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猫、時々姫君  作者: 篠原 皐月
プロローグ
1/55

十七年前の出来事

 今にも雨が降り出しそうな、曇天の下。

 賑やかな繁華街を抜けて、人気がない街外れの街道までやって来た傭兵上がりの男は、周囲に人目がないのを確認してから足を止めた。彼はその抜け目がなさそうな顔を皮肉げな笑いで歪めつつ、服の合わせ目の中から布の包みを取り出す。すると周囲の様子が変わったのを察したのか、その中に入っていた小さな存在が身じろぎし、重なり合った布の隙間から顔を出して「みゅ~みゅ~」と微かな鳴き声を上げた。


「本当に、お偉いさんのする事は、全然分からねえな」

 手の中の黒猫は全く状況判断ができないらしく、それを見下ろしながら髭面の初老の男は、本気で首を捻った。

「こんな生まれたばかりの子猫なんて、そこら辺に転がしておけばそのうち勝手に死ぬに決まっているのに。それをわざわざ『王都の外まで連れて行って捨てて来い』とは。なんの意味があるのかね?」

 そうして一緒に布に包まれていた黄金色に輝く短剣を取り上げ、薄笑いを浮かべる。


「しかも『これも余人の目に触れない様に処分しろ』だと? こんな立派な物、嵌めこんである宝石を売り払うだけで暫く遊んで暮らせるってのに、誰がみすみす埋めたり溶かしたりするかよ」

 そして用は済んだとばかりに男は舗装されていない道の片隅に布の塊を置き、満足そうな笑顔で立ち上がった。


「これはお前が持っていても、役に立たないからな。俺が有効活用してやるよ。じゃ、せいぜい長生きしろよ? チビ」

「みぃ~」

 そうして気休めにもならない声をかけて高笑いしながら去っていく男の頭上から、少しづつ冷たい雨が降り始めていた。


 書き溜めていた内容が溜まって来たので、少しずつ出す事にしました。表に出すのは初のファンタジー物になります。宜しかったらお付き合い下さい。

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