感覚の差違
私の彼はとっても優しい。初めて出逢ったときから変わらず、ずっと優しい。
彼は優しい。いつもどんな時でも、ニコッと笑って私を優先してくれる。
どこに行くときも、食事の場所を決めるときもいつもいつも私に聞いてくれる。どこでもいいと言ってもまだ聞いてくれる。
これって……優しいのかな?
結局30分くらい歩き回ってやっとお昼ご飯にありつけた。オムライスの美味しいお店。
ここでもまた彼の優しさ……が光る。
メニューを見ながらなかなか決められない私のことを、文句ひとつ言わずに、ずっと待ってくれている。あれこれと迷ったあげく私は茄子ときのこ入りのトマトソースのオムライスに決めた。
向かい合わせに座っているので、顔を上げると嫌でも目が合う。るうちゃんのことも気になるし、なんかいろいろのもやもやが目をそらさせる。
なんとなく気まずい雰囲気に川崎さんが口を開いた。
「なんかあった?」
「え……」
「どうしたの?」
るうちゃんのことを聞いてみようか。いや、とても聞けない。でもこんなもやもやした気持ちのまま過ごすのは結構キツい。
「あ、あの」
「ん?」
……だめだ、やっぱり言えない。
「ううん、なんでもないの」
「そうは見えないけど?」
「え、どう見えるの?」
「うーんそうだな、なにか気になることで頭が一杯です! みたいな」
「ええっ、そう見えますか?」
「そう見えるね」
そうか、顔にでていたんだな。いつまでもこんな調子じゃ折角のデートも台無しだ。
思いきって話してみようかな。
「あのね、るうちゃんが」
「うん」
「るうちゃんが……ね」
「うん」
「あの、川崎さんの」
「うん」
「川崎さんの……こと……」
涙が零れて、零れて……なぜかしら涙が零れてきた。
「ごめんなさい」
そのままハンカチで目を押さえてうつむいてしまった。
「大丈夫?」
私は頷くことしかできなかった。
「とりあえず出ようか」
こんなお店の中で泣いてしまうなんて……バカだ。
涙を拭いて何事もない様子でお店を出た。
少し歩いて階段の脇に立ち止まった。やっぱり聞いてみよう。さりげなく、さりげなーく。
「あのさ、最近なんか変わったことあった?」
「変わったこと? うーん、特にないなぁ」
「ホントに?」
「うん、特にないけど」
「そっか」
「話してみて」
「川崎さん、るうちゃんのことでちょっと聞きたいのだけど」
「るうちゃん?」
「合コンの時の女子の方の幹事です」
「うん」
「彼女からなにか……連絡とかあったりしますか?」
「僕に?」
「はい」
「特にないけど、どうして?」
「どうしてっていうことは……」
ここまで言っておいて話さないわけにもいかず、これまでのこと……るうちゃんの気持ち、ともちゃんが言ってたことを話した。川崎さんは黙って話を聞いてくれて、話し終わるとひと言呟いた。
「なーんだ、そんなことか」
「そんなこと?」
「そうだよ」
私があれほど悩んでいたことが『そんなこと』なのか。他に言いようがあるでしょう!?
男子と女子じゃ、やっぱり感じ方が違うんだな。
お読み下さりありがとうございました。
次話もよろしくお願いします。