偶然か必然か
こんなところで圭太に会うなんて。
しかも川崎さんと一体何を話すというの?
残された女子3人は、当然気まずいムードを漂わせながら2人の様子を見守っていた。
何か話さなきゃ。
そう思うけど川崎さんと圭太のことが気になって、世間話などしている場合ではない。どうやら他の2人も私と同意見のようだ。
そうして暫く2人の様子を見守ることにした。
ここから話し声は聞こえないが、2人の様子は見て取れる。圭太が一方的に大きな身振り手振りで何かを言っている。川崎さんは時々頷きながら、圭太の話に耳を傾けている。圭太は一通り話し終えたのか、今度は川崎さんがゆっくりと落ち着いた感じで話し始めたようだ。
そうやって少しの間会話を続けお互いに納得したのか、2人は私達の所に戻ってきた。
「桜花、もうなんも心配することないからな。ねえ、川崎さん」
圭太は一体どんな話をしたんだろう。2人ともにこやかな表情だ。
「ああ。桜花、るうちゃん、悪いけど今日はパンケーキはおあずけだ」
「ええ~、川崎さんどうしたんですかぁ? 私、楽しみにしてたのに。ねえ、桜花」
そう言われても私はちっとも楽しみにはしていなかったけど。
私の返事をまたずに川崎さんは続けた。
「それじゃ、圭太くん、失礼するね」
「はい、失礼します。またな、桜花。がんばれよ」
そう言って笑う圭太。なんだか頼もしく思えた。持つべきは幼馴染み! かな。
「うん、またね」
圭太と彼女に軽く会釈をして、私達3人は歩き出した。
暫く沈黙の後、川崎さんが不意に立ち止まった。
「るうちゃん、悪いけど、今日のところはここで解散ということにしてもらえないかな?」
川崎さんの言葉にるうちゃんの表情がみるみる変わる。
「ええ~、そんなぁ。どうしたんですかぁ? 急に。今日は3人でお出かけって言ったじゃないですか」
「うん、悪いけど」
「あ! さっきの桜花の幼馴染みって人に何か言われたんですか?」
上目づかいで探るようなるうちゃん。
「そうじゃないよ。僕もずっと思ってたことなんだ。今日は桜花と大切な話があったんだけど、偶然るうちゃんに出会って一緒に出かけることになってしまって……。君は桜花の大事な友達だと思ってたから、ちょっと断りづらかったんだ」
るうちゃんの表情は曇って、ぷうとほっぺを膨らませている。
「ひどーいー」
「ごめんね、僕がはじめにちゃんと言えばよかったんだけど」
「桜花も私が邪魔なの? 友達なのに?」
そう言われると返事に困ってしまう。ちょっぴり可哀相な気さえしてきた。
自分でもつくづく思う。私ってお人好しなんだって。
「私は別に……」
「だめだよ桜花。君にはなくても僕には話があるんだ。だからるうちゃん、ごめんね」
そう言うと、川崎さんは私の手を引っ張って促した。
ああ、これでるうちゃんとの友達関係は完全になくなってしまうな。
そう思いながらるうちゃんをその場に残し、私は川崎さんと歩き出した。
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