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優しさのゆくえ  作者: 藤乃 澄乃
優しさのゆくえ 『それぞれの想い』
17/36

偶然の再会

……ただ察してほしかっただけなのに。

優しい言葉をかけてほしかっただけなのに……。


  ……ただ察してほしかっただけなのに。

  優しい言葉をかけてほしかっただけなのに……。


 それでもまだ切符を買うのに手間取っているだけかもしれない、なんて甘い期待を抱いてホームのベンチに座り暫く彼が追いかけてこないかと待っていた。


 5分、10分……。時間だけが過ぎてゆく。

 もう来ない、きっと来ない、来るはずもない…………来てほしかった。


 「はぁ……」

 ひとつ小さな溜め息をついた。

 ああ、やっぱりな。やっぱり川崎さんにとっては、私ってそれくらいの存在なんだ。一度手を振りほどいただけであっさりと追いかけてくるのをやめてしまえる程度の愛情なんだ。

 じゃあもし、もしも誰かに言い寄られるとどうなっちゃうか、先のことなんて解らないじゃない。口先だけじゃない。

 そんな風に思い始めると、どんどん悪く考えてしまう。


 解ってる。解ってるんだから。自分が悪いくせに責任転嫁しようとしているってことくらい。


 でも、でもね……。




 川崎さんと付き合いだして、初めてひとりで電車に揺られて帰った。ああ、なんて長いんだろうか。

 今日の出来事をいろいろ思い出したりしながら、やっと最寄りの駅に着いた。電車を降りて改札口に向かってとぼとぼと歩いていると、誰かが後から声をかけてきた。


「あれ、桜花じゃねえか」

 ん? なんだか聞き覚えのある声に、『まさかね』と思いつつ振り返るとそこにはその『まさかね』が、可愛い笑顔で立っているではないか。


「あっ、なんだ圭太けいたか」

「なんだはないだろ! 幼馴染みにむかって」

「だから、なんだで充分なの!」

「はあ? お前相変わらず俺には当たりが強いよなぁ」

「いいじゃん、幼馴染みなんだから。それよりもね、年上にむかって呼び捨てとかお前とか、なんとかならないの?」

「え、年上っていったって1コしか変わんねえじゃん」

「でも私は大学生で、キミは高校生。お子ちゃまだね」

「お前だって充分お子ちゃまだろうが」


 顔を見合わせて笑い合った。なんだかホッとする。

「お前さぁ、なんかあった?」

「え、なんで?」

「なんかさ、さっきはこの世の終わりみたいな顔して歩いてたくせに、今は妙にハイテンションだからさ」

ううっ、なんか見透かされている感じ。


 圭太は幼馴染みで、高校までずっと一緒だった。口は悪いし偉そうだし、いつも喧嘩ばかりしている。川崎さんとは大違い。でもいざというときには頼りになるし、私が辛い時にはいつの間にか傍にいてくれる。


 大学を決めるとき、圭太は同じ大学に行くから待ってろなんて言ってたけど、女子大だと聞いて文句言ってたっけ。


 今、このタイミングで圭太に会うなんて……。



お読み下さりありがとうございました。


次話もよろしくお願いします。

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