ep3 主人公サイドへの宣戦布告、そして正気度の消失
「おぇ……、気持ち悪リィ」
高熱に罹ったかのような身体の重たさ、それに加えて今すぐにでも嘔吐したくなる気分の悪さを乗り越え、三浦はなんとか生き延びた。
「まぁ、原作でも〝幻覚剤を過剰摂取したときみたい〟って書かれていたし、そういうモンなんだろうな」
ひとまず、ミッションはクリアできた。三浦はもうインストールされて使い道のない指輪と時計を外し、海へ投げ捨てる。
そのとき、
キーッ!! と、車が急停止したような音が港に響いた。港の電灯は点いたり消えたりしているので良く見えないが、ガタンッ、と車のドアが開いたような音が聴こえたこともあり、何者かがこのふ頭にやってきたのは間違いない。
(ヒットマンか……? まさかこんな早くバレるとは)
その車は直ぐ側で停車したようで、背後に海しかない三浦は警戒してハンドガン〝M2011〟を取り出す。とはいえライトがついているわけでもないため、今ひとつ姿が見えなかった。
(クソッ、姿が全く見えねぇ)
車のライトが反射し、目がくらむ中、カツンカツンとヒトの足音が聴こえた。それは少しずつ近づいていき、やがて立ち止まる。
そして、
ライトが三浦龍作の目を奪う中、弾丸の雨嵐が一斉に彼の元へ発射された。激しい破裂音がひと気のない港に響き渡る。一発でもまともにくらえば、まず行動不能になるであろう。それにこの銃弾の嵐は、まるで三浦を蜂の巣にするかのように撃たれ続ける。
やがて、銃声が鳴り止んだ。襲撃者は銃を降ろし、その場から立ち去ろうとするが、
その隙を見計らっていた三浦は、先ほど装着したデバイスの試運転と言わんばかりに、指をクルッと回した。
そうすれば、ヒットマンが乗ってきた車は空中高くに放り投げられる。さながらミニカーを投げたように、車は港の倉庫に直撃した。ガコンッ!! と鈍重な音が響き、窓ガラスが割れる中、三浦は冷静にヒットマンらしき者が持っていたライフルを宙に浮かせ、そのまま遠距離からアサルトライフルの引き金を糸で引っ張ったかのように引く。
銃弾はまだ残っていたようで、空に浮いたライフルはヒットマンの胴体を撃ち抜く。たとえ身体改造していたとしても確実に仕留められるように、入念に弾を撃ち続けるのだった。
(やっぱり、主人公たちが持っていたギアとデバイスは……)
弾がなくなったのを知り、三浦はヒットマンの元へ歩いて向かっていく。脚にギアは装着していないので、ゆっくりと、しかし絶望を与えるかのように。
三浦はヒットマンの直ぐ側に立つ。ジジジ……と機械音の悲鳴を上げる彼は、どうも人間ではなく〝ヒューマノイド〟と呼ばれるこの世界特有のロボットであったようだ。
もはや機能を停止しつつあるヒューマノイドの頭を〝M2011〟で撃ち抜き、三浦は一息つく。
「はぁ。こっちの動きは筒抜けだった、ってわけね」
三浦は真っ暗な空を見上げ、ニヤッと笑いながら宣言する。
「アンタらの思惑は分かっている。隠し武器を奪ったおれを殺して、この3つのデバイスとギアを取り戻そうとしているんだろ? だけど〝サイコキネシス〟と〝マリオネット〟に〝腕力強化〟を持っているおれを、ヒューマノイド一匹で殺せるとでも?」
さすが主人公たちの隠し武器というだけあって、能力も身体改造も豪華なものが揃っている。本来臆病なのを自覚している三浦の人格が凶暴なものへ変化してしまうほど、超強力なデバイスとギアであった。
更に、三浦は空に向かって独り言を呟いたわけではない。原作では、主人公の仲間に凄腕のハッカーがいて、ソイツは街中に展開されている素粒子レベルに小さいドローンを用いて、このベイサイド・シティを監視しているのだ。ギアとデバイスを手に入れたことで高ぶった三浦の魂は、自ずと彼らへの宣戦布告を宣言したのである。
「ま、そう言ったら有力な戦力を送ってくるだろうな。だからおれはオマエらの虎の子を使って、自由にやらせてもらうぜ」
そう呟くと、三浦は近くに展開されていた素粒子ドローンをすべて破壊した。主人公たちが持つ虎の子のデバイス〝サイコキネシス〟を使えば、あんな小型ドローンはすべて破壊できる上に、サイコキネシスを使ったバリアを貼ることで、ドローンに探知されないようにすることすらできる。
そうしてふ頭に展開された素粒子ドローンをすべて壊し、バリアを貼って監視から逃れるのに成功し、三浦は満足げに港から立ち去ろうとした。
そのとき、
「ま、待ってくださいっ!!」
女、の声が聴こえた。三浦は(目撃者がいたか……。殺しておくか?)と考えつつ、その声の元を向く。
「なんですか?」
「私は〝ピースキーパー〟の伊東萌葉です!! 貴方を逮捕します!!」
三浦は即座に拳銃を抜いた。
「できると思っているのか?」
伊東萌葉は、暗闇の中言う。
「できる、できないじゃないです!! このふ頭は立入禁止区域だし、貴方は器物破損もしてますよね? 治安を守る身として、たとえ敵わなくても私は貴方に挑む義務があります!」




