疑問の来襲
るうちゃんが言った言葉が気になって……。
昨日の放課後るうちゃんに言われた言葉が、ずっと心にひっかかっている。
今日、川崎さんと待ち合わせているが、いつものウキウキした感情はあまり湧かない。
一体どうしちゃったんだろう。なんか、ヘン。自分でも気がつくくらい表情が堅い。るうちゃんのことも気になるし……。
あんなこと聞きたくなかったな。聞きたくなかった。
聞かなければよかった。……でも聞いてしまった。
るうちゃんが川崎さんに接近しようとしていると、ともちゃんは言っていたけれどそれよりもむしろ、川崎さんと私が付き合っていると知って、るうちゃんはどんな気持ちだったのだろうか。そのことが気になる。私は大切な友達を失おうとしているのだろうか。
いつものようにターミナルで待ち合わせ。今日は私の方が早く着いた。スマホ片手に画面を見つめているが、内容なんてちっとも頭に入ってこない。ただ手持ち無沙汰で、指をスライドさせているだけだ。
10分程そうしていただろうか、川崎さんが申し訳なさそうにやって来た。といってもまだ待ち合わせの時間には5分あるのだけど。
「待たせてごめんね」
「ううん、私も今来たところ」
「そっか。じゃ、行こっか」
「うん」
るうちゃんのことが気になって早く着きすぎたなんて、とても言えない。こわばった表情しかできないから、あまり川崎さんの方を見ないようにして歩いた。
川崎さんはいつもと変わらない様子で、相変わらず優しい。
少し歩いて、どこか行きたいところはないかと聞いてくれる。私は特にないと答えるけど。
どこに行くかってことよりも、誰と行くかってことの方が大事。だからどこでもいいの。
「どこ行こっか」
「どこでもいいよ」
「そっか」
3才年上の彼。行き先くらい決めてほしい。でもいつも聞いてくれる。優しいから私を優先してくれているのだ。
少し歩いてお腹もすいてきた。
「ちょっとお腹すいたね」
「そうだな、じゃあお昼にしよっか」
「うん」
「なにか食べたいものある?」
「特にない」
「行きたいお店は?」
「別に」
そんな会話の繰り返し。3才年上の彼。お店くらい決めてほしい。
大事なのは、どこに行くかじゃなくて、誰と行くかなんだから。
でもいつも聞いてくれる。優しいから私を優先してくれているのだ。
「なにが食べたい?」
「なんでもいい」
「どこ行く?」
「どこでも」
これって本当に優しいのだろうか。
お読み下さりありがとうございました。
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