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優しさのゆくえ  作者: 藤乃 澄乃
優しさのゆくえ 『それぞれの想い』
15/36

感覚の差違

私の彼はとっても優しい。初めて出逢ったときから変わらず、ずっと優しい。

 彼は優しい。いつもどんな時でも、ニコッと笑って私を優先してくれる。

 どこに行くときも、食事の場所を決めるときもいつもいつも私に聞いてくれる。どこでもいいと言ってもまだ聞いてくれる。

 これって……優しいのかな?


 結局30分くらい歩き回ってやっとお昼ご飯にありつけた。オムライスの美味しいお店。

 ここでもまた彼の優しさ……が光る。

 メニューを見ながらなかなか決められない私のことを、文句ひとつ言わずに、ずっと待ってくれている。あれこれと迷ったあげく私は茄子ときのこ入りのトマトソースのオムライスに決めた。


 向かい合わせに座っているので、顔を上げると嫌でも目が合う。るうちゃんのことも気になるし、なんかいろいろのもやもやが目をそらさせる。

 なんとなく気まずい雰囲気に川崎さんが口を開いた。


「なんかあった?」

「え……」

「どうしたの?」

 るうちゃんのことを聞いてみようか。いや、とても聞けない。でもこんなもやもやした気持ちのまま過ごすのは結構キツい。

「あ、あの」

「ん?」


 ……だめだ、やっぱり言えない。

「ううん、なんでもないの」

「そうは見えないけど?」

「え、どう見えるの?」

「うーんそうだな、なにか気になることで頭が一杯です! みたいな」

「ええっ、そう見えますか?」

「そう見えるね」


 そうか、顔にでていたんだな。いつまでもこんな調子じゃ折角のデートも台無しだ。

 思いきって話してみようかな。

「あのね、るうちゃんが」

「うん」

「るうちゃんが……ね」

「うん」

「あの、川崎さんの」

「うん」

「川崎さんの……こと……」

 涙が零れて、零れて……なぜかしら涙が零れてきた。



「ごめんなさい」

 そのままハンカチで目を押さえてうつむいてしまった。

「大丈夫?」

 私は頷くことしかできなかった。


「とりあえず出ようか」

 こんなお店の中で泣いてしまうなんて……バカだ。

 涙を拭いて何事もない様子でお店を出た。


 少し歩いて階段の脇に立ち止まった。やっぱり聞いてみよう。さりげなく、さりげなーく。

「あのさ、最近なんか変わったことあった?」

「変わったこと? うーん、特にないなぁ」

「ホントに?」

「うん、特にないけど」

「そっか」

「話してみて」


「川崎さん、るうちゃんのことでちょっと聞きたいのだけど」

「るうちゃん?」

「合コンの時の女子の方の幹事です」

「うん」

「彼女からなにか……連絡とかあったりしますか?」

「僕に?」

「はい」

「特にないけど、どうして?」

「どうしてっていうことは……」


 ここまで言っておいて話さないわけにもいかず、これまでのこと……るうちゃんの気持ち、ともちゃんが言ってたことを話した。川崎さんは黙って話を聞いてくれて、話し終わるとひと言呟いた。


「なーんだ、そんなことか」

「そんなこと?」

「そうだよ」


 私があれほど悩んでいたことが『そんなこと』なのか。他に言いようがあるでしょう!?

 男子と女子じゃ、やっぱり感じ方が違うんだな。




お読み下さりありがとうございました。

次話もよろしくお願いします。

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