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エクビア  作者: 生物係
9/10

  協力

「ここが・・・?」

村にあるギルドゲートを抜け、謎の部屋に入る。実験器具やら試薬瓶が並んでいる。

研究室のような雰囲気である。

「ここが私たち「カース」のギルドルームだ」

「ギルドルーム?カースって、あんたが所属するギルドのことか」

「そうだ。そのギルドマスターに会わせたくて君たちを探していた」

「へぇ、ギルドマスターねぇ」

奥の扉を進んでいくと、社長室のような部屋に入った

真ん中にある机の前で、椅子に座って本を読んでいる男がいる。

中国の拳法家のような服装の、あごに髭が残ったチョイワル風の親父である。

「ギルドマスター、ただいまお連れしました」

長身の鎧男が言う。

「おお、ずいぶん早かったな」

髭男はそう言うと、立ち上がって俺に握手を求めてきた。

「初めてになる。俺の名は双炎。面倒だが、カースのギルドマスターをやらせてもらってる。

まぁ、エルと二人だけのギルドなんだがな」

「は、初めまして」

「初めまして!」

動揺する俺をよそに、アイは元気に挨拶する。いつのまにか泣き止んでいた。

「おう、ねえちゃんは元気だな!お前さんも見習って、もう少し元気に挨拶しな!」

「そうだよぉ。コウヘイぃ」

いつもの調子で俺にからんでくる。ここは無視が一番だ。

「お前さんは確か、コウヘイだったな。ねえちゃんは?」

「アイだよ。かわいいでしょ!」

「はは、そりゃあかわいらしい名前だな。エルも見習ったらどうだ?」

「・・・私には必要ありません。名はあれば十分です」

「お前はいつもそうだよなぁ。堅いと言うかかわいげがないというか」

結構です、とエルが冷静な口調で言う。確かに、男でかわいげは必要ないだろ。しかも、デカイ鎧を着た男に。

「じゃあ、突っ立てんのもなんだからそこのソファーに座ってくれ」

髭男はそう言うと、ソファーに手を向けて勧めてくる。

とてもリアルな感触に、驚きを隠せずにいる。

「早速、入団届けでも書いてもらうかな」

「入団?待て、なんのことだ」

「もちろん、カースへの入団だよ。エルからなにも聴いていないのか?」

「聴いていない。というか、なんで俺の名前を知ってるんだ。いったいあんたらは何者なんだ」

「すいません。話す時間がとれませんでした」

エルがそう言って、双炎に謝罪する。

「そうか、面倒だが説明するしかねぇか」

よく聞いておけよ、と言いながら咳払いを始める。

「まず、目的を簡潔に話す。俺達は、ある『呪いの力』について調査しているんだ」

「呪いの力?」

「そうだ。このゲーム『NEXTCITY』にはある都市伝説があるんだ。それが『呪いの力』の存在だ。

その呪いの力の存在を解明したいと考えて、活動している」

「解明・・・?解明なんかしてどうすんだ。ゲームシステム側からお金でももらえるのか?」

「そんなことより価値のあるものだ。もしかしたら、世界のエネルギー問題の解決に

つながる発見になるかもしれない」

「は!?」

なにを言っているんだ、この髭男は。

「このゲームはジャン教授という有名な学者が作った理論のもと、製作された。それはゲームの背景

はもちろん、プログラムやシステムさえもな。SNNではよく知られている話だ」

「ジャン教授・・・」

そういえば、初日の情報収集で聞いたことがある。

記憶喪失に関係があると考え、真剣に聞いていた覚えがある。

すると突然、双炎は俺たちが座っているソファーを指差す。

「このソファーもそうだ。気持ち悪ぃくらいリアルなのはその名残だ。

その理論がジャン教授の名から取った『ジャン理論』だ。具体的にどんな理論かは知らんがな」

「なるほど、それは理解できた。しかし、その理論がなぜ世界のエネルギー問題解決につながるんだよ」

「それは単純な話だ。その『呪いの力』には莫大なエネルギーを産み出せる、と言われている」

「それは・・・事実なのか。どうせまゆつばだろ?」

「まぁそう思うのは当然のことだ。しかし、実例はちゃんとある。これを見ろ」

双炎がそういうと、壁に液晶画面が現れ、写真が表示される。

「これは先月、ゲーム内のある場所で出現したものだ」

なにやら壁に謎の紋様が描かれている。その中心にまるい水晶が埋め込まれている。

「この周辺で、多くのプレイヤーが吐き気や頭痛を訴えた」

「吐き気や頭痛?」

「この水晶台が原因だと、俺は考えてる」

「うーん、つまりリアルのプレイヤーに影響を及ぼす程、膨大なエネルギーを生み出していると?」

「そういうことだ。理解してくれたか?」

「・・・ああ、理解はした。だが、もうひとつ質問していいか」

「ああ、構わんが」

「なんで俺たちに入団して欲しいんだ?俺は始めてまもない初心者だ。あんたたちのほうが十分強いと思うが」

「お前、記憶がないんだろ?」

双炎がはっきりとした口調で言う。

「・・・あんた、なんでそれを?」

「驚いたか?噂で小耳に挟んでよ。『記憶喪失者』について調べてる男がいるって」

「・・・なるほど、それで記憶喪失の謎捜索に協力してやろうってことか」

「おお、物分かりのいいやつだな。そういうことだ。入団するだろ?

いい話だろ。お前にとっても、その子にとってもな」

「・・・アイのことも知ってるわけか」

双炎は不敵の笑みを浮かべて、エルを見た。どうやら、なにもかもお見通しみたいだ。

「わかったよ。協力させてもらう。よろしく頼むよ」

「よし、じゃあ早速向かうとするか!」

「マスター、彼らには早いのでは?」

「大丈夫だ。俺たちがついていけば問題はないだろ」

「・・・なんの話をしてるか知らんが、とりあえず解散させてもらえるか?休憩をもらいたい」

「構わんが、連絡はどうする?お前らのメールアドレス知らんぞ」

「おっと、そうだったな。これを登録してくれ」

自分とアイのメールアドレスをチャット機能で書く。

「アイの分もある」

「了解した。エルも登録しとけよ」

鎧男、エルがうなずく。相変わらず寡黙な男だ。

「じゃあ俺も休憩するかな。エル、ギルドルームの管理をよろしく頼むよ」

「わかりました」

髭男、双炎はログアウトした。

俺もそのままログアウトしようとした。しかし、アイをそのままにするわけにはいかないことに気付く。

いつもの場所に連れていくことにした。

「ほら、いくぞ」

「えー、もうちょっとここにいようよ」

「だめだ、エルさんの邪魔になる」

「私は構わないぞ。それに、君達に訊いておきたいことがある」

「訊いておきたいこと?」

「そう、もちろん呪いの力についてだ。時間はとらない」

「呪いの力・・・俺達にわかることはないぞ。あんた達のほうが詳しいと思うが」

「いや、君達にしかわからないことだ。君達にしか」

「俺達にしか?」

「この断片の片方を、君達は持ってないか?」

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