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閑話
その家はさほど家々が建ち並んでいない場所に建っていた。
その周囲に緊張した面持ちで様子をうかがう男たちがいた。
すでに老いて髪はもはや白いほうが多くなった男が杖を片手に庭先で戦う女達を見ていた。
金切り声の女達の声、そして反対側から聞こえてくる野次馬たちの歓声を忌々しげに男たちは聞いていた。
「そろそろ佳境だな」
「いや、まだだ、時期を見誤るな」
老人が低い声でそう言う。
「時期を見誤れば恐ろしいことになる」
その額に冷たい汗が浮かんでいるのが見て取れた。
「あの日の惨劇は今でも目にこびりついていまだ消えることはない」
痩せた肩が小刻みに震えた。
「時期を見誤ると」
「双方から寄ってたかって袋叩き」
ぶるっと自らの身体を抱きしめて身震いした。
「くそう、また兵衛かよ」
怨嗟の響きのその声が周囲に連鎖する。
「地獄に落ちろ」
口々に言い合う。
「あれ見ろ」
うわなりとこなみが向き合っているのが、開いた窓から見えた。
たぶんおじいさんはそこそこ偉い人だと思ってください。