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9面

●9面「オープニング」


神官ヘムとのいさかいで撤退することとなった神魂騎士団は、いったん西部方面の進軍を諦め、一月ほどの南東方向に旅をすすめながら、ガリリア各都市の解放を検討していた。


「さっき言った通り、俺はくろがねのジェイ、傭兵だ。粘り強さだけが自慢でね。しんがりなら、まかしてくれよ!」

「おれの武器は斧、エックスってんだ。腕っ節には、自信があるぜ!」

「オレ様は弓使いのアール、狙ったモンは、敵だろうが女だろうが一撃で狙い撃つぜ!」


「ワシは鎧騎士レイド、火の民の将軍をしておった。円卓騎士団の荷担に反する進言でクビになってしまってな、歳はとっても若い者には負けんぞ!まあ、仲良くやろうぞ。」

「オレは騎馬兵セロー、干し草はたっぷりたのむぜ。コイツあってのオレだからな!」

「俺様は義賊ボブキャット。円卓騎士団の民から搾り取るやり方が気に食わなくってな、盗賊の仕事だってお前らには必要だろう。微力ながら力になってやるぜ。」

「ワタシは神官エストレア、コホン。神官の力はまだまだ全盛期よ。女の幸せは、もう諦めたわ。」


「宿命を背負わぬ者達よ、いいでしょう、神魂騎士団の末席に名を連ねる事を許しましょう。人間ごときが、どこまで出来るか、その力を示すがいいでしょう。」


「言われなくてもやってやるぜ。それに、俺達は、神魂騎士団の志に賛同してはせ参じただけだ、お前みたいに冷酷な神の代弁者の言いなりになる気はねえ。お前がいたずらに人間の世をおびやかす、神魂騎士の志に水を指す曲者なら、神だろうがなんだろうが、俺たちが王子様を護ってやろうって算段だぜ。」

「そうそう、王子様が神様のおもちゃにならないように見張りに来たっつーわけよ。」

「突端はなんであれ、ワシらの世界の始末は、ワシらでなんとかしたいもんでな。」


「せいぜい、足手まといにならぬよう、せいせい気張ることですね…。フン。」


「この位置からだと、南東のシーエに向かうしかないようですね…。シーエから順番に都市を攻略して、民衆の指示を集めれば、自然とガリリア統一の念願は叶うことでしょう。シーエもパーパロット同様、最後の最後まで戦い抜いた街。まだ警備は手薄で、攻めるのもたやすいはず。」

「なら話は早い、さっさと片付けて、次にいってやるゼ…。」


「そう簡単にはいかないようですよ。街を囲むように遊牧民達がまもっていますよ…。」

ハヤブサのうながす通り、街の外周を火の民の長をはじめとした一団が取り囲んでいる。

「あいつら!ぬけぬけとアタイの前に姿を現すとは!今度こそトドメをさしてやる!!」


二頭立ての馬車のもう一頭をひったくると、アネーロ・ヒンデンブルクが巨大な斧を肩にかかえて疾走する!

「火の民の長、フューラー!ここで会ったが百年目、落とし前はキッチリつけさせてもらうよ!!」

「このシーエ、円卓騎士団から我が火の民がうけたまわった地、お前達をここで倒して、安住の地を得るのだ!!」

「ふん、居場所なんてカタチじゃない、自分の心につくるもんだよ!」


「アネーロ・ヒンデンブルク、突出するとは、神魂騎士とはいえ無敵ではないのです。皆の者、いきなさい!」

馬上のシグマとハヤブサを含めた神魂騎士団は、号令に呼応して早駆けをはじめる!


火の民独自の武装とも言える火矢が、神魂騎士たちに降り注ぐ!!


