平気ですから」

 ここはきっぱりと断らないと。


「……送らせて」

「え?」

「送らせてもらえませんか?」

 彼のきっぱりとした言葉に思わず言ってしまった。

「は、はい」


 ホッとした様子で微笑みながら

「ああ良かった。断られたらどうしようかと思ってたんだ」

「でも、ここから1時間、あのターミナルまでにして下さい。家まではちょっと」

「それで充分です。もう少し話したかったので。それにいきなり家までなんて、そんなに厚かましいこと言いませんよ(笑)」

「そうですよね(笑)」

「でも、いずれは家まで送らせてほしいな」

 ボソッと呟いた川崎さんの言葉に、 


 ドキン


「そんな時が来るんでしょうかね(笑)」

 そう言ってホームの方に歩き出した私。そんなことサラッと言われても、返事に困ってしまう。

 慌てて川崎さんが追いかけてきた。

「すみません。気を悪くしないで下さい」

「いえ、気を悪くなんてしていませんよ」


 また沈黙が続く。ああ、手持ち無沙汰、こんなことなら1人で帰った方がよかったのかな……。


 電車が到着するとのアナウンスが流れ、速度を落とした快速電車がゆっくりとホームに入ってきた。

 川崎さんに促されるまま乗車し、座席に座る。


 それからは普通にたわいない話を続け、1時間が経った。電車を降りて改札に向かう。私が次に乗る電車はここから歩いて5分少々のところにある大きなターミナルのとある線。そこから一度乗り換えてその後徒歩でやっと家に着く。


 ターミナルの改札の前で立ち止まった2人。

「今日は本当にありがとうございました。お気に入りも見つけて下さったし、こんな所まで送っていただいて」

「いえいえ、こちらこそお話できて楽しかったです。ありがとうございました」

「じゃ、失礼します」

 そう言って、会釈をし改札に向かう。


「電話」

「え?」

 振り返ると真剣な顔つきの川崎さんが言葉を続けた。

「また電話してもいいですか?」

「あ、はい」

 小さくうなずいた。いちいち聞いてくれるなんて、優しいのかな?


「僕は誰にでもこんなことはいいませんから」

「私も誰にでも言う訳じゃないですよ」



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします!

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