異国の令嬢様
さらに次の日。
リックは再び街へと出ていた。
自警団に手配されていようともこれまで何もなかったため、危機感が欠如してきたのかもしれない。
日が暮れたら教会へ行くという約束だ。
そこで神父様の話を聞き、フィーナの足取りを追う。何も情報を得られないかもしれないがその時はその時だと開き直り、街を歩いていた。
まだ日は煌々と頭上で輝いている。さて、日が暮れるまでどうやって過ごそうか?
(またギルドに行って依頼でも受けようかな?)
いや、当面のお金は大体、稼いだ。それに二日連続で魔物や盗賊と戦ったため休みたいというのが本音だ。
よって、たまには街をぶらぶら見物しても良いだろうと考えた。
指名手配されている身で、自分でもかなりお気楽だなと思ったが手配書があれでは問題でも起こさないかぎり、捕まることはないだろう。
それにせっかく異世界に来たのに宿屋に閉じこもっているのはもったいない。
グリア―ドに来てからすでに数日が経過したが、この街についてリックはほとんど何も知らない。
そんなわけでリックは中央市場の方へと向かっていく。
市場では見たこともない果物や野菜が店頭に並べられていた。どれも興味深いモノばかりでただ歩いているだけでも楽しい。
自分の置かれている立場も忘れ、リックは街の観光に勤しんでいた。
自警団と冒険者には気を付けながら歩いていくが、やがて道の片隅で不審な影を視界にとらえた。
(ん?何だ、あれ……?)
リックと同じくマントとフードで全身を覆った小柄な人影。ふらふらと何とも危ない足取りで、中央市場を歩いていた。
人にぶつかりかけたことも何度か。酷く目立つ人物だった。やたらと背後を振り向き、まるで私は追われていますと言わんばかりに周囲を気にしている。
(うん……怪しいな)
リックも人の事を言えないのだが、人影の怪しさは群を抜いていた。
ひょっとしたら……あれが一連の事件の殺人鬼なのではないか?思考が飛躍したような気もしたが、この街で怪しい人物を見かけたらどうしてもそれを連想してしまう。
どうやら周りの冒険者もリックと同じことを思ったみたいで、ガタイの良い冒険者達が三人、フードで身を隠す人影へと近寄っていった。
怪しい人物を三人で囲むとそのまま路地の裏へと連れ去っていく。
(……付いていってみるか)
本当に真犯人だとしたらそれこそ大事件だ。
そして、こっそりと道の先を覗いてみるとフードを被った人影が壁際まで追い込まれ、冒険者達の手が己の武器へと掛けられていた。いつでも攻撃を仕掛けることが可能な体勢だ。
冒険者の一人が警戒をしながら人影に近付き、そのフードを外すと……リックは思わず息を呑んでいた。
露わになったのは目を見張るほどの美貌。漆黒の絹のような黒髪が重力に従って零れる。
リックが驚いたのはその人影が美少女だったからではなく、その容姿に見覚えがあったからだ。そう確か二日前、盗賊に襲われていた少女、レーミアだったのだ。
「……なんであの子がここに?」
確かグリア―ドに向かうと言っていたのを思い出した。
だが、だとしたらあの護衛の騎士の人達はどこなのだろう?周りを見渡してもそれらしい姿は見えないのだが……
このままでは不味いよな、何事かとおろおろするレーミアの顔を見ながら嘆息する。
不審な人物だと疑い、声を掛けたがその正体は美しい少女だった。その事実に呆気にとられた冒険者達だったが、すぐに好色な笑みを口に浮かべる。
「おい、姉ちゃんよ。この街で女の独り歩きは危ないぜ」
「そうだぜ、こわ~い殺人鬼がうろうろしているからよ」
「俺らが守ってやろうか、礼ならいいって体で払ってもらえれば、ギャハハ!」
「え?あ、いや……その、あの……!」
あの子は呪われているのだろうか?また厄介な奴らに絡まれているし……。
レーミアは詰め寄ってくる冒険者達に戸惑うばかりで、とても対処できるような状況じゃない。
冒険者達と問題を起こすのは、正直避けたいが、放っておくわけにもいかない。
レーミアの護衛である騎士団もこの辺りにはいないわけで……ため息を一つこぼすとリックは物陰から抜けだした。
床にあった石を拾うと、冒険者の一人に投げつけた。
「いってぇッ!」
軽く投げたつもりだったが不意打ちのせいか、痛みで頭を抑える男。
そのままリックは走りだし、戸惑うもう一人の男へタックル。突然の事態に冒険者達が怯んだ隙にレーミアの手を取った。
「行くよッ!走って!」
「え?あれ、あの……!」
背後から冒険者達の怒号が響いたが無視。
中央広場の人ごみに紛れ込めば、もうこっちのものだ。レーミアの手を引っ張るような形で走りまわり、やがて建物の物陰に身を潜めた。
ちらりと道路の方を覗くと、冒険者達の姿は無い。もう追ってきてはないようだ、ほうっと息を吐くと……
「あ、あああ、あのッ!」
背後にいた少女が悲鳴のような声をあげた。振り向くと何故かレーミアが顔を真っ赤にさせ睨んできていた。
あれ、助けたのに何でこんな表情?
