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教会の神父

「う~ん……」


 グリア―ドに来て四日目の朝。リックは冒険者ギルド、一階の集会所の隅の席でひたすら唸っていた。


 目の前にあるのは自分の全財産が詰まった袋。


 朝、起床すると同時にギルドへと向かい、交換書と引き換えに魔石の換金を受けた。フィーナと共に倒したあの大型の魔物から出てきた魔石だ。

 

 かなりの力を秘めた高純度の魔石だったようで換金額は五万エキルほどだった。


 この世界の貨幣価値がまだ理解できていないリックにはピンとこない額だったが、キャミルに聞いてみると質素に暮らす分なら一年は何とか持つ額らしい。


 そして今までに行った依頼の報酬と合わせると七万エキル。


 冒険者としてしっかり装備を整えたのならすぐに無くなってしまう額でもあるが、当面の資金としてはこれで問題はない。

 

 それをじ~と眺めながらリックはこれからどうするべきかをひたすら悩んでいた。


 フィーナは言った。


 魔石の換金が済んだらこの都市を出ろと。その言葉に従うのならば今すぐにでもグリア―ドから出立しなければならないのだが……


(結局、昨日もフィーナさんは帰ってこなかったしな……)


 このまましっかりとした礼も言えず、彼女と別れるのはどうしても納得が出来ない。


 かといって、都市に居てもいずれ捕まるかもしれないわけで……


「う~ん……」


 思考は堂々巡り。自分がどうするべきなのか、まるで分からずただ頭を抱えていた。


 そうして無為な時間がひたすら過ぎていく……そんな中、どうするべきかではなく、自分がどうしたいのかを考えてみることにする。

 

(……やっぱ、フィーナさんとこのまま別れるのは嫌だよな)


 それがたどり着いた結論。命の恩人とあんな半端な別れ方をするのはどうしても納得できなかった。


 よし……もう一回だけフィーナさんに会おう!


 そして力を貸したいのだともう一度、告げようじゃないか。自分に何が出来るかどうかは分からないが

、頼まれればどんなことでもやるつもりだ。

 

 それにラフィにもつい先日、フィーナを頼むと頼まれたじゃないか。自分はそれにはっきり頷いたのだ。


 その言葉を無碍にするわけにはいかない。


 また今度、断られたらきっぱりと諦めようとも覚悟する。これ以上、下手にまとわりついても迷惑に感じるだけだろう。


 そう決心するとひどく心がすっきりとした。


「よし、そうしよう!…………って言ってもフィーナさんどこにいるんだろう?」


 宿にいればいつか戻ってくるかもしれないが、いつかでは少し困る。


 そもそも宿に帰ってこないということは、何か問題でも起こったのではないか?


 怪我をしたり、捕まったりしているのかも……。


 彼女が強いのは分かるが、別れてから約二日も戻ってきてないとなると、どうしても嫌な想像が浮き上がってくる。


(そう、考えたら心配になってきたぞ……)


