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優しさのゆくえ  作者: 藤乃 澄乃
優しさのゆくえ 『そして……』
26/36

素直になれない

やっぱり川崎さんのことが好きなのかな。

仲直り……できるといいな。

 ぎゅっと抱きしめて優しく頭をなでてくれる川崎さんのこと……。

 やっぱり好き! なのかな。


 また新しいストロベリーティーを入れてみようか。


 疑心暗鬼になっていた自分が少し恥ずかしくなった。もっと川崎さんのことを信じればよかった。

 1人で勝手に思い込んで……。

 そう思うと余計に涙が溢れてきた。


「ごめ……ん」

 もうそれ以上は言葉にならなかった。

 私は川崎さんの腕をすり抜けて、後を向いた。自分が情けなくなったからだ。


「仲直りしてくれる?」

 覗き込んで聞く川崎さんに、答えはもう決まっているのについ言ってしまう。

「してほしい?」

「決まってるだろ」

「ふーん、そうなんだ」

 今度は悪戯っぽく言ってみる。


「桜花はどうなの?」

「どうって?」

「仲直りしたくないの?」

「……」

 負けた……。仲直りしたいに決まってる。


「じゃ、仲直り!」

 そう言うと川崎さんは私の手を取って、自分の上衣のポケットから出した四角い小さな包みをのせた。

「これは?」

「開けてみて」


 言われるままに包みを開ける。中にはふた付きの小さな箱が……。


 ……!


 私が驚いて川崎さんの顔を見ると、川崎さんは優しく微笑んで頷いた。

 恐る恐る開けた箱の中にはやはり指輪が入っていた。


 嬉しい……けど、どうしたらいいのだろう。

 彼から指輪をもらうのは女子の憧れではあるけれど、私は初めてだし、どういうつもりで受け取ればいいのだろうか。

 さっき『愛してる』なんて言われたし、川崎さんはどういうつもりでこの指輪を渡したのだろうか。


「あ、あの、これ……」

「気に入らなかった?」

「いえ、そういうんじゃ」

「だったら、はめてみて」

「でも、まだ付き合ってそんなに経ってないのに。それに川崎さん、こんな高そうな物いただけません」

「付き合った時間なんて関係ないよ。会えない時もその指輪を見て僕を思い出してほしいんだ。そんなに高い物じゃないけど、一生懸命選んだんだから」

「え、でも」

「僕のバイト代で買えるくらいのものだから、気にしないで」


 私のために一生懸命選んでくれたんだ。それだけで嬉しい。自分の時間を割いて一生懸命……選んでくれた。私を大事に想ってくれているっていうことだから。


 嬉しいけど……でもやっぱり、指輪ってちょっと重い気がする。どうしよう。


「少し早めのクリスマスプレゼントってことでどう?」

「クリスマスプレゼント?」

「うん、深い意味じゃなくて。それでももらってくれないの?」


 ああ、そういえばもうすぐクリスマス。街中がイルミネーションに彩られ、クリスマスソングに溢れている。少し早めのクリスマスプレゼント。深い意味じゃないのなら、もらってもいいかな。


「はい、じゃあ遠慮なく」

「ああ、よかった。受け取ってくれないのかと思ったよ」

「でも、もらうだけじゃいやなので、今度のデートの時に何かお返ししますね」

「そんなこと、気にしなくていいよ。僕が渡したかっただけだから」

「いえ、もらうだけじゃいやなので」


 って言いながら、本当はプレゼントを選ぶのって楽しい。その人のことを考えながら選ぶ。これが似合うかな、こういうの好きかな、喜んでくれるかな……なんて考えながら選ぶ時間って、渡すときより好きかもしれない。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします。

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