「と、突然、こんな暗がりに連れ込んで、ど、どどどうするつもりですか?」
レーミアの言葉に一瞬、キョトンとしながらも、すぐに思い至った。そうか、今は自分はフードで顔を隠している。
気が付かないのも、無理はない。フードを外し自分の顔を見せると、レーミアは上品に口を手で覆った。
「あ、あれ……?リクオ様?」
「どうも……またお会いしましたね」
レーミアは目を見開き、リックを見つめた後、再び顔を朱に染めた。
「や、やだ、私ったらとんだ勘違いを!ごめんなさい!知らない人だと思ったので、そ、その……いやらしいことをされるのかと……!」
少女から飛び出してきた驚愕の言葉に思わず吹き出してしまう。おいおい、いやらしいことって一体何!詳しく聞きたいような、聞きたくないような……。
「ご、誤解ですよ!俺は街を歩いていたらレーミアさんを見かけて、困ってたみたいなので助けようと思っただけで!」
「ですよね!ごめんなさい、リクオ様だと気付かなかったものですから……!」
何故かお互いが真っ赤になり慌てふためく二人だった。
何となく照れ臭くなり頭をかくリック。そんな恩人を見ながらレーミアは嬉しそうに顔をほころばせた。
「リクオ様、ありがとうございました。一度ならず二度までも助けて下さるなんて……何か、運命を感じますね」
「う、うぐ……!」
はにかむような言葉にリックはどう答えるべきなのか分からず視線を宙に漂わせていた。
ここで女性の扱いになれたイケメンなら上手く言葉を返せるかもしれないが、残念ながら女の子と話すのすら慣れていないリックは戸惑うばかりだ。
向けられた気持ちが純粋過ぎてリックの手には負えない。
「またリクオ様と会えて良かったです。この間は満足な礼も言えないままでしたから」
「そんな、もういいって!前も今回もたまたま通りがかってだけだからさ。でも、今日は一人でどうしたの?さっきの冒険者も言っていたけど、この都市は今、殺人や何やらで物騒だよ?」
商人しか狙われてはいないが、殺気だった冒険者や自警団がこの辺りをうろついている。
正直、女性の独り歩きは感心しない。
「あのクリップさんだっけ?護衛の騎士団はどうしたの?」
「え?えと……実はその……騎士団の人達には内緒で宿を出たものですから……」
「内緒で?一体どうして?」
「私はこのグリア―ドの街を見たいと言ったんですけど……調べたところ、この街は今、とんでもない凶悪犯がうろついているらしいので、クリップさんが駄目だと申されてそれで勝手に……」
「あ、あはは、そうなんだ……」
クリップ隊長とやらはレーミアを本当に大事に思っていたことを思い出す、今頃、心配しているだろうな。
「でも、意外ですね」
「え?」
「レーミアさんって大人しい方だと思ってたんですけど、本当はオテンバなんですね。」
「えっ!と……そうでしょうか?自分でも珍しいことをしたとは思うんですけど……グリア―ドはその賑やかな町だと聞いたのでどうしても見てみたくなってしまって……」
両の手の人差し指をつんつんさせながら、答えた。
「私の国は少し閉鎖的でして、このような様々な人が行きかう街は無かったんです。だから一度くらいはと思って宿屋を抜けだしたんですけど……案の定、迷ってしまって」
「そして、冒険者に目を付けられてしまったと」
「はい……やっぱり私一人で街の観光なんて無理だったんでしょうか?父が何分、心配性な方ですから普段でも、私が家の外へ出ることに良い顔しないんですよ。だから、今回は良い機会だと思ったんですけど……」
なるほど、思った通りというか、レーミアはかなりの身分の家の生まれらしい。
いわゆる箱入りお嬢様というわけか。そんな子にはこの雑多な街を歩くのは難しいかもしれないな。
