突然の告白
ある放課後、教室でまだ帰るでもなくともちゃんと喋っていると、るうちゃんが勢いよくやってきた。
大きく一息吸って、
「桜花、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「な、なに?」
おもむろにそんなことを言われてドキッとしたが、それよりも私の手を掴んで廊下まで引っ張って行ったるうちゃんの行動に驚いた。
「どうしたの? びっくりするじゃない」
「あのさぁ……」
「うん」
「川崎さんと付き合ってるんだって?」
「え、うん、まあ」
「本当に付き合ってるの?」
「うん、付き合ってる」
「……そっか」
「ん?」
「あ、なんでもないよ」
「そうなの? なんかヘンだよ」
なんでもないならわざわざ聞きにくることもないだろう。何か言いにくそうにしているのが、余計に気になる。
「うーん」
「なに?」
「実は私も川崎さんのこと好きだからさ」
「え……」
な、なに? どういうこと?
川崎さんが好きって、どういうこと!?
そんなことサラッと言ってくれるけど、それって私に言うこと?
「合コンの時からずっと好きだったの」
「でもるうちゃんそんなことひと言も言ってなかったじゃない」
「言える訳ないじゃない」
「じゃあ、最初にどうして幹事の山中さんに私の電話番号教えたの?」
「まさか川崎さんが聞きたがってたなんて知らなかったから」
「知ってたら教えなかったんだ」
「うん、多分」
そんなこと全然知らなかった。もっと早く言ってくれればいいのに。
……もっと早く聞いていたらどうしただろう。川崎さんとは付き合わなかった? 川崎さんのこと、好きにならなかった? もっと早く聞いていたらどうしたんだろう。今更聞いて、一体どうしたらいいのだろう……。
その後気まずい沈黙が続いた。
その沈黙を破ったのはるうちゃんだった。
「なんか、ごめんね。気にしないで」
「え、気にしないでって……。じゃあどうしてそんなこと言ったの?」
「別に。どうしてっていうことないけど」
聞いてしまった以上、気にするなという方が無理な話だ。本当にどうしてるうちゃんはわざわざ今更こんなことを言いにきたのだろう。すごく動揺しているのが自分でも解る。
その様子を見てるうちゃんは、満足げな笑みを浮かべ「じゃあ」と言うとその場を去って行った。
るうちゃん、一体どうしちゃったんだろう。わざわざあんなことを言うような子じゃないのに。
「さーくら」
「あ、ともちゃん」
心配そうに覗き込んで声をかけてくれたともちゃん。
「大丈夫?」
「え……」
「るうちゃんになんか言われた?」
「……」
そんなこと言えるはずもない。今更わざわざ川崎さんのことが好きだって宣言されたなんて。
「川崎さんのことでなんか言われた?」
「どうしてそれを……」
「るうちゃん、最近川崎さんに接近しようとしてるみたいだから、気をつけなよ」
気を付けるってなにをどう気を付けるというの?
私に一体なにができる?
お読み下さりありがとうございました。
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