2面
2面主人公、バラデロ・ハンマーシュミットのボイスとなります。
http://www.youtube.com/watch?v=pFBLQSPkXfE&feature=youtu.be
バラデロの敵役、「猪男」のボイスになります。
http://www.youtube.com/watch?v=HtMIDxAME_0&feature=youtu.be
●キャラ紹介②~「レーベン・スレイブ」
◆バラデロ・ハンマーシュミット
・小さい領土ながらも教皇派に属する貴族の第1子
・生まれつき左腕の手首が欠損した状態で出生。
・父母の持つ神官の治癒の力を継承していない。
(第2子が健常に産まれて来たら禍根になると、父母はあえて続子をもうけてはいない)
・父母の粘り強い訓練で日常生活には不自由ないまでに育つ。
・父母はガリリア大陸一の鍛冶屋に大金を投じて義手を発注。
・鍛冶屋の提案によって、現状の彼の技術を投じても、手のひらを握るぐらいの事しか出来ないと、鍛冶屋本人が長年研究していた万能銃の運用を提示。
・神官であった父は大いに悩んだが、生きる力をと了承。
・万能銃は装填する弾丸によって、弾丸、散弾、麻酔弾、毒弾と用途が違う。
・本人は大人しい性格だったものの、猪や熊狩りなど、領民を護るために自分の力を役立てられることに、だんだんと自信をもち、明るく領民と交流していく。
・身分の違いで諦めてはいるが、花屋の看板娘サリアン・プロハスカに淡い恋心を抱いている。
・内気な22歳。細身で美しい彫像のような身体の青年。
・幼いころから義手にあてがう独特のバイオリンを趣味としている。
●序章② ~「レーベン・スレイブ」
聖ガリリアント歴375年、教皇シムビアン13世の傀儡政権となった、聖ガリリア王国、首都の城塞都市ビリジアは、円卓騎士団の長、聖騎士バスチーフのクーデターによって戦火につつまれた。
戦力に劣る円卓騎士団は、首都ビリジアを陥落させたとはいえ、国内の今だ根強い教皇派の地方の貴族達になやまされていた…。そこで、円卓騎士団の一部を各地に派遣。王の名の下に「国家結束同盟」という徴兵制度をつくり、教皇派に属さない各地の貴族、そして一兵卒に至るまで、教皇派の殲滅を目的に「兵士狩り」を行った。
そこには、名を持たぬ傭兵やゴロツキなど、素性の確かならざるものが、この混乱に乗じて成り上がろうと、国家結束同盟に参じていくのだった・・・。
そして、教皇派の小貴族、ハンマーシュミット家の領地、パーパロットにも国家結束同盟の尖兵が送り込まれようとしていた。
父は領民全てを城に招き入れ、食量と武器を集めて籠城の策をとった。各地から落ち延びてきた騎士達を要に、領民達に志願兵をつのり、城塞にはしごをかけて、侵入してこようとする者たちを必死ではねのけていく。
「バラデロ君、こっちからたくさんくるぞ!」
騎士や剣を持ち慣れぬ領民たちの合図を受け、ハンマーシュミット家の嫡子、青年、バラデロ・ハンマーシュミットはこの義手がわりの万能銃を、一撃必中の精度で、国家結束同盟の兵士達を次々に撃ち抜いていく…
「エンデさん、右のはしごに誰もいなくなったから落として!」
「あいよ、バラデロ坊ちゃんが居れば、パーパロットはまだまだ落ちませんぜ。」
4年前、元服と同時に父が自分に与えてくれたこの万能銃は、熊狩りや猪狩りなど、領民と自分をつないでくれるかけはしとして、素晴らしい贈り物とバラデロは父に感謝した。しかし、4年間で熟達したその技術は、今や人殺しの道具でしかない。僕は城内の領民、そして父母を護らなくてはいけない、しかし思うのだ、その一撃、一撃で撃ち抜いていく男達にも、家族がいるかもしれないという事を…。
バラデロの活躍と、父母の神官としての治癒の力が相まって、ハンマーシュミット家の城は度重なる攻勢をはねのけ、いまや各地で堪え忍ぶ教皇派の貴族達を勇気づける、象徴的な存在にさえなっていた。
事を重く見た円卓騎士団は、正規兵含む1個連隊と、城塞破壊用の投石機を準備して何度目かの攻防を挑む。
高い城塞には弓も届かず、バラデロの万能銃の火薬を使った直線的な射撃は、少人数の戦いでの制圧は難しいと判断されたのだ。多くのはしごを同時にかけつつ、投石機から撃ち出される一撃、一撃が積み上げられた城塞を撃ち崩さんとしている。城内の中央に避難している女子供達からは、絶望に満ち満ちた悲鳴が聞こえてくる!
