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さくらびより
土と青草の匂い。
柔らかに降り注ぐ太陽。
目を開けば、視界いっぱいの桜。
隣には大好きなあの人。
手元の本からは目を離さないけれど、
隣に感じるぬくもりが何よりも嬉しくて。愛しくて。
今日の日和があまりにも気持ち良いから、
くぁ、と小さな欠伸が漏れた。
「眠いの?」
隣から声が降ってきて、
同時に優しい掌が私の頭に乗っかって、
慣れた手付きでそっと撫ぜた。
…眠ってしまおうか。
身体を丸めてあの人の膝に頭を乗せる。
視線はとうに本に戻っていたけれど、
頭を撫でる手は変わらず優しいままだった。
意識が夢の世界へ飛び立とうとする直前、
微かに、しかし確かに、声が聞こえた。
それは、桜の声だったのかもしれない。
「幸せですか?」
「……」
「貴方ですよ、そこで寝ている貴方。
幸せですか?」
私はぼんやりとした頭でそれを聞きながら、
迷わずに答えた。
「ん、まぁね。」