 危険かもしれないが、探しにいこう。


 これだけ広い都市なのだ。困難かもしれないがただ待っているよりかはマシだ。


 真っ先に探すべきは八件目の殺人が起こったとされるリムルカ横町。


 フィーナがそこへと向かったのは一昨日のことで、もう居ないかもしれないが手掛かりがつかめるかもしれない。


 早速、リックは椅子から立ち上がり、リムルカ横町の場所を受付嬢であるキャミルに聞いてみることにした。



 リムルカ横町はグリア―ドの南西に位置している。


 この区画はいわば職人街であり、鍛冶屋、仕立て屋などの職人が製品を作ると共に、自分の店で客に商品を販売している場所だ。


 冒険者から一般人に至るまで様々な人が行きかっている。

 路肩には露店なども開かれており、相当の活気があった。


 フードで顔を隠しながら、リックは人ごみの中を目立たぬよう歩いている。


 さて、ここまで無事に来れたのは良かったものの、これからどうするべきか……。


 グぅ~~。


「まずは腹ごしらえかな……」


 露店から何とも香ばしい匂いが漂ってきて、思わず腹を押さえた。

 香りに誘われるようにふら~と幽鬼のような足取りで店の前に立つ。 


 鳥の肉のようなモノを串に突き刺し、たれを付け焼いている、


「あの、これは一体、何の肉何ですか?」


 露店で串を焼いていた恰幅の良いおばさんに尋ねる。


「ん?これはね、ペッカーの肉だよ。茶色い毛で覆われた鳥の肉、兄さんは食べたことないのかい?」


「えぇ、初めてですね」


「それなら是非、食べてみなよ。美味しいよ~!」


 差し出された串焼きを見て、唾液を呑み込んだ。値段は200エキル。懐の財布から効果を数枚、取り出し串焼きと交換する。


「ふふ、毎度あり!」


 湯気が出る熱々の串焼きを口に含む。口に濃厚なタレの味と肉汁が広がり、自然に顔がほころんだ。

 

「これは、美味しいですね!」


「だろ~!ほらほら、それだけじゃまだ足りないだろ、食べな食べな!」


 さらに差し出された串焼きの誘惑に逆らえず、リックはまたしても硬貨と交換にそれを受け取った。


「どもっす……それより一昨日でしたっけ?この辺りで殺人があったそうですね?それはどこですか?」


 露店のおばさんは一瞬だけ眉をひそめ、そしてリックが背負う剣をちらりと見る。


「何だい、アンタもあの賞金首を追っている冒険者なのかい?」


「まぁ、そんなところです……」

 

「ふぅ~ん……現場ならそこの曲がり角を右へ行ったあたりさね。知っていると思うがまた商人だ、死体は無いけど、まだ血がびったりとこびりついているから、すぐに分かるよ」


 そう言うとおばさんは露店から東側を指さした。


「余計なお節介かもしれないけど、いくら金が欲しいからって殺人犯を追うのは止めておいた方がいいと思うね。今回の商人は腕利きの冒険者を雇ったみたいだけど、それも含めて皆殺しだよ」


「え?……冒険者の方も殺されたんですか?」


「あぁ、三人ほどね。その人達もバラバラにされちまったもんだから、誰がどのパーツなのか、分からなくて死体の回収すら困難だったらしいよ」


 それを聞いて串焼きを口へ運んでいた手が止まる。それを想像して、食事中に聞くんじゃなかったと後悔した。


「自警団と冒険者が血眼になって探しているらしいけど、全然見つけられないらしいね。まったく……三日前、自警団が犯人を逃がしたりなんかしなければ、あの商人も殺されずにすんだのにね~」


「あ、あはは……まったくですよね~」


 ぎこちない苦笑いを浮かべるリック。


 さすがにうまい返答が浮かんでこなかった。串焼きも食べ終り、一度、八件目の現場を見に行こうかとしたリックだったが、


「そういえば……その殺人が起こった日なんですけど、この辺りで十代後半ぐらいの金髪で綺麗な女の子を見かけませんでしたか?」


「……え?」


「いや、実は俺とパーティーを組んでいる子なんですけど、事件を聞いたらすぐにすっ飛んでいってしまて、まだ帰ってこないんです……見かけたりなんかしてませんか?」


「それは心配だね……う~ん、金の髪をした女の子か、あの時は冒険者と自警団、野次馬でごった返していたからね。ちょっと分からないな~」


「そう、ですか……ありがとうございます」


 期待はしていなかったが、それでも肩を落としてしまう。フィーナの容姿は目立つため、基本的に街に出る時はフードを被っている。やはり、容姿を伝えても難しいか……


 露店のおばさんに礼を告げ、リックは殺人の起こった場所へと向かった。その場所はすぐに分かった。


 道の端、家と家の隙間、そこは当たり一面が赤黒く染まっており、誰もが近寄らずにいたのだ。


 さすがにもう死体は存在しないが、まき散らされた血の痕跡から現場を想像するのは容易い。


 未だに血の匂いが漂ってきそうでリックは顔をしかめた。


 先ほどのおばさんは商人と護衛、四人もの人が殺されたと言っていたな。


 つまりはここには四つもの死体が合ったということか、そう思うと背筋が震えあがってきた。


(で、現場には来てみたものの……どうしようか?)


