帰路
大学祭、何かが始まる?
キャンパスを一通り案内してもらって、ちょっと遅めの昼食にしようということになった。
今日は日曜だけど特別に学食が開いている。カフェテリア方式で、思い思いにトレーにのせてゆく。
長いテーブルにまるで集団お見合いのようにかしこまって座る8人。
あれ? 1人減ってる。
なんでも、用事があるから帰ったとか。これで4人ずつキリがいいといえばそれまでだけど、なんだかね。
私は一番左端に座った。隣にはるうちゃん、その隣にはともちゃん、その向こうは靖子。向かいにはやっぱり川崎さんが座っている。その隣は幹事の山中さんで、隣は……ええと誰だっけ、あり得ない人? で、向こう側の端が一番人気の岡田さん。どうやら、ともちゃんと靖子は岡田さん狙いみたい。るうちゃんはどうなのかな。幹事同士で山中さんとばかり喋っているけど。
「あの、山口さん」
「あ、はい」
やっぱりまだ川崎さんに話しかけられると緊張してしまう。
「どうですか、学祭楽しんでもらっていますか?」
「ええ、まあ」
って言ってもまだバラ園と学食だけだから、ちょっと微妙ではあるけれど、皆は別に学祭を楽しみに来たわけじゃなさそうだし。
「どこか覗いてみたい催しとかありましたか?」
「いえ、特には。何かお薦めはありますか?」
「うーん、そうですね。もしよかったら……」
「はーい、注目!」
幹事の山中さんに遮られた会話。
「食事も終わって話も盛り上がっているようなので、ここで皆さんに提案があります。そろそろ男女ふたり一組になって行動してみませんか?」
「その組み合わせってどうやって決めるんだよ」
と誰かさん。もっともな意見だ。
「ここはじゃんけんで。男子女子に別れてじゃんけんをし、女子で一番負けた人と男子で一番勝った人、女子で二番目に負けた人と男子で二番目に勝った人……というように順番にカップルを決めていきます。いいですか? でははじめて下さい」
「ええーっ」
誰かさんはじゃんけんと聞いて、少し大袈裟に声を出しているが内心ホッとしている様子。
結構盛り上がったじゃんけん大会。
結果は……。私は一番人気の岡田さんと、川崎さんはるうちゃんと組になった。ともちゃんと靖子は羨ましがったけど、どうしてかな、それほど嬉しくない。
その後それぞれ思い思いに残りの時間を過ごした。
午後3時、そろそろお開きということで、また全員でぞろぞろ駅に向かう。途中何気なく髪に手をやって気がついた。
バレッタがない! 後を振り返っても見当たらない。どうしよう。お気に入りだったのに、どこで落としたのだろう。
私の様子がおかしいことに気づいた川崎さんが声をかけてくれた。
お読み下さりありがとうございました。
今話で序章は終了です。
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