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サイバーパンク2021-そのモブキャラ(?)は糸と念力を操る-  作者: 東山スバル
第1幕 『退屈な日々にさようならを』

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9/21

ep9 無法の街

(……結果的にあの野郎が死んだようなのに、良くコイツ正常でいられるな)


 三浦はふとそう思う。田沼狼鬼がサイコ・キラーと化して死んだはずなのに、伊東は全く動じていない。確かに三浦自身もあまり思うことはないが、伊東のようないわば普通の女子がヒトの死を直接見てもトラウマやフラッシュバック的な現象を起こさないのは、やはりこの世界がおかしいからなのだろうか。


「なぁ、萌葉」

「なんですか?」

「田沼は死んだのか?」

「はい、死亡認定されました」

「それに対して思うことは?」

「うーん。まぁ、どんな悪いヒトでも死なないのが一番ですけど、サイコ・キラーになった時点で生きられることもないし……というか、あんまり気にしてたらピースキーパーなんてできませんよ」


 ()()()()()()感想だった。伊東萌葉は巨大企業に雇われている、治安維持組織所属部隊所属者。いちいち悪党の死に慄いていたら精神が保たないのだろう。ましてや、この『サイバーパンク2021』の世界には〝正気度〟という独自の概念がある。それを完全に喪失したらほとんど完全に死に至るのだし、伊東もかなり割り切ってピースキーパーを務めているのであろう。


「けどまぁ、これから〝スターリング・ファミリー〟が報復してきそうですけどね」

「そりゃあ、幹部級を新参者に殺られたら必死にもなるだろうな。アイツらは今や、日本最大の暴力団〝関東七王会〟にも匹敵する巨大組織だし」


 スターリング・ファミリーは、ある無法者が築き上げた暴力団や半グレに似た組織だ。いや、ヤクザと半グレの良いところ取りしている、といえば分かりやすいか。前者のように組織図がしっかり定まっていて、後者のようにその組織図は不透明。正直、構成員が分かりやすい極道のほうが対処しやすいとも言える。


 もっとも、三浦はこの世界の原作を知っているので、スターリング・ファミリーの組織図もある程度理解している。スターリング・ファミリーは総勢25000人で、これは先ほどの日本最大の暴力団関東七王会と並ぶ人数だ。


 一方、三浦はこの『サイバーパンク2021』の原作がまだ完結していないのも知っている。七王会とスターリング・ファミリーは、一応友好団体として互いのシマやシノギを分け合っているが、果たしてそれがいつまで続くか分からない、というのが現状であった。


「良く知ってますね、三浦さん。七王会とスターリング・ファミリーの規模が同程度だって」

「だから言っただろ? おれは情報通なんだ」


 そりゃあ、この世界にプロットがあってストーリーもあり、主人公もいるのだから当然ではある。


「しかし、誰がおれらを狙ってくるか、だな。スターリング・ファミリーは実力至上主義の組織。喧嘩の腕が立てば、10歳くらいのガキでも幹部に取り立てられるしさ」

「三浦さん」

「なんだ?」

「大丈夫ですよ。ピースキーパーも私も、三浦さんのことを絶対に守ってみせるし……なにより三浦さんは強いから」

「あぁ……そうかい」


 三浦龍作は、鼻でフッと笑うのだった。


 *


 スターリング・ファミリー定例幹部会は、主に和風の大豪邸で行われる。ヤクザで言うところの大親分の総本家みたいな場所だ。日本庭園や和室があり、どことなく悪趣味で落ち着かない置物等が置かれている。

 そこに幹部たちが高級車を子分に運転させ、現れた。


「ご苦労さんです!!」

「おう」


 そういう掛け合いを何度か繰り返し、幹部たちは会議室であぐらをかきながらボスを待つ。

 そして、

 スターリング・ファミリーのドンが現れた。年齢〝20歳〟の若き総長が。


 日本料理を食べていた幹部たちは一斉に立ち上がり、彼へ頭を垂れる。


「二代目!! ご苦労様です!!」

 ドンは手を上げた。「うん」


 壮年の幹部たちも、彼に敬意を払う。いや、払わざるを得ない。それほどまでに、ドンは強いからだ。


「んじゃ、早速本題に入ろうか。まず、田沼が殺られた件についてだな」


 無法者たちの密談が始まった。


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