※1個連隊=ここでは300名
「騎士フォッケウルフ、もうその下の城壁は持ちません。下のところで白兵戦の指揮を!」
「おうとも!」
「エンデさん、僕の弾も集団戦用に散弾を運んでくれませんか?」
「バラデロ坊ちゃん…もう弾丸は、毒弾しか残っちゃいやせん…。」
「分かった。エンデさんも、申し訳ないけど剣を持って下へ…。」
バラデロ・ハンマーシュミットは、万能銃を肘から外して、長めのエストックが付いた義手に付け替え、収まり具合を確かめながら素振りする。首都ビリジアから落ち延びてきた騎士たちに多少の手ほどきは受けたものの、万能銃を作ったガリリア一の鍛冶屋、ゼルビス・アイゼンフートも、
「バラデロさん、アンタがこれを使うときが、決して来ない事を願ってるぜ…。」
と悲しそうな眼をしてこの一振りを渡したことを忘れてはいない。
「エンデさん、行こう!」
投石機が城壁を崩さんその地点へと兵を集めて、突進してくるで有ろう敵兵士を待ち受ける。
前衛は騎士フォッケウルフを筆頭とする戦闘のプロたち。街の志願兵、エンデのような老人、そしてバラデロ達は、後衛となって父母や女子供を集めている王座の間の入口で前衛が取りこぼした敵兵士を叩く算段になっている。
国家結束同盟は、基本的に構成員たちが、傭兵やゴロツキが多いため、忠誠とその働きを最大限に生かすため、敵の首謀者に賞金をかける。前の倍の規模での攻勢なので、多分その賞金も上げられているのだろう、ハンマーシュミット家の一族、いや今は多分僕の首にも多額の賞金がかかっているに違いない…。
「万能銃のバラデロはどぅこぉだぁあああ?」
下卑た声が王座の間に響き渡ると共に、頭を拳にぶら下げていた、騎士フォッケウルフを軽々と壁に投げつけた。
矢をもろともしないその全身鎧は無数の穴が空き、鉄板もひしゃげて、元の形をのこしていない。
「僕だよ…。」
この男、2メートルを有に超える巨躯に鋼鎧をまとい、片手には棘の付いた鉄球が先についた鎖状の武器、特大のモーニング・スターを軽々と振り回しながら戦いを楽しむように武者震いを止めない。
「に…200万ギエンぁ、小さぇ、小さぇぇぇぇぇぇ!早く、つけろ、ピストル。それがなきゃ金!もらえねぇだろうがぁぁぁぁぁっ!」
恫喝にも似た怒号は、部屋中の者達を絶望にたたき込む。
「エンデさん、(毒弾が残ってて良かったじゃないか)みんなを守ってて。」
初老のエンデが革袋に下げて携帯している義手がわりの万能銃に残された毒弾を装填して残りの弾丸を腰の横のケースに詰める。残り10発も無い上に、効くまでに時間がかかる毒弾…いままでは鎧の場合は隙間の鎖鎧の部分を狙えば絶命した。だが、この男のみなぎる体力のせいもあってか、この全身鎧には隙間がないほどの金属の量。これを着て動けることが信じがたい…。関節の僅かな継ぎ目を狙うのは、いくら百発百中の腕前のバラデロでも、いささか絶望的だった…
「おわったカ…いくぞぉぉぉぉぉ!!」
鎧騎士とは思えないスピードでの突進。狙っている暇さえない…叩きつけたモーニング・スターが石畳を破壊している。バラデロは全力でまわりこんで脇腹に一撃!
射撃は鎧の鋼板を撃ち抜いた貫通痕を残したが、下の鎖鎧までを貫通する力はなかったようだ。やはり隙間に直撃するしか勝機は見えない。
数回の突進に、数回の射撃。向こうのスタミナは無限だが、バラデロは大きく肩を上下させている。もともと身体の丈夫なほうではない…我が息子の危機を見つめるだけしかない父母、そして、ずーっと言えずじまいの恋、花屋の看板娘、サリアン・プロハスカ。もうそのヒマワリのような笑顔もいまや凍り付いている…。
「ぶぅるるるぉぁぁあ!」
鬼ごっこももう限界だ…。バラデロは腹をくくって、突進のときに唯一動きのないのど元に一点の望みをかけた。
きちんと狙いを定めてからの発射!限界まで引きつけてから撃ったため、命中した弾丸は鎖鎧を貫通し、反対側の鎖鎧の網で留まり、猛毒を充満…させるはずであった。
「いで、いでぇぇぇぇぇだろうがよう!」
猪のようないななきをあげながら、銃口を安定させていたバラデロに向かって、突進の勢いをわずかに抑えつつも、あまっていた左手で思い切り突っ張りをかます!