 地面に赤黒いシミがこべり付いているだけで、それ以外に手掛かりになりそうなものは無い。


 二日前、フィーナはここに来たのは間違いないだろうがここからどうしたのだろう。リックには見当もつかなかった。


 どうすればフィーナを見つけることが出来るのだろう、リックは近くの壁に背中を付けながら考え出した。 


 手当たりしだい、周りの人に聞いて回るか……いや、それは危険すぎるだろうと首を振った。


 今までの経験からおそらく、自警団の手配書からリックだと判別する者はいないようだ。


 だが、自分が自警団に捕縛された時、野次馬の何人かがそれを見物していたはずだ。


 もし、その人達に声を掛けてしまったのならアウト。騒ぎになるのは間違いない。


(来てみたものの……フィーナさんを探す手段が見つからないな)


 さて、どうしたものかと早くも途方に暮れたところで、不意に道の先で銀色の何かに反射した太陽の光が目に飛び込んできた。


 顔を向けると白銀の甲冑を身にまとった兵士達が四人。


 自警団だ!


 とっさにフードを深く被り顔をそらす。どこか隠れる場所は無いかと探したがそう簡単に見つかるはずもなく、リックは近くにあった露店を見るふりをするため、腰を落とした。


 アクセサリーショップだろうか?地面にシートが引かれ、その上の銀細工がいくつかあるのを見ながらも、意識は背後に集中していた。


 甲冑の音が近づくにつれ動悸が激しくなる。

 やがて自警団はリックの背後まで来て……ゆっくりと遠ざかっていく。


 見つからなかったか……ほうっと息を吐いた所で、露店の店主が自分を見ていることに気付いた。


 リックは慌てて、アクセサリーに興味がある振りをするため、目の前にあった銀細工をじっと見つめた。


「おや、お客さん、お目が高いね!それに興味を持つとは!」


「え?ああ、はい!良いデザインですよね、これは」


 リックが何となく指を指したのは、五芒星をかたどった銀のアクセサリー。


 正直、何の興味もなかったが話を合わせるため、取りあえずいかにも興味があるように装う。


「お客さん、良い目をしているよね!この品はね、聖マスコット・ビィランの作品なんですよ!裏に見えるでしょ?彼のサインが!」


「え?あ?ま、マス……?」


「あれ、知らないの?教会が認定する聖者様だよ?そんなことないよね?」


 訝しげに商人は眉をひそめる。


 不味い、ここで怪しまれたら一巻の終わりだ……!


「も、もちろん知ってますよ!知らないわけないじゃないですか!失礼だな!有名な人ですからね、ついこの間も街で見かけましたよ!」


「……聖マスコットは二百年前に死んでるんだけど?」


「で、ですよね~!やっぱりそうだと思った!ってことはこの前、街で見かけたのは偽物だったのかな?それとも幽霊とか?い、いや~、俺ってそういう霊感が結構、強いみたいでね。よく見ちゃうんでよ!その……セイ・マスカットさんも」


「……マスカットって……何でフルーツになってんのよ」


 ギャーッ!全然、誤魔化せない!むしろ不信感をあおっただけじゃないか!

