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優しさのゆくえ  作者: 藤乃 澄乃
優しさのゆくえ
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ふと思うこと

今日は大学へ行くのがなんだか憂鬱。

るうちゃんとどんな顔をして会えばいいのだろう。

 いつもなら学校に行くのはもっと楽しい気分なのに、今日は朝から憂鬱で仕方がない。

 昨日ひとり残してきたるうちゃんのことが気がかりだからだ。


 あんなことがあって、私も正直るうちゃんのしたことにはびっくりしたが、かといってあの場にひとり残してきてしまったことには少し罪悪感もある。

 もし私がるうちゃんの立場だったらどう感じただろう。昨日とはまた違ったもやもやがわき上がってくる。


 通学にかかる1時間30分の間、ずっとそのことばかり考えていた。

 駅から学校までの20分間は、いつもよりゆっくりと歩いた。学校に少しでも遅く着きたかったからだ。


 とうとう学校に到着してしまった。ここで友人とは別れ自分の教室に入る。


「おはよう」

 入室と同時に全体を見渡し、るうちゃんの姿を探した。


「あ」

 るうちゃんと目が合った。

 無視するわけにはいかない。嫌だけどちゃんと話をしなければ。

 こんなことと言ってはなんだけど、こんなことで大事な友達を失うのはある意味、彼と別れるより辛い。


 お互い何か行き違いがあるのかもしれないし、一度ちゃんと話をしなければ。このまま知らん顔をしていると、あとで必ず後悔すると私は強く感じた。


 そう思ってるうちゃんの方に歩き出すと、彼女の方が私のところまで駆けてきた。


「桜花、昨日はごめんね」

「え?」

 少し拍子抜けした声を出してしまった。

 まさかるうちゃんからそのような言葉が聞けるとは、思ってもみなかったからだ。


 いつの間にか周りに集まっていた友人達。

「ホントにごめんね。悪気はなかったんだけど、桜花から川崎さんと付き合ってるって聞いた時、カァーってなってしまって、なんか想いが先走っちゃって周りを見渡す余裕がなくなっていたの」

「るうちゃん」

「今朝皆にも言われてよく考えたら私、とんでもないことしてたなって、今更ながら気づいて……。ごめんね、いやな思いさせて」


 あまりに素直なるうちゃんの言葉に少し驚いたが、まだるうちゃんと友達でいられるのかと思うと、そのことが嬉しくてさっきまでのもやもやが一気に晴れた。


「ううん、大丈夫。私の方こそ、るうちゃんをひとり残して帰っちゃってごめんね」

「ホントだよ~、おなかぺこぺこだったんだからぁ。おひとり様できないしぃ」

 またいつものるうちゃんだ。よかった。


「これからも仲良くしてね」

「うん、これからもよろしくね」



 ああよかった。私は見誤ってはいなかった、やっぱりるうちゃんは嫌な子じゃなかった。ホッとした。


 人を好きになるってことは、そういうことなんだな。自分のことばっかりで、周りが見えなくなっちゃうんだ。

 私はどうだろう。

 ちゃんと見渡せているだろうか。見誤ってはいないだろうか。


 そんなことを、ふと思った。

お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします。

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