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人外超えし最強〜人を宿し常軌を逸する良き悪しき再生譚〜  作者: ふなつさん
最悪の悲劇、最高のパートナー。

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第10話

第十話:連理の呼吸、虚空を砕く一撃


 塔の第一階層。冷気に満ちた大広間に、鋼鉄の巨像たちが発する重厚な駆動音が反響する。  アルティガの前に立ち塞がるのは、かつての文明が遺した防衛兵器『虚無の番人』。三メートルを超える巨躯に、魔力を帯びた巨大な戦槌を構えた魔像だ。


 だが、アルティガの瞳に焦りはない。一歩後ろ、彼の「影」に隠れるように位置取るライラとの間に、目に見えない魔力のパスが繋がっている。  二人は塔に辿り着くまでの道中、焚き火を囲んで新しい戦い方を練り上げていた。


『アルティガさん。あなたの龍としての強すぎる「出力」を、私が精神操作で最適化チューニングします。あなたが攻撃の起点になり、私がその力の「バルブ」を制御する……。二人の意識を一つにして戦うんです』


 それは、並の信頼関係では不可能な、命を預け合う双子のような共闘だった。


「……行くぞ、ライラ。感覚ラインを繋げ」 「はい、アルティガさん。――同調リンク、開始!」


 ライラがアルティガの背中に指先を触れさせた瞬間、彼の脳内に澄み渡った彼女の意識が流れ込んできた。    魔像が戦槌を振り下ろす。本来なら回避不能な広範囲の衝撃。だが、その直前、アルティガの視界にライラの視覚情報が重なった。


(――右、三〇度。衝撃の波及を〇・二秒後に相殺して。出力は二割、一点集中!)


 アルティガの右腕が、ライラの「計算」通りに動く。  無造作な振りに見えて、その実、魔像の力の結節点をピンポイントで突く一撃。  ゴォンッ! という硬質な音と共に、魔像の頑強な腕が、まるでもろい粘土細工のように粉砕された。


「……っ、これなら行ける!」


 アルティガは感嘆した。  自分一人で戦っていた時は、常に「力を使いすぎないよう」自制することにリソースを割かれ、動きに僅かな澱みが生じていた。だが今は、ライラが精神の「深部」でバランサーを引き受けてくれる。  彼は破壊衝動に怯えることなく、純粋にそのスペックを戦闘だけに全振りできた。


 次々に襲い来る魔像の群れに対し、二人は流れるような連携を見せる。  アルティガが踏み込み、ライラが彼の意識を先導する。アルティガの周囲に展開される龍の障壁は、ライラの精密な魔力制御によって、必要な瞬間に、必要な場所へと凝縮された。


(次は左上。ブレスはまだ溜めないで……今! 肺の魔力を右の掌に流して!)


 アルティガが掌を突き出すと、極細の蒼い閃光が走り、奥に控えていた数体の魔像を貫通して沈めた。    かつてのパーティ『聖銀の轍』では、アルティガが全員を引っ張っていた。  だが今は、隣に立つ少女が、彼の新しい「理性」となり、最強の牙を研ぎ澄ませている。


 最後の一体となった巨大な守護像が、コアを剥き出しにして咆哮する。  アルティガはライラの手を握り、初めて二人で「同時に」魔力を爆発させた。


「「――っ!!」」


 声も出さないほどの集中。アルティガの爪が、魔像の心臓部を深々と貫く。  結晶化した動力源が砕け散り、静寂が広間へと戻ってきた。  第一階層、完全攻略。


 アルティガは荒い息をつきながら、握っていたライラの手を緩めた。  ライラの額には汗が滲んでいたが、その表情はかつてないほど誇らしげだった。


「……凄いな。俺一人で戦うよりも、ずっと……『鋭い』戦いだった」


「私たちの勝ちですね、アルティガさん」


 アルティガは、自分の蒼い鱗に覆われた手を見つめた。  この少女と呼吸を合わせる限り、この忌まわしき力はただの破壊の道具ではなく、世界の不条理を穿つための「正義」になる。

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