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優しさのゆくえ  作者: 藤乃 澄乃
優しさのゆくえ
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揺れ動く心

一度気になると頭から離れなくなってしまう。

自分でもどうしたらいいのか……。

 どこに行きたいか何度でも聞いてくれる川崎さん。お店が決まるまで、行き先が決まるまで優しく聞いてくれる彼。

 私はどこでもいいから、そう答える。

 そして延々と歩き回る。

 

 そんなことの繰り返し。3才年上の彼。お店くらい決めてほしい。

 大事なのは、どこに行くかじゃなくて、誰と行くかなんだから。


 これって本当に優しいのだろうか。

 私の好きな優しさってなんだろう。



 そんなことを考え出したら、他のことまで気になってきた。

 私の好きなとこは、って聞いたら「全部!」って。

 それって一瞬嬉しかったけど、全部ってなに? ひとつくらい具体的に言えないのだろうか、それとも特にここが好きっていうところがないのだろうか。


 それに、本当の私のこととか気持ちとか何も知らないくせに、私の全部が好きだなんて……。そんなに簡単に言えるのだろうか。言い切ってしまっていいものなのだろうか。

 嫌いなところもあるかもしれないのに……適当な人?



 ああ、何考えてるんだろう。こんなに好きな川崎さんのことを嫌な風に勘ぐってしまっている自分に、ちょっと嫌気がさした。きっとおなかがすいてるからだわ、歩き回って疲れてきたから頭が回らなくなってヘンな風に考えちゃったんだ。

 そうだ、そうよ。絶対そう! ……そうに決まってる。


 ちょっとした罪悪感。こんなに優しい川崎さんのことを……ああ、いやだいやだいやだ!


 思わず繋いだ手をぎゅっと握りしめた。


「どうしたの?」

「え、あ、ううん。ぎゅっとしたかっただけ」

「そっか」

 微笑む川崎さんに微笑み返した。


 結局30分程歩き回って、以前行ったアフタヌーン・ティーセットの美味しいお店に入った。

 

 またストロベリーティーを頼んでみようか。




 

 

 

 今日はあまりにいろんなことがありすぎた。早めに切り上げてもう帰ろう。

 ちょっと頭の中がゴチャゴチャになってきたから、もう一度整理したかったからだ。

 

 いつものように最寄りの駅まで送ってもらって、折り返しの電車を待ち……見送った。


 1人残されたホームで、左手に光る指輪を見つめてみる。あの公園でのことが思い出されてドキッとした。


「おお、それがプレゼントの指輪か!」

 不意に声をかけられて、またドキッとした。


「あれ、圭太!」

「見せてみ、見せてみ」

 そう言って指輪を覗き込む。

「よかったな」

「うん。あ、圭太、デートは?」

「今帰り」

「ちょうどよかった。ちょっと聞きたいことがあったから、電話しようと思ってたんだ」

「聞きたいこと? ん、じゃお茶でも行くか」

「うん、でも今日は割り勘でね!」


「どっか行きたい店とかある?」

「んー、特にないけど。落ち着いて話せる場所ならどこでも」

「オーケー、じゃ、この間の店でいいよな。お前気に入ってたし」

「うん。あのお店大好き!」


 すんなりと行き先も決まって歩き出した。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします。

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