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エネルギーの矛先

「この世界には争いがない。

 みんな機嫌がよくて、

 誰かと争うという発想自体がないの。

 人は人、自分は自分。

 妬みも恨みもない世界。

 でもね、深い闇を持っている人もいる。

 そういう人が、時々混ざってくるの」


「でも……ここは、みんな軽やかで心地いい世界なんじゃないの?」


「闇の勢力もいるのよ。

 闇の世界を好む人は、意外と多い。

 人を不安にさせてビジネスをする人。

 武器商人もそう。

 陰と陽は表裏一体。

 この世界にも“陰”は存在する。

 だから、みんなが陰に飲み込まれないように、

 コントロールできるようにしてあるの」


「……コントロール?」


「そう。

 恐怖、不安、心配が浮かんだら、

 その感情にエネルギーを注がないようにして、

 不安、心配を大きくしないようにするの。

 そうすれば、陰に飲み込まれない。

 陰は悪い感情じゃない。

 恐怖や心配は、

 “慎重になって”というメッセージ。

 私たちが無事に生きるためのもの」


なるほど……確かにと思った。


「ふゆさんみたいに、

 不安にエネルギーを注いで、

 不安を大きくして、

 自分の首を絞めてしまう人もいる。

 でもそれは、

 エネルギーが強いってこと。

 その力を、

 陰じゃなくて陽に使ってほしくて、

 ここに連れてきたの。

 一緒に、この世界を大きくしましょう」


「お待たせしました」


サンドイッチが運ばれてきた。


食べながら、私は“エネルギー”について考えた。


久しぶりに食べる、


自分以外の誰かが作ったハムのサンドイッチ。


カリッとして、ほんのり甘いパン。



……おいしい。


「エネルギーの矛先を自分で変えることが出来るってこと?」


「そう。

 でも多くの人は、

 闇の世界にエネルギーを注いでいる。

 これをしたら天罰が下る。

 良いことの後には悪いことが起こる。

 幸福は長続きしない。

 人生は思い通りにならない。

 誰が決めたのかわからないルールに従い、

 昔の人は偉い、昔の人は正しい。

 そんな訳のわからないことを信じて、

 そこにエネルギーを注ぎ込んでいるの」


「……確かに、盲目的に信じてました」


私は、


自分を“普通”という型に、無理やりはめようとしていた。


普通に生きたいともがいていた。


でも、私に合う“普通”の型なんてなくて、苦しかった。


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