 

「そ、それで、これはいくらなんですか?そんな良いモノなら値段も張るんじゃ……!」


 話題を変えるつもりで聞いたのだが、これは明らかに失態だった。


 商人は目の前のおのぼりさんをカモだと認識したのか、目をキラキラさせながら胸を張った。


「何と何と、驚くなかれ!こんな国宝級の聖遺物がたったの七十万エキル……!」


「あっ、無理ですね。俺、七万しか持ってないです」


「…………のところをさらに割り引いて六万八千エキルだッ!ちっくしょうッ!持ってけドロボーッ!?」


 おい、こいつ……俺が有り金を言った途端、金額を十分の一にまで落としこんだぞ。


 今のやりとりで分かった、間違いなくぼったくりだ。


 ただのアクセサリーを高値で売り付けようとしている。


 先ほどの聖何とかって人の作品だと言っていたが、それも嘘かも知れない。


「あぁ~、ちょっと高いので遠慮しておきますよ」


「でもでも。こんなチャンス滅多に無いよ!ここで買っとかないと絶対、損だよ!」


 商人はリックの腕を捕まえ、しつこく食い下がってくる。


「いや、かといって有り金を全部を使う訳には……それにあまりアクセサリーとかにも興味がないですし」


「はぁッ!興味無いってどういうことだよ!てめぇが見に来たんだろうがよッ!」


 痺れを切らした商人が浮かべていた営業をスマイルを消し、ドス聞いた声を上げる。


 今のは失言だったと後悔するリック。だが、商人の頭にはもう血が昇っていた。


「こっちが割り引いてやってんのによ!何だ!まだまけろってか!」


「いや、そういうことを言ってるんじゃなくてですね……」


 不味いな。男の声がやけにでかいせいで周りから注目を浴びている


 こんな所で騒ぎを起こしたら先ほどの自警団が戻ってくるかもしれない。


 そうなったらフィーナを探すどころじゃない。また牢獄へと逆戻りだ。


 強引に手を振り払ったのなら商人が騒ぎだすのは間違いないだろうし……どうする、いっそ金を払って解決するか?


 思わぬ事態にリックはほとほと困り果てていたのだが、不意にリックの隣へと何者かが座り込んだ。


「ふむ……これが聖マスコット様の聖遺物ですか」


 アクセサリーを見てそう呟いたのは純白の法衣を身に纏った二十代後半の男性。


 決して美形ではないのだが、不思議と親しみを感じるような顔立ちをしていた。顔には丸眼鏡を掛けており、それが何ともいえない愛嬌を醸し出している。


 彼がアクセサリーをじっくり眺めた途端、商人の顔が蒼白になる。


「げッ、し、神父様……!」


「先ほどから貴方はこれがマスコット様の作品だと申されていましたが、だとしたら驚くべき事態ですね。これは聖遺物ということになり、教会に提出しなければならないものはず」


「あっ、いや、それはその……」


「そして……万が一の話ですがこれが偽物だった場合、教会が認定する聖者様を穢したとして、罰を受けることになると思いますが……そんなことはありませんよね?」


 神父がにこりと笑みを浮かべると、対症的に商人の顔が激しく歪む。


 そして、ひったくるかのようにアクセサリーを奪いとった。


「お、俺もそのアクセサリーは譲りうけたものだから、詳しくは知らないんですよ、ひょっとしたら偽物って可能性もあるかもしれないな……!ってなわけだから、知り合いの鑑定士に頼んで確認してもらいますよ、今日の所はこれで!」


 あっという間に広げていた商品を袋に包みこむと、颯爽と走り去っていく。


 あまりの素早さにリックはポカンと呆けてしまった。先ほどあれほど、しつこく売り込んできたというのにこの引き際だ。


 その余りの切り替えの速さに感心すら覚える。


「まったく、聖者様の名を語って金儲けをするとは……この都市も落ちたものですね……」

 

 商人の背中を呆れるように見ながら神父様はため息を零した。


 事態の変化に驚きながらも、どうやらこの神父様が助けてくれたということは把握できた。


「あの、ありがとうございました」


「いえ、いいんですよ。」


 本当に助かった。あのまま押し切られていたら、有り金のほとんどを商人に奪いとられるところだった。


 神父様に向き直り深々と一礼すると、ふとその顔にどこか見覚えがあるような気がした。


 異世界で出会った人は限りなく少ないはずなのに……一体どこで?


