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優しさのゆくえ  作者: 藤乃 澄乃
優しさのゆくえ
35/36

クリスマス・イヴ

誰もが幸せそうに微笑み合う『クリスマス・イヴ』



 もうすぐ『クリスマス』。

 私達の次のデートは……クリスマス・イヴ。


 もうそれだけで待ち遠しい、クリスマス・イヴ。


『クリスマス・イヴ』


 ただそれだけで……。







 今日はクリスマス・イヴ。川崎さんとデートの約束。

 いつものように私の家から1時間の大きなターミナルのコンコースで待ち合わせ。ちょっと、いや大分気が重い。


 先週のるうちゃんとの一件があってから、いや、もしかしたらそれ以前から感じていた違和感。気にしたり、気にしないようにしてみたりと、いつももやもやしていたが昨夜はっきりと解った。

 やっと決心した。


 気持ちに変わりはないかと、何度も自分に問いかけてみたが、答えは変わらなかった。

 自分がどうしたいのかハッキリ解った。


 ついに決心した。


 今日は夕方に待ち合わせて、夕ご飯を一緒に食べる予定。その後はまた、例の幻想的なイルミネーションのお花畑に行って、ロマンチックなイヴを過ごすつもりだ。


 電車でターミナル駅に向かう間も、川崎さんと初めて出会ってからこれまでの、いろんな想い出がよみがえる。


 合コン、電話、大学祭、初めてのお出かけ、デート。初めは警戒していたけれど、優しくってもの知りな川崎さんにだんだんと惹かれていった。


『優しさの鼓動』

 

 そして初めての……。帰り道、スポットライトを浴びているかのように照らされて、目を細めた彼の優しい笑顔にまた『ドキン』として……。


 それから気持ちのすれ違い、初めてのケンカ、るうちゃんのこと、ローズクォーツ、仲直り……。


 たった2ヶ月の間に、あまりにも多くの出来事が私達に降りかかった。

 たった2ヶ月、されど2ヶ月。私の心は充分すぎるほどに。


 待ち合わせの10分前に着いた。川崎さんは先に待っていて私を見つけるなり、笑顔で手を振っている。

 私も笑顔で応えたが、少し緊張している。

 『クリスマス・イヴ』この夢のようなあったかい魔法のような季節。


 行き交う人々は皆幸せそうに見える。


「お待たせ」

「僕も今きたところだよ。それにまだ待ち合わせの10分前だよ」

「そうだね」

「じゃ、行こうか」


 そう言って私の手を取り歩き出そうとした川崎さん。


 私はそこにとどまったまま、歩こうとしなかった。どこかに行ってからでもいいのだろうが、どうせなら少しでも早いほうがいいと思ったからだ。


「どうしたの?」

そう問いかける川崎さんに、バッグから小さな包みを取り出して手渡した。

「これ」

「なに、どうしたの?」


 彼の困惑した顔になかなか言いだせない。

 私の気持ち。


「どういうこと?」

「これ、私の気持ちです」


 一瞬、時間ときが止まったように感じた。

 周りの雑踏ももはや耳には入らない。そこは2人だけの空間となったのだ。



お読み下さりありがとうございました。


次話「優しさのゆくえ」で完結です。

どうぞよろしくお願いします。

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