表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
優しさのゆくえ  作者: 藤乃 澄乃
優しさのゆくえ 『そして……』
20/36

メールか電話か

久々に偶然会った圭太の言葉が、ちょっと嬉しかった。

 帰り際に真面目な面持ちで圭太に言われた言葉が、頭の中で繰り返されている。

『お前さぁ、よく見ると結構可愛いよな。今まで気づかなかったけど』

『はぁ? それ褒めてんの?』

『まあな』



 

 圭太と別れた帰り道、川崎さんに電話をしようと思った。ちゃんとあやまろう、そしてもう一度話をしようと思ったからだ。バッグからスマホを取り出すと、川崎さんからメールが2件届いていた。


 『桜花さくら、さっきはごめん。僕の言葉が足りなかった。桜花を不安な気持ちにさせてしまったことを謝るよ。本当に女子の幹事の関口さんのことはあまり記憶にないし、これからも連絡を取り合うことはないから、心配しないでほしい。さっき桜花が僕の腕を振りほどいて駆けて行った時、本当は追いかけて行きたかった。でもその後でまた拒否をされるのが怖くて、追いかけられなかった。

 今思えばそれでも行くべきだったと思う。』


『何度もごめん。僕は本当に桜花のことが好きなんだ。それだけは伝えたくて。

桜花がもしまだ僕のことを好きでいてくれるのなら、もう一度会ってほしい。返事待ってるよ』




 その言葉、直接聞きたかった。

 活字じゃ伝わらないんだから。ちゃんと目を見て言ってほしかった。

 男の人ってそこのところの詰めが甘いっていうか、考えが足りないって思う。


 そりゃあメールの方が謝るにしてもなんにしても、楽に決まってる。言葉のやり取りをしなくてすむから、都合の良いときにサッと送れるし。

 でもメールってなんか一方的っていうか、相手がどう思おうが、自分の言いたいことだけを書き込んでるっていうか……。

 

 時間差がありすぎる。

 

 このメールを見るまでは電話をかけようと思っていたけど、今はなんとなくその気も失せてしまった。もちろん、川崎さんがメールをくれたことは嬉しい。

 でも、でもね……。

 そうじゃないんだ。そういうのじゃないんだよな。自分でも上手く説明できないけど、そういうのじゃない。


 メールでなら、後からなんとでも言える。打ち間違えたら消してまた打ち直せばいいし。だけど、人の心って間違えても打ち直しはできないんだから。そう思ったのならその場で、後でそう思ったのならその時すぐに電話してほしい。

 ……なんていうのは、私のワガママなのだろうか。


 そんなことをいろいろと考えながら、私は敢えてメールで返信した。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