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優しさのゆくえ  作者: 藤乃 澄乃
優しさのゆくえ 『そして……』
19/36

アッサムティー

以前「ストロベリーティー」というお話がありましたが、

関連はあるのでしょうか、ないのでしょうか……。

2人の男性の対比に注目していただければ、と思います。


 圭太が連れてきてくれたお店のあまりの可愛さに、妙にハイテンションになっている私に冷めたひと言。


「はいはい、解ったから早く座れば?」

 促されてようやく席についた。


 向かい合わせに座ってまじまじと圭太の顔を見ると、今まで特に意識してはいなかったけど、なかなかのイケメンである。

「ん、なんだ?」

「圭太ってさ、じっくり見ると結構カッコイイんだね。今まで気がつかなかった」

「はあ? なんだそれ。褒めてんのか?」

「かもね」


 そんな冗談なんかを言いながら、ストロベリーショートケーキとアッサムティーを注文して待つこと十数分。その間も話は尽きることなく、楽しいひとときを過ごせた。

 アッサムティーにミルクを入れて、ストロベリーショートケーキをほおばる。至福の時間だ。思わず笑みがこぼれる。

 そんな時、圭太が少しトーンを落とした声で聞いてきた。


「お前、なんかあったのか?」

 その言葉にケーキを口に運ぼうとしていた手が止まる。なんだか見透かされるような彼の目に、努めて明るく振る舞った。

「私に? なんもあるわけないじゃん」

「ムリすんなよ」

「ムリなんかしてないよ」

 流石は幼馴染みだ。私のことはお見通しといったところだろうか。それなら相談してみようか。……いやいやそれはできない。いくらなんでも彼とケンカして落ち込んでる……なんて言えない。小馬鹿にされて、はいおしまいっていうのが関の山だ。


「そうやってずっとうじうじ悩んでんだろ。誰かに話した方が気が楽になるぜ」

 やっぱりお見通しだ。年下のくせに、そういうところは鋭い。

「遠慮すんなよ。言ってみ」

 ことの次第を話すことにした。

「実はね……」


 フォークを置いて、アッサムティーを一口飲んで話し始めた。

 圭太は時々相づちを打ちながら、ちゃんと最後まで聞いてくれた。


「なるほどな」

 腕組みをして、小さく息をはいて圭太は続けた。


「それはお前が悪いな」

「えっ」

 いつもながらにハッキリとものを言う。少しくらいオブラートに包めないものか、と思いながらも『やっぱりそうだよな』という思いもある。

「まず、川崎さんだっけ? そいつを信用でききれていないお前が悪い。まあ、付き合いが浅いっていうのもあるんだろうがな。まだ相手の本質を解りきってないから、しゃーねぇといえばそうなんだけどな」

「うん」

「次に、小さいことを気にしすぎてる。それは今に始まったことじゃあないけど」

「うん」

「まあ、気持ちは解らないでもないがな。それから……」

「え、まだあるの?」


 相変わらず圭太の鋭い指摘に言い返す言葉もない。圭太の話すひと言ひと言が的を射ている。

「最後に、お前の彼も悪いよな。お前を不安な気持ちにさせちまった、ってところがな」


 本当にどっちが年上か解りゃしない。圭太は本当に年下なのか? と疑いたくなるような時がたまにある。


「そいつとこれからも付き合っていきたいんなら、ちゃんと話しろよ。途中でその場を離れて話をやめちまうなんて最低だ」

 最後に圭太はそう締めくくった。

 言い返す言葉もない。彼は本当に高校生なのだろうか? と疑いたくなるようなしっかりした一面。以前にも増して頼りがいを感じる。

「そうだね。ありがとう」


 それからすっかり冷めた紅茶を、ストロベリーショートケーキとともにいただいた。ちょっぴり苦いアッサムティーだった。



 帰り際に真面目な面持ちで圭太に言われた言葉が、頭の中で繰り返されている。

『お前さぁ、よく見ると結構可愛いよな。今まで気づかなかったけど』

『はぁ? それ褒めてんの?』

『まあな』



お読み下さりありがとうございました。


次話は「メールか電話か」です。

よろしくお願いします。

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