「またリクオ様にも迷惑をかけてしまって、本当に情けないです……残念ですけど、もう宿に帰ります。クリップさん達も心配しているでしょうから」
もう一度、礼を告げるとレーミアは歩き出した。何だか、その背中から哀愁が感じとれていたたまれなかった。
だが、進むレーミアが不意に止まり、何やらキョロキョロ周りを見回している。
「……どうしたの?レーミアさん」
少女はゆっくりと後ろを振り向くと、目を涙で滲ませて……
「どうしましょう、リクオ様……宿への道が分かりません……!」
その言葉の最後の辺りは涙声で濡れていた。おろおろするラーミアを見て、リックは思わず笑みが零れてしまっていた。
笑っては駄目だと思ったのだが、少女があまりにも情けない顔をしていたから堪え切れない。
「ぷふッ、か、帰り道も分からないんですか?」
「わ、笑うなんて酷いですよ~!」
「ご、ごめんごめん!……ならさ、レーミアさんが泊まっている宿を探すついで、俺と一緒にグリア―ドを見て回らない?」
「…………え?」
「実は俺もこの街にまだ数日しか経ってなくて丁度街の観光でもしようかと思っていたんだ。」
それにレーミアを一人にしておいたら、何となくまた問題が起こりそうで放ってはおけない。
リックから見てもレーミアは相当の箱入りのお嬢様に感じられたのだ。手配されている自分と一緒に居たら、問題に巻き込きこんでしまうだろうかとも思ったが……大丈夫だろう。リックは楽観的だった。
少女は目を一杯に見開いて、リックの言葉を吟味していた。返答が中々、返ってこないことに少し怖気づく。
「ど、どうかな?」
少女はまだキョトンと首を傾げていた。ひょっとして俺と一緒は嫌だったのだろうか?
女性を遊びに誘ったことの無いリックはその反応に少々怯えていたが、突然、レーミアの目がキラキラと輝きだした。
「い、いんですか!私もリクオ様と一緒に行きたいです!」
興奮しすぎてせいか予想以上に詰め寄られてしまい、驚くリック。
「あっ、でも、どうしましょう……騎士団の方が心配しているかもしれないです」
「う~ん、もう抜けだしちゃったわけだし今さらじゃない?それに、もし怒ってたら俺も一緒に謝るよ。一応、騎士団の人達も俺の事を恩人だって言ってくれたわけだし、許してくれんじゃないかな?」
「リクオ様……!」
何やらレーミアから熱のこもった視線が向けられた。
ちょっと格好付けすぎたかなと思ったが、この少女が喜んでくれるならいいか、と思えた。
「じゃあ、行こうか、レーミアさん」
「…………レーミアでいいですよ」
「え?いや、でも……」
「レーミア、です!」
「わ、分かった……レーミア、行こう」
リックが名前を呼ぶと少女は花のように微笑んだ。女の子を呼び捨てにするのは、かなり慣れないことなのだが、押し切られてしまった。
やっぱり人間は見た目で判断してはいけないな……っていうか、そんだけ気迫を持っていたのなら冒険者も追っ払えただろうに、そう思うリックだった。
リックとレーミア、二人並んでグリア―ドを歩いていく。まず向かったのは賑やかで活気に満ちた中央市場。レーミアは目に映る全てが珍しいようで、あっちこっちうろうろしながら進んでいる。
「見て下さい!リクオ様!あれは一体、何でしょうか!」
彼女が指をさすのは茶色ののれんが掛けられた建物。
「……この漂う甘い匂いからして、お菓子か何かかな?買ってみる?」
「いいですね!あっ……でも私、実はお金の管理はクリップさんに任せていて……」
「なら、俺が買うよ、一つでいい?」
「え!そ、そんな!そこまでしてもらうわけには……!」
遠慮するレーミアを無視して、リックはのれんを分けお菓子を買う。まんじゅうのような柔らかいそれを二つ店主から貰い、レーミアの元へ急いだ。
「はい、どうぞ!」
レーミアは差し出された饅頭モドキを躊躇うような仕草をした後、受け取った。
