仕事
どこへ向かうのか
一瞬だけ不安がよぎったが、体が迷わず歩き始めた。
外の空気は懐かしくて、嬉しくて、思わず笑ってしまった。
“そうだ。私は近所の輸入雑貨店でパートしてるんだ。”
子どもが小学生になったら働きたいと思っていた、あの店だった。
あそこで働いているなんて嬉しい。
裏口から入り、恐る恐る「おはようございます」と声をかける。
「ふゆさん、おはよう!」
若いスタッフが明るく返してくれた。
初めてのはずなのに、初めてではない場所。
身体だけがその“記憶”を持っているみたいだった。
休憩室に入ると、左手の壁際に店長の机が置いてあった、
机の上は書類とノートパソコンが置いてある、
乱雑に置かれた様子から几帳面では無いことがわかる。
部屋の中央には大きなテーブルが置いてある、
机のまわりに椅子が4脚ある、その他に壁に折りたたみの椅子も置いてある、
この机でみんな休憩しているようだ、
右手にはカーテンで仕切られた小さな部屋があった、
何にはロッカーがあり、
ロッカーには名前の書いた小さなシールが貼ってあった、
その奥には上着を書けるハンガーラックが置いてある。
私はすぐに自分のロッカーがわかった、
ロッカーを開け、自分の名前のついたエプロンを取り出す。
鏡を見ると、“引きこもりの自分”と“働く自分”が重ならず、
不思議な感覚になる。
「ふゆさん、ちょっといい?」
カーテンの向こうから、社員の田中さんが顔を出した。
「来週の金曜、佐久間さんが用事で休みたいんだって。代わりに入れる?」
「大丈夫です。入れます。」
予定はわからなかったけど、自然と答えてしまった。
「ありがとう。本当に助かる。」
そう言って田中さんは出て行った。
休憩室を出る直前、壁に従業員の写真が貼ってあることに気づく。
“小川 冬 勤続7年目”
私は7年も働いている世界に来ているのだ。
品出しをしながら、
私は“家から出られなかった自分”を忘れ始めていた。
その日の仕事を終え、家に帰ると、
部屋は散らかり、キッチンには冷凍パスタを食べたあとのゴミが置いてある。
私は深いため息をついた。
夕飯は買い物に行っていないので冷蔵庫の中にあるもので、
簡単に出来るラザニアとサラダ、
ほうれん草とベーコンを炒めたものを作った。
夕飯の準備をしていると娘がキッチンにきた、
今日1日の娘の愚痴を聞いて、
外で働いた体をお風呂に入ってスッキリさせてから、
食べる為に、ラザニアをオーブンに入れて、
出来上がるまでお風呂に入ることにした。
湯船に浸かり、
今日は疲れた、久しぶりでも仕事は出来る・・・
えっ?久しぶり?昨日も仕事に行ったよね?
あれ?行ってない?思い出せない。
昨日は何してた?
あれ?胸の奥に、不安が小さく灯った。
私はお風呂から出ると修が帰って来た、みんなで夜ご飯を食べる。
いつもの光景?キッチンを片付け、
私は1日働いて疲れたのかすぐに眠りに落ちてしまった。




