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サイバーパンク2021-そのモブキャラ(?)は糸と念力を操る-  作者: 東山ルイ
第2幕 『愛を身体に吹き込んで』
20/21

ep20 彼だけが知っている、本来の主人公の正体

「萌葉、ちょっと伏せていて」

「え?」

「良いから」


 三浦に言われた通り、伊東はかがむ。一体なんの目的なのか、という面持ちで彼女は三浦を覗き込むが、


 その次の瞬間には、カウンター席に座っていた男が振り返って拳銃で発砲してきた。小気味良い破裂音が3回響き、伊東は三浦の言っていたことの真意を理解したのだった。


「━━チッ!!」


 もう一度引き金を引こうとしたヒットマンだが、その前に三浦が彼をマリオネットという能力で取り押さえる。硬い糸のような物質で腕を巻かれ、拳銃は伊東のほうへと飛んでいった。


 店内が騒然となるが、ここは伊東が、「安心してください! 私たちはピースキーパーです!」と声がけすることで、一応落ち着きを取り戻す。


「えーと、13時23分。逮捕」


 スマホで時間を確認し、三浦はヒットマンの男の腕を糸でぐるぐる巻きにして、そのまま食べ切れていないラーメンを置いて去っていく羽目になるのだった。


 *


 その後、三浦は諸々の連絡を伊東に任せ、デパートの裏路地にて腕を拘束されたヒットマンへ尋問し始める。


「誰の命令だ?」

「……教えるかよ、バーカ」

「あぁ、そう」


 三浦は彼の胸倉を掴み、男の頭を壁にガンガンとぶつけた。悲鳴を張り上げた男に、近所迷惑だ、と言い放ち、サイコキネシスで彼の口を塞ぐ。


 たんこぶができるほど叩きつけられた男は、このままでは死ぬと判断したか、ついに自供し始めた。


「…………。オメェの首には10億円の賞金がかかってるんだよ。スターリング・ファミリーのドンが裏社会の連中全員に布告したんだ」

「あァ? おれに10億円?」

「そうだ……。おれはスターリング・ファミリーの準構成員。だからドンの顔も名前も知らねぇが、ドンは相当頭に来てるぞ? オメェみてぇに細せぇガキなんて、もう一週間も保たねぇだろうさ」

「あぁ、そうかい。あの外道どもを()ったから、ボスも躍起になっていると」


 その最中、伊東が現れた。


「龍作さん、逮捕用の車があと2分ほどでやってくるみたいです」

「分かった」


 確認を取った上で、三浦は萌葉に向き直す。そして彼は彼女へ抱いていた疑念を伝えた。


「なぁ、萌葉。ひょっとしてスターリング・ファミリーのドンって……オマエの弟なのか?」

「……なんで、ですか?」

「この馬鹿はおれに10億円の賞金をかけたと言っていた。でも、普通に考えりゃそれはおかしい。おれや御島にその額がかけられるのなら、萌葉にも相応の額をかけなきゃならないからな」

「…………本当に勘が鋭いですね」萌葉は溜め息をつく。深く、悩ましい溜め息を。「その通りです。私の弟は、スターリング・ファミリーの2代目総帥伊東(いとう)若葉(わかば)。私は悪の道へ進んだ弟を逮捕するために、この道を選んだんです」


 だいたいすべて、三浦の原作知識とこの世界の進行具合がつながった。三浦が読んだ原作では、まだスターリング・ファミリーのドンの名前は出てきていなかった。ただ、()()()()()()()()()()()()()()()()()2()()()()()()()()、ということだけが示されていたのだ。


「なぁ、萌葉。いつだか教えてくれたよな。〝不良の道は虚無〟だって。今となっちゃ、その通りだと思うぜ」


 搬送車が裏路地近くに停まる頃、三浦は伊東萌葉の頭をポンと叩き言う。


「この状況を打破するには、協力するしかない。おれは安全に街を歩くために。萌葉には弟の逮捕という正義の義務がある。さぁ、やってやろうぜ」


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