ep17 ピースキーパー第1部隊突撃隊長・三浦龍作
第2幕『愛を身体に吹き込んで』レッツ・ゴー!!
2021年10月。ベイサイド・シティもようやく肌寒くなってきた。
今までこの世界へやってくる前の夏服━━黒いTシャツにデニムという出で立ちと、追加で何枚か買った半袖シャツしか持っていなかった三浦龍作も、さすがに秋服が欲しくなってきた。
これまでは伊東萌葉という恋人兼相棒が持ってきてくれた、彼女の蒸発した弟の服ばかり着てきたが、上着類は全くないので、洋服を買う時期がやってきたというわけだ。
伊東の家の間借りしている三浦は、彼女の属す治安維持組織〝ピースキーパー〟活動が久々に非番だと知り、リビングで朝食代わりのシリアルを食べ終わり言う。
「なぁ、萌葉」
「なんですか?」
「服、買いに行かね?」
「良いですよ~」
これだけで買い物が決まるのだから、ふたりの蜜月振りが知れるというものだ。低身長でメガネっ子と、やや高身長でツリ目な青年の。
「でも、どこに買いに行きましょうか。三浦さん……じゃなくて、龍作さんってお金持ってないですよね?」
「良く知っているな。その通り。仕事がないからね」
「うーん、私もあんまりお給料良くないから、ファスト・ファッションのお店くらいしか行けませんよ?」
「うーむ。こう見えておれ、意外と服にこだわりあるからな。先立つものはカネか。そうだな……」
三浦はしばし考え込む。突然この世界にやってきて、バイトで貯めたカネはあるものの、彼はキャッシュレス派なので財布へは1000円札が2枚しか入っていない。しかも前の世界の口座と今の世界をつなげる方法が現状ないため、口座に入っているまとまったカネも引き下ろせないのだった。
「あ、そうだ」三浦はポンと手を叩く。「おれがピースキーパーに入隊すれば良いんじゃね? あれだけ無法者をぶっ倒してきたんだし、多分フリーパスで入れるだろ」
「言われてみれば、確かにそうかもですね」伊東は即座にピースキーパー用のスマホを取り出す。「ちょっとお偉方に頼んでみます。どの部隊に配置されるかは断言できないですけど、多分エリート部隊の第1かなぁ」
「あぁ、あの御島義隆って野郎がいるところか」
「そうそう。ちょっと電話かけますね~」
伊東は一旦廊下のほうへ出ていった。シリアルも食べ終えたので、三浦は退屈そうにスマホを眺める。そのスマホは与えてくれた伊東曰く旧式らしいが、前いた世界のそれとだいぶ似通っている。
どのみちすぐ戻ってくるだろうが、暇つぶしだと思い、6インチ程度の画面で〝ミー・スクリーン〟の猫のショート動画を眺めていると、
「龍作さん、もう話が決まりました」
伊東が戻ってきた。更に彼女は、三浦のスマホに情報を共有する。
「は?」
その情報を見た三浦は、思わず顔を強張らせた。
「どうかしました?」
「いや、なんでおれがピースキーパー第1部隊の〝突撃隊長〟に?」
伊東はさも当然のような態度で、きょとんとした表情になりながら、
「そりゃあ、龍作さんはお強いですから」
「いやいや、そういう問題じゃなくね? 素人のおれを突撃隊長に抜擢して良いのかよ?」
「だって、龍作さん言ってたじゃないですか。おれは情報通だ、って。なら当然、ピースキーパーの仕組みも知ってるんでしょ?」
伊東は意地悪な笑みを浮かべる。
まぁ確かにこの世界の条理は知っているが……、それにしたって大抜擢だ。いくら三浦が反社会的勢力の幹部をふたり落とした者とはいえ、良く上も許可を出したものだな、と思うほかない。
「あと、最精鋭部隊の突撃隊長ともなれば、契約金だけで1000万円はもらえるでしょうね」
「そうなの?」
「知らなかったんですか? 珍しいですね。お給料も月70万から100万円は固いですよ」
原作では突撃隊長の給料までは記されていなかったので、三浦はあんぐり口を開けた。
凄まじい額のカネが動いている。でもこれで、伊東のヒモみたいな生活をしなくて済むだろう。