それを見届けた後、リックは湯気を出すお菓子に口を付ける。瞬間、中から激熱の餡が零れ、跳ね上がった。
「あっつ、あちッ!何だこれ!」
「あっ、だ、大丈夫ですか!リクオ様!」
「ら、らいろうぶ、れす……はぁ~、レーミアも気を付けて、油断してたら火傷するぐらい熱いから!」
「は、はい!分かりました!」
レーミアは小動物のようにおそるおそる食べ方で饅頭を口に含むと、熱さに顔をしかめた後、大輪の花が咲いたかのようにほほ笑んだ。
「お、美味しいです!中の餡が程良い甘さで……こんな食べ物、初めて食べました!」
嬉しそうに笑うレーミアを横目に眺め、リックも今度は火傷しないように気を付けて、お菓子を食べた。
一口目は熱さで味が分からなかったが、なるほど確かにこれは美味しい。
外は肉まんのように柔らかい生地で、中にはこれまで感じたことのない不可思議な甘味のする餡が詰まっていた。
中身の餡だけ食べたら甘すぎるだろうが、生地があるおかげで程良く緩和され口当たりも良かい。
「……ホントだ、美味しい。これならいくつでも食べられるな」
ふ~ふ~と冷ますとリックはそれを一息に口に放り込んだ。
「うんうん、まったく、この街の食べ物はどれも美味しくて困るな。色々、目移りしてしまうよ」
「ふふふ、そうですね。やっぱり大陸各地から色んな物が集まってくるからでしょうか?……私の国にもこんなお菓子があればいいのに」
「そういえば……レーミアの故郷はどんな所なんだ?俺達が会った時は自分の国へ帰る途中だったんでしょ?」
「はい、私は聖レヌーバ公国という国から来たんですよ」
「聖レヌーバ公国ね……」
確かクリップさんもそんなことを言っていたな。
「……知ってますか?」
「あ、あはは……ごめん、知らないや」
「いいんですよ。そんなに大きな国ではありませんし、排他的でもありますから。リクオ様のように東方から来た方はご存じ無いのも無理はありません」
肩を落とすリックに優しげな視線を送るレーミア。
聖レヌーバ公国。大陸の南に位置する小国らしい。自然との調和を重んじる国で閉鎖的な風土を持っているらしい。
「なるほどな……そして、レーミアはそこの上流階級の生まれってわけだな」
「え?」
「違うのかな?てっきり騎士の護衛が何人もついているから偉い人かなって思ったけど……」
「いえ、偉いのは父でして、私ではありません。父は心配性ですから、それで騎士団の一つを私の護衛に当てたんです」
それを偉いというと思うのだが……どうやら彼女は上流階級の生まれで間違いないようだ。
(ってことは、やっぱり呼び捨ては不味いのかな)
クリップ達、騎士団の前では自重するようにしよう。相当、レーミアの事を大切にしていたようだしな。
「リクオ様の故郷はどんな所なんですか?私、是非聞きたいです!東方って未だに詳しく知られていない神秘の国って言われてますからね!」
「え、えっと、それはその……」
何と言うべきか……東方出身なんていうのは、所詮はただの誤魔化しだ。どんな国なのか、分かるはずなんて無い。
だが、東方っていうのはこの大陸じゃあまり知られていない場所なんだよな……なら多少適当に言ってもばれないのでは。
そう思い至ったリックは自分の故郷、つまりはこの世界で言うなら異世界に当たる場所について語ることにした。
なるべく、突拍子の無いことを言わないように気を付けながら。
リックの話を目をキラキラさせながら聞くレーミア。嘘を吐いているようで、少し罪悪感を感じたがある意味でリックの故郷でもあるので構わないだろう。
思いつく限りのことを話していく。
「東方は凄いんですね!それほどまでに技術が発展している上に身分も無いなんて!信じられません!」
「あはは、ま、まぁね!」
(やばい、ちょっと話過ぎちまったか……!)