「おや、確か貴方は……」


 神父様の方もリックの顔を見つめると、思い当たる節があるようでマジマジと眺める。


「三日前でしょうか?中央市場の方で会いませんでしたか?ほら、貴方が具合を悪くしたのかうずくまっていた時に?」


「あッ!」


 その言葉にリックも思いだす。グリア―ドに到着したばかりのころ、惨殺死体を見てショックを受けていた時のこと、誰かに介抱されたのだった。


 その事が頭に蘇り、顔から火が吹き出しそうなほどの羞恥が襲いかかる。


 確か、あの時……この世界がゲームの中では無く、異世界であるということがとても信じられず、醜態をさらしてしまったのだった。


 今思うと何て恥ずかしい……!


「あ、あの時は本当にすいませんでした!心配していただいたのに、あんな風に走り去ってしまって……」


「いえ、貴方が無事だったのなら構いませんよ。それより災難でしたね、あんなケチな商人に捕まってしまうなんて。気をつけなけばいけませんよ。彼らに隙を見せれば、身ぐるみを全て剥ぎ取られますからね」


「はい、反省しています……」


 思い返せばもっとうまいやり方があったはず。


 中途半端な自分の言いようが露天商を付けあがらせてしまった。


 NOとは言えない日本人、ここに極まれり。

 まったく自分の曖昧さにはうんざりだ。


「あの、俺、リックっていいます。貴方は、神父さんなんですか?」


「はい、そうですよ。この教区の担当を務めさせていただいています」


 人あたりの良さそうな表情を浮かべながら神父は手を差し出した。


 なるほど、神に仕える者としていかにもな方だった。


 柔和な顔つきに穏やかな声。まさに悩める者、迷える者に手を差し伸べる神父に相応しい男性だ。


「ふむ、先ほどの話を聞かせてもらったのですけど、貴方は我ら四聖教会について疎いのですか?聖マスコット様についてもご存じないようでしたので」


「あぁ~、はい、そうですね……東方の方から最近になってこの大陸に来たので……」


「あれ?東方のゴトウ諸島にも教会はあったと思いますが……」


 げっ、予想外の返答に顔が青ざめる。四聖教会って言ったけ?この宗教は東の果てまでも広がっているらしい。


「あ、あはは、そうでしたっけ?何分、山の奥の僻地に住んでいたので分からないんですよ、ははは……」


 少し苦しいかと思ったが、神父様は納得したように頷いた。


「そうですか……もし貴方に時間があるようなら、教会に一度来てみませんか?ここで会ったのも何かの縁、お茶ぐらいなら御馳走しますよ。興味があるのなら、四聖教についてもお話しますよ」


「え?それはその……」


 言葉に詰めるリック。これは、いわゆる宗教の勧誘か?いくら助けて貰ったとしてもそれは遠慮しておきたいが……


 戸惑う目の前の青年に対し、神父は人を安心させるような優しげな笑みを浮かべる。


「何、入信しろとは言いませんよ、ただ知ってほしいだけです。この大陸では四聖教は多くの国で国教となっており、影響力も大きいのです。

貴方が今まで住んでいた地域がどんな場所だったのかは存じませんけど、この大陸で旅を続けるなら知っておいた方がいいかもしれませんよ?」


 確かにそうかもしれない。人と宗教は切っても切れないものであるというし、この大陸では四聖教とやらが常識とも言える知識になっているのだろう。


 ふと学校の歴史の教師が言っていた言葉を思い出す。


 宗教というものはその土地の文化や歴史にも大きく関わるものであり、宗教を学ぶことによってそこに暮らす人々のアイデンティティを知ることが出来ると言う。


 この土地で生きていくのであれば無知である訳にも行かないだろう。


 それに……自警団がうろついている以上、この場にいるのは危険だ。


 そしていざ離れようとするなら神父様という同行者がいた方が疑われないんじゃないかという打算的な考えが頭をよぎる。


 利用しているようで申し訳ないが、ここはその言葉に甘えさせてもらおうと判断した。


「じゃあ……せっかくなのでお邪魔させてもらってもいいですか?」


 その言葉に神父は笑顔で頷くと、リックを教会へと導いていった。

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