魔法の空間
『クリスマス』それは魔法のような。
『クリスマス』ただそれだけで、落ち込む気分を盛り上げてくれるし、もやもやもどこかに連れて行ってくれる。
『クリスマス』ただそれだけで……。
今日は行き先をあれこれ迷う必要はなかった。映画を観に行くと決めて、もうチケットを購入していたからだ。
今日観た映画は、洋画のラブストーリー。クリスマスの時期にピッタリの映画だ。
内容は、訳あって離ればなれになっていた2人が偶然再会して、困難にもめげずにお互いを信じ合って、クリスマス・イヴに雪の降る中、2人はかたく抱きしめ合う。ラスト上空のカメラが、2人のアップからだんだんとひいていき、街全体が映し出され2人も人混みに消えていく……というもの。
かいつまんで言うとこんな感じだが、実際は感動的なラブストーリーで、鑑賞後も涙が止まらなかった。
まあ、映画だから感動的に終わったけど、実際はそんなに上手くいくはずはない、と解っていても泣けて泣けて仕方がなかった。
そんな私を見て川崎さんは、微笑みながら右手で私の頭をポンとして、「なきむしだな」って。
泣いている顔を見られるのは恥ずかしい。ハンカチで顔を隠して俯いた。
それからちょっとだけ歩き回って彼の『優しさ』を体感して、やっとの思いで夕食にありつけた。
今日のメニューはハンバーグ。私はハンバーグの上に大葉と大根おろしがたっぷりのっている、和風ハンバーグにした。ポン酢でサッパリといただく。あとサラダにスープ。もうこれだけでおなかいっぱいだ。
しかもこのハンバーグ、熱々の鉄板の上にのせられて運ばれてきたので、しばらくの間はその『ジュージュー』という音にはしゃいでしまった。
おなかもふくれて、少し散歩をしてから帰ることにした。
普段はいろんなお花が色とりどりに咲き誇っている公園も、この時期はイルミネーションのお花が咲き誇っている。
幻想的な光りの競演は、目も心も和ませてくれてうっとりする。
好きな人とこうやってこのおとぎの国を歩いているなんて”幸せなことなんだなぁ”って思える。でも、この空間がそういう想いにさせる魔法の空間なんだとしたら、……。いつかは解けるのだろうか。
その夢のような余韻に浸ったまま帰路に着いた。
いつものように最寄りの駅まで川崎さんが送ってくれて、ベンチに座り折り返しの電車の発車までおしゃべりする。楽しいひととき。でも切ないひととき。
発車のベルが鳴り、次のデートまでの暫しの別れを惜しみつつ、小さくなる電車を見送った。
切ないひととき。そう、今までは。
もうすぐ『クリスマス』。
私達の次のデートは……クリスマス・イヴ。
もうそれだけで待ち遠しい、クリスマス・イヴ。
『クリスマス・イヴ』
ただそれだけで……。
お読み下さりありがとうございました。
次話「クリスマス・イヴ」もよろしくお願いします。




