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優しさのゆくえ  作者: 藤乃 澄乃
優しさのゆくえ 『それぞれの想い』
12/36

永遠の時間

今日はバレンタインデーなので、少々甘めになっています(_ _)

 「いやだ」

 電車に乗り込もうとする彼のジャケットの袖をつまんだ。

 彼が立ち止まり、ドアが閉まる。遠ざかる電車を見送り、ホームには私達2人だけが残されている。


「少し歩こう。送って行くよ」

 微笑んで川崎さんはそう言うと、改札口に向かった。


 改札を出て「どっち?」と言う彼に指さして合図した。

「あっち」

「じゃ、行こうか桜花ちゃん」


 頷いて、思いきって腕を組んで歩いてみた。その方があったかい。


 2人とも無言のまましばらく歩いて、この街で一番大きな川にさしかかった。橋は車道と歩道に分かれていて、6月ごろだとこの橋から川辺に蛍が飛んでいるのが見えるほどの綺麗な川だ。

 橋の中央あたりでどちらともなく立ち止まった。欄干にもたれかかって川の流れを眺めている。

『綺麗な川ねぇ』なんて思って眺めている余裕などない。だけど、高鳴る鼓動を悟られたくなくて、わざと元気に言ってみる。


「綺麗な川でしょう? 6月ごろだとここから蛍が見えるのよ」

「ふうん、そうなんだ」

 なんだか気のない返事に私は続ける。


「光ったり消えたりとっても幻想的なのよ」

「綺麗だろうね」

 また気のない返事。



 その後の沈黙が何とも言えず、後を向き、欄干に背中からもたれかかった。

 見上げると、歩道の街灯に照らされてなんだかスポットライトを浴びているよう。


 すると優しく髪に触れた手。頭から髪をなで下ろすあなたの左手。その手が肩にさしかかり背中へと……。


「え」


 そのままぐっと引き寄せられ、あなたの腕の中へ。


ドキン


だんだんと近づく、目を細めた優しいあなたの顔。


「あ」


ドキン


周りの音が消えた。


はじめての……。


その時間は永遠にも思えた。




目を開けるとまた優しいあなたの笑顔。


ドキドキが胸を突き破りそうだ。


恥ずかしくて下を向く私をそっと抱きしめて、

「離したくない」


そう言うから私もあなたにぎゅっと抱きついて、思わず言ってしまった。

「離れたくない」


あ、またあなたの鼓動を感じる。

『ドキドキドキドキ』


「桜花、心から君が好きだ」


ドキン


「私も」


『ドキドキドキドキ』




 もうこれ以上ドキドキには耐えられない。

 やっぱりここからは1人で帰ろう。



お読み下さりありがとうございました。


今話から新章に入りました。

次話もよろしくお願いします。

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