学び
今日のメリはベージュの細身ワンピースだった。
そして小さな赤いビーズの刺繍が付いてる、
黒いカバンを持っていた。
メリの細い体のラインが出る洋服で、
年齢のわりに無駄な贅肉がついていない。
手足が長く、若い時はもっときれいだったのだろうと想像した。
「こんばんは!」
メリは言った。昨日と同じ柔軟剤のような香りがした。
どこに住んでいるのかな?気になるけど聞きづらい・・・
「いつもベランダからなんですね。」
「だってふゆさんがリビングにいるから。」
「さてさて、早くやりましょう!その前に冷たいお茶ある?」
「ルイボスティーならあります。」
「じゃあそれ頂く!」
そう言ってダイニングの椅子に座り、
持っていた小さなカバンから白い扇子を出して仰ぎ始めた。
私はクーラーの設定温度を下げ、コップにルイボスティーを注いだ。
メリはそれを一気に飲んで、
「今日は忙しかったの。話すことはできないけど、色々な世界があるのよ!」
と言って扇子を畳み、
「じゃあ始めましょうか」
と背筋を伸ばした。メリは無駄な話しはしない。
私はメリの前に座り、用意していたメモ帳を出して話に集中した。
「まずは注意事項から。
メモを取るのいいけど、誰かに見られたら大変よ。
頭おかしい人だと思われる!」
「大丈夫です。このメモをスマホのメモにまとめるので。」
「わかった、大丈夫ね!」
「さて、注意事項は……。
世界は自由に作れる。でも過去の世界や未来の世界は作れない。
ふゆさんは今の年齢のまま。
高校生に戻るとか、おばあちゃんになるとかはできない。
それから、欲の強い世界も無理!」
「欲の強い世界?」
「自分や家族だけが幸せな世界。
大金を持って買いたいものを何でも買って、
やりたい放題の欲望の世界。
人殺しもそう、自分の欲望を満たす世界でしょ?
そんなドロドロした重たい世界はできない。わかった?」
メリは手振り身振りで話した。
「若返ることができる世界がつくれたら、
私はそこで暮らしているわよ。」
そう言ってメリは笑った。




