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「エビマヨの真実」

 エビマヨ、ちょー好き。


 字面がアホになるほど、僕はエビマヨが好きだ。

 プリプリした海老に、ソースをしっかり絡めてくれる衣。

 そしてあのソース。


 マヨネーズをベースとしたコクのある味わいが、とてもエビと合う。

 少し甘い味わいが、九州生まれの僕の好みにもあっている。


 エビマヨは美味しい。

 前回がやわやわうどん大否定(手のひらくるり)だったが、今回は最初からべた褒めで行く。

 べた褒めで、行きたいのだが……。

 

 だが待ってほしい。


 エビマヨの美味しさについて、僕はある疑問を持つ。


 エビマヨは美味しい。

 これは真実だ。


 だが、エビマヨにエビはいるのか?


 例えばタコヤキ。

 タコヤキにはタコ以外の物を入れても美味しいのか。

 結論は美味しい。

 最近はタコの代わりにチーズやウインナー、餅を入れるのが流行っているのがその証拠。


 例えば麻婆豆腐。

 麻婆豆腐には豆腐以外の物を入れても美味しいのか。

 結論は美味しい。

 麻婆茄子に麻婆春雨、麻婆もやしも最近ではある。


 食材名が入っている名前の料理に、それ以外の食材を使う。

 一見冒涜的ともとれるその行為だが、それは料理の幅を広げる冒険的行為でもあるといえる。


 その余波に当てられ、僕は思う。



 エビ以外でエビマヨ作っちゃってもいいんじゃない?



 この疑問が僕の中でフワフワと漂っているのだ。


 疑問というか、もはや疑惑。

 エビさんはマヨさんに頼り切っているのではないか問題。


 他にも合う食材があるにも関わらず、不当にマヨソースを彼が利用している問題。



―――――――――――――――――――――



「エビさん!不当なマヨソース独占問題について一言お願いします!」



 記者の質問に眉を顰めつつも、厳然たる態度でマイクに口を近づけるエビ氏。

 その表情は嫌々というか、渋々というか、明らかな不快感に溢れている。



「何度も申し上げていますが、そのようなことはございません。マヨソースは私と一緒でしか成り立ちません」



 エビ氏によるマヨソース囲い込み問題。

 それが今日の会見の本題である。



「疑惑を晴らす証明はできるんでしょうか」

「疑惑という言い方は甚だ遺憾でございますが、今後は厳正なる第三者の公平な目で確かめて頂き、公表するつもりです」



 同記者の続けての質問に、苦虫を噛んだような表情で対応するエビ氏。

 先ほどの質問より声の調子が曇り、周囲にイライラとした雰囲気が伝播する。

 そしてその空気を察した記者が、顔をニヤつかせ次なる質問をぶつけた。



「第三者といってもご自身で選ばれた第三者では、とても公平とは言えないのではー!?」



 嘲笑したような顔と声で投げつけられる質問。

 それは正に火炎瓶。


 エビ氏の感情が一気にメラメラと焚きつけられる。



「おい!いい加減にしろ!貴様どこの社のものだ!言え!!」



 茹で海老のように顔を真っ赤にして、怒りを露わにするエビ氏。


 それを待ってましたと言わんばかりに、カメラから発せられる無数の光。

 それは彼のエビマヨ人生の終わりを意味する。

 ……のかもしれない。 



―――――――――――――――――――――



 というわけで今、エビさんは手元にない。

 

 値段が高いから揃えられなかった訳ではない。

 いつもエビマヨを作るときは、半額のパナメイ海老を使うという訳ではない。


 上記のようなトラブルのために、ご出席願えなかったのだ。


 そしてエビさんの宣言通り、厳正なる第三者様にご出席頂いている。

 彼は正しく全ての料理に、公平に登場して料理の本質を見抜いてきた大御所である。


 彼の名はトリムネ肉。


 淡白なその味は、様々な味付けと調和する。

 醤油、味噌、ケチャップ、ポン酢。


 正にマヨソースの味を見極める第三者として相応しい。

 お金が無かったとか、そういうことではないのだ。


 

 まずはマヨソース用の薬味。

 ネギをみじん切りにし、小皿に分ける。

 さらにニンニク、ショウガもみじん切りにして同様にとっておく。


 続いて本題のトリムネ。

 慣れた手つきでトリムネを、少し細長い形に切っていく。

 これに酒を振り、塩コショウで味付け。

 そして小麦粉を叩く。


 そしてフライパンに多めの油を敷き熱し、鶏肉を入れる。

 ある程度火が通ったら取り出し、キッチンペーパーで余分な油を切る。

 ここまでが下準備。

 

 続いて同じフライパンに油を足し、ニンニクとショウガを入れ弱火にかける。

 さらに豆板醤とケチャップを小指の先くらいの量だけ入れる。


 油に色が移り、赤くなったタイミングで先ほどのトリムネを入れる。

 軽く炒めたところで肝心のソースで和える。


 エビマヨのソース。

 それはマヨネーズだけではない。


 マヨネーズをベースに、練乳を加え、牛乳で伸ばす。

 アクセントに少しレモン汁を加えるのも良い。

 少しびっくりする人もいるかもしれないが、これでいい。


 ソースを入れる際は火を極弱火にして、ほんの少し水分を飛ばす。

 強火にするとマヨネーズが分離してしまう可能性が大きい。


 軽くトロミがついたような状態になればもうほぼ完成だ。

 あとはレタスを盛った器に盛り付けて、みじん切りのネギをかけて出来上がり。


 薄オレンジの食欲をそそる見た目に仕上がった。


 だが、問題は味である。

 エビさんの言う通り、マヨソースはエビと一緒でしか成り立たないものなのか。


 そんな不安と期待を胸に秘め、僕はトリマヨを口に入れる。


 美味しい。

 美味しいけど、やはりエビマヨほどの感動は無い。

 やはり値段の差。


 日本人にとってエビはご馳走。

 その味わいの差が顕著に表れている。


 だが美味しいのは事実。


 トリムネとマヨソースの愛称は悪くない。

 むしろ良い。


 トリムネだと淡白すぎる味わいが、ソースのおかげで重厚で食べがいのある「ご馳走」に仕上がっている。

 加えてエビと比べると段違いに安い。

 さらには下ごしらえの点も評価できる。

 エビならば、殻を取って背ワタを取るという二つの工程が必要だ。

 しかし、トリムネならばスッスッと包丁を入れるだけでいいのだ。


 トリマヨはもっと食べられるべきである料理というのが今回の結論。


 そしてエビ氏の疑惑不当マヨソース独占疑惑。

 マヨソースは他の食材との相性に問題なく、実質不当な独占であったといえるかもしれない。


 だが、エビマヨには勝てない。

 そういうことだ。


 


 少し流行りにのってみました。

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