軽い波動
いつも心配ばかりしていた。
それが普通だと思っていた。
普通……。
「普通ってなんだろう?」
「普通は昔の人が考えた常識。
今の時代には合わないのかもしれない。
時代がこんなに変わったのに、
昔の常識が根付いている。今こそ、すべて手放す時なのよ。
不必要な常識、心配、不安といった重たい感情、
すべてを手放せた時に、ふゆさんは変われる。」
「それって難しくない?」
「う〜ん、だいぶね!
でも手放さないと、窮屈な生活になってしまう。
タバコをなかなかやめられない人も、
お医者さんに『このままじゃ命が危ない』って言われると、
パタッとやめる人、いるじゃない。
それと同じ。このまま家から出れない人生でいいの?
ふゆさんにはもう後がない、背水の陣ってこと。」
「背水の陣……。もう後がないのね、わかった、がんばる。
まず何からやったらいい?」
「何もしなくていいよ!」
「えっ?どういうこと?」
「がんばった先にしか成功がないと思った?」
「えっ?そうじゃないの?
行動しないと何もわからないし、
修行のようなものが必要だと思った。」
「必要ないよ。
ネガティブな感情は、とても重たい感情なの。
だから私が、毎日ふゆさんを軽い波動で包んであげる。
はじめは好転反応で、
重たい感情がドンと出てくるかもしれない。
でも、軽い波動に慣れたら、
不安も心配もなくなって、スッキリするよ。」
「軽い波動?」
「愚痴ばかりの人は、波動が重くなり、
いつも自分の納得いかないことを引き寄せる。
それは、自分と同じ波動の状況を引き寄せるから。
負のループって言うの。
今のふゆさんも、負のループにはまっているけどね!」
「えっ、私も!?そんな……」
「軽い波動に変えると、人生が変わるよ。」
「みんなが軽くなればいいってこと?」
「それが理想だけど、
生まれ持った遺伝子や育った環境のせいで、
軽い波動になれない人もいる。
それに、重たい感情は悪じゃない。
コインの表と裏と一緒、表裏一体なのよ。」
「重たい波動も必要ってこと?
確かに、良いことばかりじゃ何も学べないし成長できないよね。」
「そうなのよ。でも今のふゆさんには、軽い波動が必要。
明日から軽い波動で包むから、今夜はもう寝よう。
最近、寝てなくて疲れてるのよ」
よく見ると、メリは痩せた感じがした。
顔色も悪い。
「大丈夫?」
「う〜ん、だめかも。
帰って寝るね。
たぶん20時間くらい寝ると思う!」
「そんなに?」
「エネルギーを使ったあとは、たくさん寝るの。
ふゆさんも、たくさん寝てね。
じゃあ、また明日来るね。」
そう言うと、メリはふらふらと窓から出て、
暗闇に消えていった。
私は窓を閉めて、月を見た。
月はいつも同じ顔をしている。
でも今日の月は、いつもより輝いている。
そんな気がした。




