表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人外超えし最強〜人を宿し常軌を逸する良き悪しき再生譚〜  作者: ふなつさん
最悪の悲劇、最高のパートナー。

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/12

第9話

第九話:弔いのつぶて、虚無への侵攻


 燃え盛る炎が消え、静まり返った村の跡地には、ただ焦げた匂いと絶望だけが漂っていた。  アルティガは、自らの暴走によって変わり果てた景色を、その黄金の瞳に焼き付けるように見つめていた。


「……アルティガさん」


 ライラの静かな呼びかけに、彼は黙って頷いた。  アルティガは、かつて聖剣を振るったその手で、土を掘り始めた。爪が剥がれ、鱗の隙間から血が滲んでも、彼は魔法を使うことさえ拒み、素手で穴を掘り続けた。  村人の数と同じだけの墓標を、道端の石を積み上げて作る。  数時間後、立ち並ぶ無数の石積みの前で、アルティガは深く、深く頭を下げた。


「……済まない」


 その一言に、彼のすべての悔恨が込められていた。  弔いを終えたアルティガの横顔からは、迷いが消えていた。それは、罪を許されたからではない。この消えない罪を背負ったまま、ライラのために生き、世界の呪いを断つという「呪い」を、自らに課したからだ。


「行くぞ、ライラ」


 アルティガはライラを抱き寄せると、再び地平線を蹴った。  もはや躊躇はない。風を裂き、音を置き去りにして、二人は平原を駆け抜けた。


 数時間後。  目前にそびえ立つ『断罪の塔』は、もはや風景の一部ではなく、威圧的な現実として二人の前に立ち塞がった。


「……なんて、冷たい気配なの」


 麓にたどり着いたライラが、思わず身震いした。  塔の壁面は、数千年の年月を経てなお漆黒の輝きを失わず、周囲の光を吸い込んでいるかのようだった。入り口となる巨大な石扉には、苦悶する龍の姿が刻まれており、それはまるで、今のアルティガの姿を嘲笑っているかのようでもある。


 アルティガが扉に手をかける。  瞬間、塔全体が共鳴するように低い振動を上げた。彼の右腕の鱗が、塔から放たれる呪いの魔力に反応して蒼白く明滅する。


「……適合、か。やはり俺を呼んでいるな、この場所が」


 アルティガが力を込めると、数トンはあるはずの石扉が、轟音と共にゆっくりと内側へ開かれた。  中から溢れ出してきたのは、濃厚な死の臭いと、身を切るような凍てついた魔力。


 普通の冒険者であれば、足を踏み入れた瞬間に精神を病むほどの重圧。だが、アルティガは一歩も引かなかった。  彼はライラの手を強く握り、闇の奥へと足を踏み出す。


「ここからは、俺が前だ。ライラ、俺の背中から離れるな」


「はい……! 信じています、アルティガさん」


 第一の塔、内部。  そこは、外観からは想像もつかないほど広大な、異質の空間が広がっていた。  天井は見えず、ただ上へと続く螺旋階段が、闇の中に溶け込んでいる。


 沈黙を破ったのは、闇の奥から響く、硬質な足音だった。  カチ、カチ、と規則正しく刻まれるその音と共に、塔の守護者――魔力を帯びた鋼の巨像ゴーレムたちが、瞳を紅く輝かせながら姿を現した。


「……来るか」


 アルティガが静かに構える。  村を滅ぼしたあの暴力。それを、今は目の前の「理」を砕くための力へと変える。  最強の龍人と、彼を導く少女。  二人の本当の攻略が、ここから始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