身を任せる
それから数日、メリは来なかった。
次はいつ来るのか、聞いておけばよかった。
まさか3ヶ月後じゃないよね?
スマホに慣れて、いつでも連絡できると思い込んでいたけれど、
まさかスマホを持っていないなんて。
二週間が過ぎても、メリは現れなかった。
その間、私には変化が起きていた。
家の中の不要なものが気になり、断捨離を始め。
過去の嫌な記憶が浮かび、不安になることもあった。
強烈なデトックスの日々だった。
起き上がれない日も何日かあった。
良かったことは、家から、少しだけ外に出られるようになったことだ。
三週間が過ぎようとした頃、メリは現れた。
ダークグレーのワイドパンツに、白のラメ入りニット。
いつものように、突然ベランダから入ってくる。
この時代に突然来るのはタブーだけど、
メリだけは許せた。
「こんばんは!」
「ちょっと!
居酒屋みたいに入ってこないでよ。
三週間も音沙汰なしで、毎日もやもやしてたんだから!」
「そうなの?でも元気そうでよかった」
感情をぶつける私に、メリは冷静だった。
「……あれ?たしかに、元気かも」
メリはいつもの席に座り、足を組んだ。
「お茶、もらえる?」
「ルイボスティーでいい?」
「うん」
私は気持ちを落ち着けてルイボスティーをグラスに注いで、メリの前に置いた。
メリは喉が渇いていたのか、一気に飲み干した。
なぜ、いつもあんなに喉が渇いているのだろう。
メリのコップにもう一杯注いでから、私は椅子に座った。
「どう?軽い波動、送ってたけど変化あった?」
「不安は減ったよ。
不安があっても、乗り越えられるって思えるようになった。
家の中も片づいたし、少し外にも出られた」
「いいじゃない!」
言葉にして初めて、私は変化に気づいた。
「軽い波動になると、重たいものを手放したくなるの。
風船に重りがついてたら飛ばないでしょ?
重りの取れた風船は自由に飛んで行く!」
メリはまたお茶を飲んで話を続けた。
「流れに身を任せるって、大事なの。
川の流れに逆らって泳ぐのは大変だけど、
身を任せれば簡単に進んで行く、
そうやって力を抜いて人生の良い流れに乗るのよ。
無理をする、我慢をする時代は終わったのよ」
メリは少し疲れたように話した。
「簡単そうで、難しいよね。
防衛反応なのかな、身体に力が入っちゃう。
私は泳げない恐怖もあるから、なおさら・・・」
私が話すと、
「その恐怖心は、どこから来たの?」
メリが真っ直ぐにこちらを見て聞いてきた。
「……?」
「燃やせばいいのよ」
「え?恐怖心って燃やせるの?」
「感情は目に見えないけど、確かに存在する、だから燃やせる」
「空気が重たい日、あるでしょ?あれは感情エネルギー。
エネルギーが重いと、みんなイライラする」
「もし、みんなが軽い波動だったら……いじめも減るのかな」
「争いがゼロにはならないけど、
今よりは、ずっとましになると思う」
「争いは苦手、争いの減る世界がいいよね」
「私もそう願ってる」
メリは笑顔で言った。




