宝探し
NEXTCITYにログインしてみると、昨日と同じ村に転送された。
どうやらログイン時の場所は決まってるみたいだ。
「おはよう!」
ロングヘアーで白衣の少女、呼び出した本人が話しかけてきた。
今日も変わらず元気みたいだ。羨ましくなる限りだ。
「おはよう。なんの用だ?」
「何って。ネットゲームなんだから遊ぼうよ」
「あ、あぁ。そうだったな」
自分の記憶に手一杯で、ゲームのことなど忘れていた。
そういえばここはゲーム世界なんだったな。
「いいが、俺は全くの初心者だぞ。操作の基本もわからん」
「いいよ、いいよ。あんたの装備見ればわかるから。初期装備でしょそれ」
「おそらく・・・そうだな」
「じゃあ早速フィールドに出て、宝探ししようよ」
彼女に手を掴まれ、引っ張られる。リアルな感触が手に広がる。
「ま、待て。俺の話聴いてたか。基本操作がわからないんだ」
「そんなの現場に出て、説明するよ。それとも、今ベラベラ長い説明して欲しい?」
俺は少し考えて、返事をした。
「いや、現場で説明してくれ。その方が理解しやすい」
ここで長い話を聴くよりは、現場で動きながら聴いた方が身に付きやすい。
習うより慣れろってところだ。
「あっそう。じゃあ出発進行!」
「お、おう」
彼女に手を引かれて、転移装置の前に移動した。
「これでどうやってフィールドに?」
「んーとね。3つの元素を選択すれば自動的に転送してくれるんだ」
「3つの元素?これか」
選択肢のなかからフィールド作成を選び、元素選択画面が開いた。
「しかし、水素しかないぞ」
「そりゃそうでしょ。最初は水素のみなのよ。レベルが1だからね」
「そうか。じゃあ水素を3回選べばいいんだな」
「そうそう。フィールド作成が済んだら転送を選んで。
あと、私の転送も忘れずにね。一人じゃ心細いでしょ?」
「・・・・・・」
(別に頼んだわけではないが、確かに心細いな。基本操作もわからんし)
「あ!今心のなかでそんなことないって思ったでしょ!」
「ほら。準備終わったぞ。転送開始」
転送ボタンを押すと画面が暗くなった。作成したフィールドに転送されているみたいだ。
画面が明るくなると、目の前には大草原が広がっていた。ここがフィールドか。
「着いたね。早速宝探しよ!」
意気揚々な彼女についていくと、なにやら、緑色の肌をした人が近づいてきた。
「気を付けて!ゴブリンよ。モンスターの一種ね」
確かに、よくゲームに出てくるゴブリンだった。
メジャーすぎてなんだか恐ろしさがなかった。
「モンスターってことは・・・敵ってことか」
「戦闘開始よ!久し振りに腕がなるわ」
そういった彼女は、大きな杖を手元に出現させた。
戦闘に入ると自動的に出現するらしい。
(杖ってことは・・・魔法使いか?)
俺も同じく、手元に武器となる道具を出現させた。
(これは・・・銃?)
小さなハンドガンだった。もう片手にはナイフがあった。
「これで戦えってことか。しかし、これはどんな職業なんだ」
RPGゲームでハンドガンとナイフをもった職業なんか聞いたことない。
まるで軍隊の兵隊みたいな装備だ。
「銃装士っていう職業ね。銃を主とした武器を使ったヒットエンドランな戦い方が特徴ね」
試しにゴブリンを攻撃してみる。ハンドガンで相手を弱らせ、近づいてきたらナイフで切りつける。
距離を離したら、ハンドガンで銃撃する。この繰り返しで十分戦えるみたいだ。
「なるほど。しかし、威力に欠けるな」
「そんなことないわ。レベルを上げたり、特定の条件を満たすと他の武器も
使えるようになるのよ。なかにはロケットランチャーなんてものもあるから威力絶大だわ」
「・・・なんか無茶苦茶だな」
「そう?私は普通だと思うけど・・・な!」
彼女が唱えていた魔法を放つ。足元の植物が異常成長してゴブリンを貫く。
かなりエグい、というか残酷な魔法だな。
「環境を操る魔法か?」
「環境・・・まぁそうだね。正確には物体を構成する原子を操作する魔法ね。錬金術とも呼ばれてる」
「錬金術って、あの化学の原点になった?」
「そ。それにモジって開発された技術らしいよ。だから、錬金術士って呼ばれてる職業よ」
開発された技術?なんだが現実の技術みたいに言うな。
「さ、おしゃべりはこの辺にしてこいつらを一掃しましょう」
進むごとに敵が増えていく。ゴブリン以外のモンスターも、いつのまにか混じっていた。
「了解しました。錬金術士さんよ」
情報収集はできなさそうだな。そう思いながら俺は走り出した。