隣国への到着。そして盗賊と謎の男
私が追い出されたこのスタルツィア王国は正直、国民の全てが裕福かと言われればそうではない。国民はいつも大変な暮らしを余儀なくされている人が多い。私はよく、お母様と共に炊き出しなどをして、食事を振る舞ったこともよくあった。そんな時にロベルトに声をかけられたんだ。
ロベルトは王家で私はこの国一の公爵家の令嬢。
婚約の話はすぐに進んだ。だけど、それはこの国のためでなく、王家がただただ自由にするためだけの婚約だった。お金は全て自分たちで使い自由に遊び尽くす。ロベルトも翌日の公務に支障が出るほど酒を飲み、毎日二日酔いの状態。お父様たちが私のためにくれたお金は全てロベルトが持っていく。そして最終的にそのお金は全てあの女へのプレゼントで消えていたことが分かった。
このことが私のお父様たちに知られると王家は終わる。なぜロベルトがそれを理解していないのかが不思議。
お父様たちへの手紙には真実を書こう。
隠す必要もなければやましいことなどもない。
全てはロベルト自身が招いたこと。
後悔してももう遅いから。
あ、でも…もう少しあの二人には幸せに暮らしてて貰いましょうか。だから、私はまだお父様たちには真実を言わないことにする。この国の国民から反発が出たときに全てを話す。そうすれば、自分がどれだけのことをやったのか分かるでしょ?
だから…残り少ない幸せな時間を大切にしてね?ロベルト。
「マーガレット様!!」
「レイス。」
レイス。彼は私の執事。人懐っこい性格で誰からも愛される感じの人。レイスは私がまだ王家に来ていないときからだからすごく長い。だけど私と同い年の18歳。本人は可愛らしい少年のような容姿を嫌がってるけど、私はレイスの性格にあっていていいと思ってる。
「マーガレット様…僕はどうすれば…」
「レイス。あなたの好きにすればいいの。私はこの国を出るの。あなたはお父様たちのところに戻っても構わないの。だから、あなたが選びなさい。」
レイスがどうしたいか。
私がどうしてほしいではなくこれは自分の意思で決めてほしい。
「僕は、マーガレット様について行きます。これから先もずっと、僕はマーガレット様の執事です。」
「ふふっ!分かったわ。一緒に行きましょう。」
どこかで分かっていた自分がいた。
レイスは多分、私について行くと答えるんじゃないかって。たった一人の私の執事。ロベルトとマリアの浮気を話した時も泣きそうな顔をしていた。人の痛みが分かる人なの。レイスは…
「マーガレット様。ところで、どこに行くのですか?」
あ。伝えてなかったわね。
「隣国のシュタレスティア王国よ。」
「シュタレスティア王国ですか?あ、でも宿とかは…」
「心配しないで!この日のためにもう準備したの。ちゃんとした家を!」
そう。私はこの時のためにもう家を用意した。
それも、広い庭のある家。
まずはその屋敷を見に行かないとね。
馬車に乗り、シュタレスティア王国へ向かう。
シュタレスティア王国はスタルツィア王国とは違い国民の中で生活に困っている人が一人もいないそんな平和な国。私が建ててもらった屋敷は森を抜けたところにある。馬車で森を抜けると広々とした庭に一つ建てられた大きな屋敷。
「ここですか!?」
「そうよ!」
レイスは屋敷を見ると子供のように走り回る。
私よりも楽しそう…
「マーガレット様!この広い庭に何か植えるのですか?」
「ええ!野菜、お花を植えるつもりよ!」
「ガーデニングですね!」
「そうよ!ちゃんとレンガで丁寧に区切ってもらったの。そこで野菜とお花を育てるわ!」
「そのためには種と苗を買いに行かないとですね!」
「そうね!街に出て買いに行きましょう!」
私たちはもう一度馬車に乗り、野菜とお花を育てるために種と苗を買いに行くことにした。
森の中に入り、森の出口まであと半分くらいに来たところで馬車が急に止まった。
「何かあったのかしら…?」
すると外で人を殴るような音が聞こえた。
そのすぐ後には人が倒れるような音も。
不安に思っていると突然、馬車の扉が開いた。
そこには剣を持った盗賊のような男たちの姿が。
私は一人の男に腕を捕まれ馬車から引きずり出される。周りを見れば盗賊たちに囲まれていた。
「…っ!」
「マーガレット様!」
「レイス…!」
レイスが私を助けようと馬車から出ようとするがそう簡単には行かない。
「…っ!…ドサッ」
「レイス!!」
レイスは男に殴られ気絶した。
許せない…私の家族のように大事なレイスを傷つけるなんて…
「へぇ…いい女じゃねぇか。命令されたがすぐに殺すのは勿体無いな。存分に楽しませてくれよ…!」
私が怒っていることに気づいていないのか呑気にそんなことを言っている盗賊の男。私は掴まれている腕を振りほどき、私を掴んでいた男に立ち向かう。
「強気な女は嫌いじゃない。むしろ、興奮する。」
盗賊の男は剣を振り下ろすけど私には掠りもしない。
なぜなら私はお父様から剣術を学んでいたから。
今は剣は持っていないけど相手の動きは読める。
そのおかげで避けることは簡単。
だけど、この人数。一人でしかも武器を何も持っていない私には限界がある。
「お前ら!このアマを抑えろ!」
この人数に一人は厳しい。もう終わりを意識する。
でも、諦めたくない。一人でどこまで出来るのか分からないけど、レイスや馬車の御者が危害を加えられた以上黙っているわけにはいかない。
「…っ!…っは!」
避けても避けても襲ってくる男たち。
キリがない。それに王家で過ごすことによって剣術などは封印していた。そのせいで体力の衰えを感じる。
もうダメ…そう思っていると後ろから人が次々と殴られ倒れる音が。そしてマントを身にまとった謎の男が私に近づいてきてこう言った。
「やっと見つけた。俺の愛する人…」
「…はい???」
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