表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
優しさのゆくえ  作者: 藤乃 澄乃
優しさのゆくえ
34/36

魔法の空間

『クリスマス』それは魔法のような。


 『クリスマス』ただそれだけで、落ち込む気分を盛り上げてくれるし、もやもやもどこかに連れて行ってくれる。


 『クリスマス』ただそれだけで……。





 今日は行き先をあれこれ迷う必要はなかった。映画を観に行くと決めて、もうチケットを購入していたからだ。

 今日観た映画は、洋画のラブストーリー。クリスマスの時期にピッタリの映画だ。


 内容は、訳あって離ればなれになっていた2人が偶然再会して、困難にもめげずにお互いを信じ合って、クリスマス・イヴに雪の降る中、2人はかたく抱きしめ合う。ラスト上空のカメラが、2人のアップからだんだんとひいていき、街全体が映し出され2人も人混みに消えていく……というもの。


 かいつまんで言うとこんな感じだが、実際は感動的なラブストーリーで、鑑賞後も涙が止まらなかった。

 まあ、映画だから感動的に終わったけど、実際はそんなに上手くいくはずはない、と解っていても泣けて泣けて仕方がなかった。


 そんな私を見て川崎さんは、微笑みながら右手で私の頭をポンとして、「なきむしだな」って。


 泣いている顔を見られるのは恥ずかしい。ハンカチで顔を隠して俯いた。






 それからちょっとだけ歩き回って彼の『優しさ』を体感して、やっとの思いで夕食にありつけた。


 今日のメニューはハンバーグ。私はハンバーグの上に大葉と大根おろしがたっぷりのっている、和風ハンバーグにした。ポン酢でサッパリといただく。あとサラダにスープ。もうこれだけでおなかいっぱいだ。


 しかもこのハンバーグ、熱々の鉄板の上にのせられて運ばれてきたので、しばらくの間はその『ジュージュー』という音にはしゃいでしまった。


 おなかもふくれて、少し散歩をしてから帰ることにした。


 普段はいろんなお花が色とりどりに咲き誇っている公園も、この時期はイルミネーションのお花が咲き誇っている。


 幻想的な光りの競演は、目も心も和ませてくれてうっとりする。


 好きな人とこうやってこのおとぎの国を歩いているなんて”幸せなことなんだなぁ”って思える。でも、この空間がそういう想いにさせる魔法の空間なんだとしたら、……。いつかは解けるのだろうか。




 その夢のような余韻に浸ったまま帰路に着いた。

 いつものように最寄りの駅まで川崎さんが送ってくれて、ベンチに座り折り返しの電車の発車までおしゃべりする。楽しいひととき。でも切ないひととき。


 発車のベルが鳴り、次のデートまでの暫しの別れを惜しみつつ、小さくなる電車を見送った。

 切ないひととき。そう、今までは。




 もうすぐ『クリスマス』。

 私達の次のデートは……クリスマス・イヴ。


 もうそれだけで待ち遠しい、クリスマス・イヴ。


『クリスマス・イヴ』


 ただそれだけで……。



お読み下さりありがとうございました。


次話「クリスマス・イヴ」もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