しかし、疾走する馬を自在に操り、神魂騎士たちはめいめいに火の雨をくぐりぬけ、敵陣を崩しはじめる。

彼らには火の矢が止まって見えるかのごとく、命中せんとする火矢をたたき落としながら突進出来るのだ。

「当たりませんよ。」

「こんなもん、食らわねえゼ。」


「さあ、土下座するならば今のうちだよ!」

アネーロは巨大な鋼斧を悠々と担ぎ、本陣をまっぷたつに断ち切るが如く、雑兵をないで火の民の長に向けて突入した。


(9面開始)

(9面敵殲滅にて終了)


火の民の長、フューラーを失った一団は、蜘蛛の子を散らすように四散して、シーエから南にある、ウェイブ方面へと落ち延びていく…。


「神魂騎士団よ、すべての敵を殲滅しなさいぃ!ふふふ…ひゃっひゃっひゃっ!」

神官ヘムは、一騎当千の神魂騎士たちの強さが我が物がごとくに、酔いしれるように絶叫する。


「ヘムのおっちゃん、アニキ達は仕方なく戦ってるんだ、抵抗しない人間は敵じゃないってば。」

「小僧、良く分かってんじゃねえか、ヘムさんよう。オレらは円卓騎士団が本命なんだ、雑魚の相手はしなくていいだろ?」

「夫の言うとおり、無益な殺生は神々も望んでいません。あなたは神からの指令を受けて伝える役割、目的と手段をはき違えてはいけません。」


神官はたわむれに自在に出来る神魂騎士の魂をもてあそんで引き絞り、恍惚の表情で、

「こわっぱが神官に指図するとはぁぁぁ!あなたたちは黙って指示に従えばいいのです!ひゃーはっは!このままウェイブ方面に進攻しますよぅぅぅぅ!」


「神官ヘム、国を救うのが僕達の役目!あぁぁぁ!!」

「ボクたちは、あなたの手駒じゃなぃ…!んぁ!」

「……!!!!」

「フェーラーだけやれば、ここじゃ十分だろ!?ぁぁぁああああンっ!!」

「神官ヘム、力は、力は、護るための力なんだ。サ…サリアンっぅぅ!!」

「オメェ、戦争屋の戦争は、遊びじゃねえんだっ…うぐぉぉぉぉぉ!!」

「神よ、適切な天命は、この者では成せませ…ぁああああぁ!!」


「ん!んごぁっ!!」

何が起こったのか!?

一閃!!


神魂騎士団の呪縛が突然解け、物理攻撃をものともしないはずの神官ヘムに黒々と輝く細剣が突き刺さり、一撃にて絶命せしめている…その者は…。西の民と共闘していたはずのティーゲルが、手勢を連れて、機をうかがっていたのだ!


「神官ちゃーん。アンタなら絶対また仲間割れしてくれると思ってたヨ!ざまあないね!そうそう、あんたらが西で負けたから、アタシゃ、たなボタで副将軍様だよ!笑いが止まらないね!おまけに、この剣までいただいちゃって、このクソむかつく神官ちゃんも、ほーら、このとおりブチ殺しだよ!?いいだろう?」


「女、なにを企んでここにきた!あんたは、僕の父母のかたきだ!」

呪縛から抜けきれぬまま、フェーザーは立ち上がって震えながら叫ぶ!

「女ってお言いじゃないよ、ティーゲルって名があるんだっ!!」

ティーゲルは息も絶え絶えのフェーザーを思い切り張り飛ばす!


「にいちゃん!」


「このクソ神官は、アンタらでも斬れない。不思議だろう?これはねぇ、そうさね、『ダークミスリル』とでも言っておこうかねぇ。教皇派は、なんで神々に気に入られてたかって、不思議だろ。これなんだよ、「神殺しの剣」を後生大事に抱え込んで、脅してたってことさね!それをバスチーフが手に入れたから、神々も手が出せないってワケさ。もちろんこれは、教皇魔導師を金と女につけ込んでコピーさせた模造品だがね、でもこのクソ神官をぶった斬るには十分ってわけだよ。いいテストになった!次のウェイブからは円卓騎士団、五輝将軍達が直々に相手してくれるって算段だよ!生きてたらまたあえるさね!あーっはっはっ!」


ティーゲルは手勢の者に神官ヘムの亡骸を引き取らせて早馬で東へと去っていった…。


「おい、オレ達、どうするんだ?」

「ボク達のリーダーはフェーザー君だよね。」

「そうだね、ボクちゃんにまかせるよ。」


「そうですね、我々神魂騎士団は、予定を変えずに各都市を首都へと向けて開放していきます。ウェイブに向かいましょう!それにしても、あのティーゲルの言っていた事、気になりますね…。」


フェーザー・ブルゲングルツは、少しだけ大人びた調子で、皆を率いんと、南への途を向かわせた。


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