あまりにもレーミアが興味津津で聞いてきたため、つい調子に乗ってしまった。
レーミアは信じてくれているようだが……うむ、彼女が人にこのことを話したら、絶対にホラ話だと思うだろうな。
「リクオさんの国は基本的には人々は平等と申されていましたが、貴族も奴隷もいないのですか?」
「どっちもいないね……まぁ、社畜っていう奴隷と紙一重の存在はいるけど。逆に聞くけどこの世界……じゃなくて、この大陸には奴隷はいるの?」
「はい、残念ながら……私の国では奴隷制度は廃止しているのですが、ほとんどの国では使い捨ての労働力として彼らが酷使されています。主に差別階級である亜人種の方々が……」
「そうなんですか……」
この街ではあまり見かけないがやはり奴隷は存在するらしい。自由意思を奪われ、人に使われることを生業とする人々。
やはり聞いていて気持ちのいいものではない。
「……いつか東方に行ってみたいです。きっと楽園のような場所なのでしょうね」
「そ、そんあ大層な場所じゃないよ……あはは」
その後も二人は並んでグリア―ドの観光を続けていく。主に食べ歩きをメインとして都市の様々な場所を歩いていく。
グリア―ドの中心ともいえる庁舎に聖堂、市場やら……やがて日が傾き始めたので帰路に就くことにした。
レーミアから泊まっている宿の名前の聞き、それを地図で探していく。やがてたどり着くのは城かと思うほどの壮大な建物だった。見た限りでは六階建て。豪華な飾り付けがされ、高級感を醸し出していた。
まるで建物自体が貧乏人お断りと言っているかのような様相にリックは呆気にとられた。
「えっと……ここがレーミアが泊まっている宿屋、かな?」
「はい!間違いありません!」
「そっか……」
こんな最高級の宿場に泊まっているなんて、やはり彼女は相当な身分の方であるのは間違いないようだ。
「リクオ様、本日は本当にありがとうございました。助けていただいた上に、こんな楽しい時間も過ごさせてもらって……私、一生忘れません!」
「そんな大げさな!俺も楽しかったから礼は良いよ。それよりクリップさんに俺も謝らなくていいかな?なんだかんだ」
「それぐらいは大丈夫です!これ以上、リクオ様のお世話になるわけにはいきませんから。今日、黙って抜けだしてしまったことは私の口からしっかり謝りますから!」
レーミアはガッツポーズを浮かべながら呟く。
やがて別れ際、リックが踵を返して教会へと向かおうとした時、不意に袖をレーミアに引かれた。振り向くと何やら頬を赤らめたレーミアの姿が。
「……えと、その……リクオ様はまだグリア―ドにいらっしゃられますでしょうか?」
「うん、まだしばらくはこの都市にいるかな?」
少なくともフィーナを見つけるまでは。
「実は……盗賊に襲われたと父に報告したら、心配なされたみたいでさらに騎士団を送るから、それまではここで待っていろと言われたのですよ。だから、その……」
徐々にレーミアの頬に赤みがさしていく。顔をうつむけ、もじもじとしていた。
「もしリクオ様がよろしかったら……ここにまた尋ねてきてもらえませんか?私、まだリクオ様とお話がしたいです……!」
小動物のように体を縮こませながらレーミアは上目遣いで見つめてきた。その凶悪な可愛らしさに一瞬、意識を飛ばすリック。
女の子にめっぽう弱い彼に断れるはずはなく……
「う、うん、またお邪魔させてもらうよ」
頭をかきながらそう答えることしかできなかった。