「!!」
壁に叩きつけられて悶絶するバラデロ!、勢いを殺された一激のみで背骨がバラバラになる…。口腔には血の鉄の味があふれ、吐血が止まらない…。
「おまえら、ふん縛っておけよう!」
追いついて事の様子を見守っていたならずもの達に命じて一矢を報いたはずのバラデロは、放って置いても息絶える様子なのに、がんじがらめに縛られて壁に押しつけられる…。
「いでええ、ただかいのあどわぁ、女…オン、ナだぁぁぶるぅぅおう!」
エンデをはじめとする義勇兵たちはゴミのごとくに蹴散らされ、惨殺されていく。
取り囲む雑兵を使うこともなく、恐怖におののく男達はすべてただの塊のようにして壁に投げつけられて絶命していく。そして、巨躯を包んでいた鋼鎧を脱ぐと同時に、ならずもの達は喜声をあげて女たちを取り囲む…。
「いぢばん…ウマそうなの、喰う…。」
「ひいぃぃぃぃぃ!」
バラデロはこれから行われる陰惨な宴に、自分の想い人サリアン・プロハスカのその姿を見た…。
その華奢な腕は、あの猪のような男につるし上げられただけで、すでに脱臼している。
(やめろ…もう死ぬんだから…見せないで!!)
猪男は、相手をかんがみるまでもなく、戦いで怒張したそれを、強引にねじ込んだ…。
「ぎひぃぃぃぃ!」
(神様…もういいよ、早く死にたいんだ…!)
バラデロの懇願もむなしく、男はしばらく前後して、おもうがままに果てた。苦しみと悪寒で涙にまみれるサリアンの姿にさぞ満足そうに腰をあげる…が、その巨躯はすでに赤黒く変色し、地鳴りするほどの勢いで倒れて、息絶えた…。
バラデロ・ハンマーシュミットの渾身の一撃を賞賛するものは、既に誰もいない。
そして彼自身も悪夢にまみれながら息を引き取ろうとしていた…。
走馬灯だろうか、脳裏に直接声が響いてくる・・・。
「神々の眷族に屈服を誓うならば、うぬの魂を神魂として召し上げよう…」
(あなた誰?何を言っているの?わからないよ!)
「これなら分かりますか?」
きらびやかな装束を着た神官は見下すように冷たく言い放つと、
バラデロをがんじがらめにしていたロープが光とともにほどけ、支えを失った身体は、息絶えんかと力なく倒れる。
(助けてくれるのかい?でも、もういいんだ…。全て終わっちゃったんだ…。)
「皆の死を、見過ごすこと、救う力を、なさない者を神は許されません!」
バラデロの胸元に美しい肢体にふさわしい、繊細なペンダントが光と共に与えられる。
諦めたはずの心が、心身にみなぎる力、そして全身の治癒によって、前へ、前へとまなざしを向かせる!
話すことぐらいしかかなわなかったサリアン、その笑顔も、ならず者共によって繰り返される、おぞましい行為によってその輝きも失われている…
「破滅へのカンタータを奏でよう!」
(2面スタート)
骸となった老人、エンデの革袋から、エストックが付いた義手に付け替え、収まり具合を確かめながら、その表情にはいままでなかった殺意の影が、その殺気が全身にあふれだしている。
「!」
ものすごい速さで駆けだして跳躍、雑兵二人の交点をその長い刃で貫くと、次の瞬間には串刺しにした二人を既にうち捨てて、次のターゲットをえぐっている。
殺戮のリズムは、ものの数分で、たてつくもの全てを死の扉の向こう側にたたき込んだ…。
(2面エンド)
「アウトロダクション…」
「バラデロ様…私…私…」
殆ど生存者のいない中、サリアンが自分を頼りに着衣を直して、駆け寄ってくる。
血糊が茶色く変色した、肘を見下ろすと、バラデロはためらいもなくその腕をうつろな眼で前に突き出した…。
「絶望のセレナーデしか、聞こえないよ…」
想い人、サリアン・プロハスカは、小刻みに痙攣して、彼の胸元で逝った。
あるがままに様子を見ていた神官は、表情を曇らせ、
「バラデロ・ハンマーシュミット。多くは言いません。自らの魂を汚す者を、神々は好みません。さあ、あなたが仕えるべき、主君の元に行きましょう。」
「だったら、だったらどうしたらイイんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
バラデロは左腕の武装を外し、肘までしかないその腕を、何度も、何度も壁に叩きつけ、叫んだ!