87 メドゥーサ
「っ!?メドゥーサ、どうしてオマエがここに!?」
「いや訪ねてきたのはあんたらだろ…?」
こっちが聞きたいよ、と言われ、何とも言えないオレ達にメドゥーサは
「で、殺り合うかい?それともゆっくりしてー」
「「ゆっくりしていきます」」
「だろうね。懸命な判断だ」
手振りで入るように促され、オレ達はカウンターの席についた。
「…あのー、いきなり殺したりしないっすよね?」
「何言ってんのさ、あんたらはまだ私が恨むようなことはしてないじゃないか。そっちから来ない限り殺す理由はないよ」
「…そうっすね…」
「それで、ご注文は?」
「はい、お待ちどう」
メドゥーサは熱いコーヒーを2つオレ達の前に出した。
「…これ、毒とかは?」
「あんたらも用心深いねぇ…まぁ良い事だ。入れてないよ。何なら飲んでやろうか?」
「いや、いいよ。…で、何でオマエはこんな所に?」
「それは普通に店を出したかったからさ」
…本当なのだろうか。
「?…疑っているようだね。安心しな。私は魔王様の命令以外で無闇に人は殺さない。まぁ信じるかは任せるけど」
メドゥーサはそこで一旦言葉を切り、微笑みながら話を振ってきた。
「さて、あんたらがあの『災音』たちと戦ったときのことを聞かせておくれよ」
「…なるほど、『飢餓』は見てたけど『疫病』はそうやったんだね…考えたもんだ」
「仲間を殺された怒りとかは…ないのか?」
「ないね。あいつらは単に領土が欲しかっただけだ。悪いのはあいつらだからねぇ…当然の仕打ちってやつさ」
その言葉に偽りは感じられなかった。
「私は人を殺すのが正直言って嫌いだから、できることなら仲良くしたいんだけど…それは魔王様の意向に反するからね。難しいねぇ…」
「何でそんなに魔王様に執着するすか?」
「…返し切れない恩を受けたから…だね」
…このメドゥーサという女性は、正直で真っ直ぐで、そして優しい女性だとオレは感じた。ふとメドゥーサは窓の外を見上げ、
「そろそろ帰りな、日が暮れてきてるよ。また来るといい、あんたらとは美味いコーヒーが飲めるからね」
「そうだな、楽しかったよ…またな、メドゥーサ」
そう言ってオレ達は喫茶『甘い風』を後にした。




