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優しさのゆくえ  作者: 藤乃 澄乃
優しさのゆくえ
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優しさの違い

おなかもすいたから、と歩き出したのはいいけれど。

川崎さんは優しい。その優しさってもしかしたら……。

 そういえば、パンケーキがおあずけになったからちょっとおなかがすいてきたな。


 何か食べに行こうと川崎さんが差しだした右手に、淡いピンクで彩られた左手を重ね歩き出した。


 ふふ、さっきまでのもやもやがウソみたい。あんなに不安だったのに、今はこんなに嬉しいなんて。

 ちょっとした幸福感さえある。

 人の心って、複雑なようで案外そうでもないのかな? それとも私だけなのかな。


 るうちゃんが一緒にパンケーキのお店に行こうって言い出したときは、どうなることかと思ったけれど、結局は川崎さんがキッパリと言ってくれたおかげで仲直りも出来た。


 これってある意味るうちゃんのおかげ? 

 ああ、るうちゃん今頃どうしてるだろう。思い出したらちょっと気になってきた。なんか悪いことしたな。落ち込んでなきゃいいけど。明日の学校が少し憂鬱だ。



 川崎さんはいつも通り、相変わらず優しい。今日もにこにこしていつものように私に聞いてくれる。

「どこ行こっか」

「どこでもいいですよ」

「そっか」

 3才年上の彼。行き先くらい決めてほしいけど。でもいつも聞いてくれる。優しいから私を優先してくれているのだ。優しいから気を使ってくれているのかな。それとも……。




 それにしても圭太は川崎さんと一体どんな話をしたのだろうか。ちょっと気になるな。

 あとで圭太に電話してみよう。川崎さんにはちょっと聞きにくいから。

 どうしてだろう、まだどこかで遠慮している私がいる。圭太には何でも話せるのに、川崎さんにはそうでもない。その差ってなんだろう。優しさの違い? 付き合いの長さ、それとも親密さだろうか。


 私達はもう恋人同士って言ってもいいのかな。

 ”友達の友達の友達”から始まって、付き合って。

 好きだけど、どこか遠慮してしまう。まだ心の底を出せないし、川崎さんの心の底も解らない。

 好きだからこそ遠慮しているのだろうか。


 本当の恋人同士ってどんな感じなのだろう。皆はお互いの心の底が解っているのだろうか。私達の付き合いが短いから気を使ってしまうのだろうか。付き合いの長さに比例して変わってゆくものなのかな?


いや、それは違うと思う。いくら付き合いが長くたって心の底から話せる相手でないと、いつまで経っても気を使い合う関係のままだ。

 反対に、付き合いが短くたって気が合って、お互いに何でも言い合える、心の底から話せる相手とだったら解り合えるんじゃないかな。





「なにか食べたいものある?」

「特にない」

「行きたいお店は?」

「別に」


 さっきからそんな会話の繰り返し。3才年上の彼。お店くらい決めてほしい。

 大事なのは、どこに行くかじゃなくて、誰と行くかなんだから。


 でもいつも聞いてくれる。優しいから私を優先してくれているのだ。

「なにが食べたい?」

「なんでもいい」

「どこ行く?」

「どこでも」


 そして延々と歩き回る。


 これって本当に優しいのだろうか。


 私の好きな優しさってなんだろう。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします。

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