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優しさのゆくえ  作者: 藤乃 澄乃
優しさのゆくえ 『そして……』
25/36

もう一度

るうちゃんを1人残して歩き出した2人。

仲直りはできるの……。

 ああ、これでるうちゃんとの友達関係は完全になくなってしまうな。

 そう思いながらるうちゃんをその場に残し、私は川崎さんと歩き出した。


 お互い何も言わないまま、しばらく川崎さんについて行くと、以前2人で来た場所に到着した。

 初めて2人で待ち合わせて、アフタヌーン・ティーセットをいただいたあと、なあんとなく立ち寄った場所。都会のオアシスと呼ぶに相応しいあの大きな公園だ。

 

 私の心の甘酸っぱいストロベリーティーが、甘いイチゴミルクティーになりそうな予感がしていたけど、最近は、茶葉を煎じすぎて出がらしになった紅茶のような気持ちになっていた自分に気づく。


 夕暮れの公園、川崎さんに正式な付き合いを申し込まれたあの場所。思い出の場所だ。

 その時の記憶が、その時の気持ちがよみがえってきて、固結かたむすびの心がほどけていくのが自分でも解る。


 ベンチの前まで行って、クルッと振り向いて川崎さんに言われた言葉が、また以前のように私の鼓動を大きくした。


桜花さくら、愛してる」

「えっ」

「好きという言葉だけじゃもう足りないくらいに、君のことを想っているんだ」

「……」

 

 愛しているなんて初めて言われたから、正直戸惑った。そんな軽々しく言える言葉なのだろうか。

『愛』がなんなのかもまだ解らない。『好き』とはまた違うの?

 私が彼を想う気持ちとはまた違うのだろうか。

『好き』という言葉だけじゃ足りないって、どういうことだろう。


「愛なんてまだ解らない」

 私の言葉に彼は少し困った表情を浮かべた。


「今日のことは本当に悪かった」

「それ、謝っているんですか?」

「ああ」

「悪かったっていうのは、その事実を述べているだけで、謝罪の言葉とは違う気がしますけど」


 ああ、またつい意地悪ないい方をしてしまう。でも、ホントにそうよね。『悪かった』なんて言われても、『おなかがすいた』とか、『買い物に行った』とかと同じ。ただそこにある出来事を言葉にしているのとかわりはない。

 それに、『本当に悪かった』って何が? 天気が? 具合が? 

 人に謝罪がしたいのなら、ものの言い方を考えないとかえってこじれてしまうのに。その辺は川崎さんがどのような人かっていうところがうかがえる材料になってしまうのだから。


 知り合って2ヶ月、付き合いだしてまだ1ヶ月と少し。

 私が期待していたような人だといいのだけれど。


「そうだね。ごめん。今日の僕がとった行動は反省している。自分では気を利かせたつもりだったんだけど、結果的に桜花に嫌な思いをさせてしまったし、るうちゃんにも悪いことをしたと思ってる」

「そうですね」

「ごめん。ごめんなさい。心から謝るよ」

 そう言って深く頭を下げる川崎さんを見て、心からの謝罪だと感じた。自分の見る目に間違いはなかった、いい人でよかったと安心したら、今まで我慢していた気持ちが瞳から一気に溢れ出てきた。


「ああ、泣かないで。それほど桜花を不安にさせていたんだな。本当にごめんね」

 私は川崎さんの胸の中に飛びこんだ。


 ぎゅっと抱きしめて優しく頭をなでてくれる川崎さんのこと……。


 やっぱり好き! ……なのかな。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします。

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