祈り
空を飛ぶのは好きです
手を伸ばしても、とどきもしない果てしない天上に
今は触れられそうな位高い所まで行くことができる
僕はパイロットになったというよりも、鳥になったような気持ちです
大変快晴で
みんなにも見せてあげたいです。
でも、次に空を飛ぶときは
僕は本当に鳥になってしまう
初夏の快晴でしょう
晴れ舞台には上出来です
目的地がよく見えるし
ターゲットを逃すことは出来ません
目を瞑ってしまって
もっと高く空を飛んで
無かった事にしてしまえたら
こんな親孝行はありません
いや
僕は
目を凝らして
まるで羽を傷付けたツバメのように
落ちるように降下して
あの日、徒競走で一等をを取った時のように
速く速く
テープを切ることしか出来ないのです
僕が
あの日のように
一等を取った時
誰が僕を誇るのだろう
きっと
日本中の僕のような誰かの子ども達や
僕の両親のような誰かの生みの親達や
犬や猫や、馬や獣や鳥や魚や
草花や木々や
星や月や太陽が
僕の切る最後のテープにこの上ない祝福と
大海にも勝る涙を流してくれることを僕は信じています
飛ぶ鳥が振り返らない事を
勇敢で哀れな有志の晴れ姿を
どうか笑って下さい
でなきゃ、僕はきっと逃げ出してしまう
僕は
一番天上に近いこの場所で
祈ります
僕の生まれた故郷の
大いなる大地と
大いなる生命が
この先ずっと無垢であり続ける事を
僕の愛する
この世界の
全てという全てが
この先ずっと光を失わずにあり続ける事を
それと
鳥になった僕が
かつて愛したあなたへ
美しい世界のもと、
あの日想いを伝え合った時のような
明るい囀りでまたあなたのもとに帰って来ることを
最後にひとつ
僕が
全身全霊でぶち当たる鋼の壁の中にいる
僕と同じ人間である
青い目をした彼らの全てを
僕の翼で奪ってしまう事なんてないように
僕の全てをかけて
この世界中が
一生終わりの無い幸福への再生に繋がることを。
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彼らの命を無駄にしたくないです。ありがとうございました。