メールか電話か
久々に偶然会った圭太の言葉が、ちょっと嬉しかった。
帰り際に真面目な面持ちで圭太に言われた言葉が、頭の中で繰り返されている。
『お前さぁ、よく見ると結構可愛いよな。今まで気づかなかったけど』
『はぁ? それ褒めてんの?』
『まあな』
圭太と別れた帰り道、川崎さんに電話をしようと思った。ちゃんとあやまろう、そしてもう一度話をしようと思ったからだ。バッグからスマホを取り出すと、川崎さんからメールが2件届いていた。
『桜花、さっきはごめん。僕の言葉が足りなかった。桜花を不安な気持ちにさせてしまったことを謝るよ。本当に女子の幹事の関口さんのことはあまり記憶にないし、これからも連絡を取り合うことはないから、心配しないでほしい。さっき桜花が僕の腕を振りほどいて駆けて行った時、本当は追いかけて行きたかった。でもその後でまた拒否をされるのが怖くて、追いかけられなかった。
今思えばそれでも行くべきだったと思う。』
『何度もごめん。僕は本当に桜花のことが好きなんだ。それだけは伝えたくて。
桜花がもしまだ僕のことを好きでいてくれるのなら、もう一度会ってほしい。返事待ってるよ』
その言葉、直接聞きたかった。
活字じゃ伝わらないんだから。ちゃんと目を見て言ってほしかった。
男の人ってそこのところの詰めが甘いっていうか、考えが足りないって思う。
そりゃあメールの方が謝るにしてもなんにしても、楽に決まってる。言葉のやり取りをしなくてすむから、都合の良いときにサッと送れるし。
でもメールってなんか一方的っていうか、相手がどう思おうが、自分の言いたいことだけを書き込んでるっていうか……。
時間差がありすぎる。
このメールを見るまでは電話をかけようと思っていたけど、今はなんとなくその気も失せてしまった。もちろん、川崎さんがメールをくれたことは嬉しい。
でも、でもね……。
そうじゃないんだ。そういうのじゃないんだよな。自分でも上手く説明できないけど、そういうのじゃない。
メールでなら、後からなんとでも言える。打ち間違えたら消してまた打ち直せばいいし。だけど、人の心って間違えても打ち直しはできないんだから。そう思ったのならその場で、後でそう思ったのならその時すぐに電話してほしい。
……なんていうのは、私のワガママなのだろうか。
そんなことをいろいろと考えながら、私は敢えてメールで返信した。
お読み下さりありがとうございました。
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