88 『災害』からの頼み
あれから数回『甘い風』を訪れたが、行けば行くほどメドゥーサを悪い奴とは思えなくなっていった。
そんなある日、『甘い風』からの帰り際、メドゥーサから
「…今度、パーティメンバー全員で来てくれないかい?」
と言われた。
オレとラクトは皆にこれまでのメドゥーサについてを話し、念のため装備をして全員で、『甘い風』へ向かった。
「…おやおや、大丈夫さ。やり合おうってんじゃないんだから」
警戒しつつ店に入るオレ達にメドゥーサが微笑む。
「じゃあ一体何の用?…ハッ、まさかアキヨー」
「スイマー」
「…zzz」
「で?それなら用事は何だ?」
「…やる気だったのかい?…まぁ、あんたらしくていいと思うよ」
メドゥーサは切り替えるように一度深呼吸した。
「今日はアンタ達に頼みがあってね…敵対する同士とはいえ、アンタ達は信用できると私は思ってる。だから…私にできない事を代わりにやってほしい」
風が変わった。
今まで店を取り巻いていた優しい強い風、急に鋭く冷たいものに変わった。だがその冷たさは、メドゥーサの心に秘められた熱を伝えてきた。
「アンタ達に、災害『地震』のタイタンを倒して…いや、殺して欲しい」
メドゥーサはそんな事を言った。
「何で?」
呟いたのはモユーリだった。
「…アイツは『災害』の立場を使って多くの命を奪っている。だけど、だ。殺すのは子供だけなんだよ。子を殺された絶望し泣き叫ぶ様を見て、アイツは嗤うんだ。私も…子を殺された。でも『災害』同士で争うことは魔王様が禁じている…だから、私の子の仇をとって欲しいんだ」
その言葉に込められたただならぬ怒りが風を強くする。メドゥーサの目には涙が浮かんでいた。
「お願いだ、あんたらにしか頼めない。100年近くもこの苦しみに耐えてきたが…もう、限界だ。どうか助けて……助けてください…」
…恐らくメドゥーサはかなり複雑な事情からこのような身になったのだろう。今のオレの目にはメドゥーサが敵ではなく友人として映っていた。
「…良いだろう、討ってやるよメドゥーサ」
オレは友人の仇を討つことに決めた。そして事が終わったら、彼女から全てを聞こうと思った。




