アッサムティー
以前「ストロベリーティー」というお話がありましたが、
関連はあるのでしょうか、ないのでしょうか……。
2人の男性の対比に注目していただければ、と思います。
圭太が連れてきてくれたお店のあまりの可愛さに、妙にハイテンションになっている私に冷めたひと言。
「はいはい、解ったから早く座れば?」
促されてようやく席についた。
向かい合わせに座ってまじまじと圭太の顔を見ると、今まで特に意識してはいなかったけど、なかなかのイケメンである。
「ん、なんだ?」
「圭太ってさ、じっくり見ると結構カッコイイんだね。今まで気がつかなかった」
「はあ? なんだそれ。褒めてんのか?」
「かもね」
そんな冗談なんかを言いながら、ストロベリーショートケーキとアッサムティーを注文して待つこと十数分。その間も話は尽きることなく、楽しいひとときを過ごせた。
アッサムティーにミルクを入れて、ストロベリーショートケーキをほおばる。至福の時間だ。思わず笑みがこぼれる。
そんな時、圭太が少しトーンを落とした声で聞いてきた。
「お前、なんかあったのか?」
その言葉にケーキを口に運ぼうとしていた手が止まる。なんだか見透かされるような彼の目に、努めて明るく振る舞った。
「私に? なんもあるわけないじゃん」
「ムリすんなよ」
「ムリなんかしてないよ」
流石は幼馴染みだ。私のことはお見通しといったところだろうか。それなら相談してみようか。……いやいやそれはできない。いくらなんでも彼とケンカして落ち込んでる……なんて言えない。小馬鹿にされて、はいおしまいっていうのが関の山だ。
「そうやってずっとうじうじ悩んでんだろ。誰かに話した方が気が楽になるぜ」
やっぱりお見通しだ。年下のくせに、そういうところは鋭い。
「遠慮すんなよ。言ってみ」
ことの次第を話すことにした。
「実はね……」
フォークを置いて、アッサムティーを一口飲んで話し始めた。
圭太は時々相づちを打ちながら、ちゃんと最後まで聞いてくれた。
「なるほどな」
腕組みをして、小さく息をはいて圭太は続けた。
「それはお前が悪いな」
「えっ」
いつもながらにハッキリとものを言う。少しくらいオブラートに包めないものか、と思いながらも『やっぱりそうだよな』という思いもある。
「まず、川崎さんだっけ? そいつを信用でききれていないお前が悪い。まあ、付き合いが浅いっていうのもあるんだろうがな。まだ相手の本質を解りきってないから、しゃーねぇといえばそうなんだけどな」
「うん」
「次に、小さいことを気にしすぎてる。それは今に始まったことじゃあないけど」
「うん」
「まあ、気持ちは解らないでもないがな。それから……」
「え、まだあるの?」
相変わらず圭太の鋭い指摘に言い返す言葉もない。圭太の話すひと言ひと言が的を射ている。
「最後に、お前の彼も悪いよな。お前を不安な気持ちにさせちまった、ってところがな」
本当にどっちが年上か解りゃしない。圭太は本当に年下なのか? と疑いたくなるような時がたまにある。
「そいつとこれからも付き合っていきたいんなら、ちゃんと話しろよ。途中でその場を離れて話をやめちまうなんて最低だ」
最後に圭太はそう締めくくった。
言い返す言葉もない。彼は本当に高校生なのだろうか? と疑いたくなるようなしっかりした一面。以前にも増して頼りがいを感じる。
「そうだね。ありがとう」
それからすっかり冷めた紅茶を、ストロベリーショートケーキとともにいただいた。ちょっぴり苦いアッサムティーだった。
帰り際に真面目な面持ちで圭太に言われた言葉が、頭の中で繰り返されている。
『お前さぁ、よく見ると結構可愛いよな。今まで気づかなかったけど』
『はぁ? それ褒めてんの?』
『まあな』
お読み下さりありがとうございました。
次話は「メールか電話か」です。
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