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86 喫茶「甘い風」
「相変わらず美味いなモユーリの料理は」
「そうっすね。…でも何で男の影がないんでしょう」
「いやそれはまあ…ほらアレだから…」
「ああ…(察し)」
モユーリに聞かれたら問答無用で蜂の巣にされそうなことを話しながら、オレはラクトと昼下がりの散歩をしていた。
「あんまり行かない所に行きましょうよアキヨシさん」
「そうだな、新しい刺激が欲しい」
「うわっ、ちょっと気持ち悪い」
「ブルッド」
「ひゃあ!?…止めてくださいよ。微妙に肌寒いんすけど!?」
ブルッドはオレの中でドッキリ系ネタ呪文として定着していた。
オレ達はいつも曲がらない角を曲がり、薄暗い路地に入った。
「…なんかその辺にチンピラとかいそうっすね…」
「確かになんか不気味だな…」
だが、そんな不安はしばらく路地に入ってある店を見つけた瞬間消え去った。
「『甘い風』…」
それがこの店の名前だった。
店から漂う香ばしいコーヒーの匂いが風に乗り、オレ達を取り巻いている。
…何だかこの店は隠れた名店な気がする。
「よし、ゆっくりしていくかラクト!」
「そうっすね!」
ドアを開けると、カウンターの向こうに座っていた人物が口を開いた。
「ほぉ、あんたらかい。今日は客?それとも敵?」




